双極性障害があると「仕事が続かない」と悩んでいる方は少なくありません。気分の波によって働きづらさを感じることは確かにありますが、適切な対策と環境調整により、長く働き続けることは十分に可能です。
この記事では、仕事が続かない理由と具体的な対策について解説します。双極性障害で仕事が続かないとお悩みの当事者やご家族である方々はぜひ参考にしてみてください。
Contents
双極性障害(躁うつ病)の基礎知識

初めに、双極性障害(躁うつ病)の基礎知識を確認しておきましょう。以下の側面から解説します。
- 双極性障害とはどんな病気?
- Ⅰ型の特徴と仕事への影響
- Ⅱ型の特徴と仕事への影響
順に見ていきましょう。
双極性障害とはどんな病気?
双極性障害は気分の波が極端に大きくなる病気で、「躁うつ病」とも呼ばれます。
この気分変動は本人の意志ではコントロールできず、脳内の神経伝達物質のバランス異常が原因と考えられています。治療により安定した生活を送ることができます。
Ⅰ型の特徴と仕事への影響
双極性障害Ⅰ型は、激しい躁状態が特徴です。
入院が必要になるケースもあり、仕事を長期間休まざるを得ない状況も生じます。一方で適切な治療により症状は安定させられます。
Ⅱ型の特徴と仕事への影響
双極性障害Ⅱ型は、軽躁状態とうつ状態を繰り返します。軽躁状態では調子が良く感じられるため、病気と気づきにくい特徴があります。
しかしうつ状態が長く続くと、遅刻や欠勤が増え、業務パフォーマンスが低下します。うつ病と誤診されやすいため、正確な診断を受けることが大切です。
双極性障害で仕事が続かない5つの理由

双極性障害のある方が仕事を続けにくい背景には、症状特有の以下のような理由があります。
- 気分の波が業務パフォーマンスに影響する
- ハイテンション時の衝動的な言動で人間関係が悪化
- 落ち込み期間中の欠勤や遅刻が増える
- 生活リズムの乱れで勤務が不安定になる
- 周囲の理解不足によるストレス
これらを理解することで、適切な対策を講じることができます。順に見ていきましょう。
気分の波が業務パフォーマンスに影響する
双極性障害の最大の特徴である気分の波は、仕事の質や量に直接影響します。
この変動が予測できないため、安定した業務遂行が難しくなり、職場での評価低下につながることがあります。
ハイテンション時の衝動的な言動で人間関係が悪化
躁状態や軽躁状態では、本人は調子が良いと感じていても、周囲から見ると攻撃的だったり、配慮に欠ける言動が目立つことがあります。
後から振り返って後悔しても、すでに人間関係が悪化していることも少なくありません。特に上司や同僚との関係悪化は、職場に居づらくなる大きな要因となります。
落ち込み期間中の欠勤や遅刻が増える
うつ状態では
- 朝起きられない
- 通勤電車に乗れない
といった状況が続き、欠勤や遅刻が増加します。
本人は「怠けている」わけではないのですが、周囲の理解がないと「勤怠が悪い社員」とみなされてしまいます。これが続くと解雇や退職につながるケースも多く見られます。
生活リズムの乱れで勤務が不安定になる
双極性障害では睡眠リズムの乱れが起こりやすく、これが症状悪化の引き金にもなります。夜眠れず昼夜逆転したり、極端に睡眠時間が短くなったりすると、定時出勤が困難になります。
生活リズムの乱れは症状を悪化させる悪循環を生み、結果的に仕事の継続が難しくなります。
周囲の理解不足によるストレス
双極性障害は外見からは分かりにくい病気のため、職場での理解を得られないことが多くあります。「気の持ちよう」「甘えている」といった誤解を受けると、本人は強いストレスを感じます。
理解されない環境で働き続けることは精神的な負担が大きく、症状悪化や離職の原因となります。
仕事を続けるために知っておきたい症状のコントロール法

双極性障害をコントロールし、安定して働くためには、日々の自己管理が欠かせません。以下のポイントを押さえることで、症状の波を小さくできます。
- 薬物療法を継続する重要性
- 自分の気分変動パターンを記録する
- 早期に主治医へ相談できる体制を作る
- ストレスサインを見逃さない工夫
順に見ていきましょう。
薬物療法を継続する重要性
双極性障害の治療では、気分安定薬や抗精神病薬などが処方されます。調子が良いからといって自己判断で服薬をやめると、再発のリスクが高まります。薬の効果を実感できなくても、主治医と相談しながら継続することが、安定就労の基盤となります。
副作用が気になる場合も、必ず医師に相談しましょう。
自分の気分変動パターンを記録する
- 毎日の気分
- 睡眠時間
- 出来事
などを記録することで、自分の気分変動パターンが見えてきます。「季節の変わり目に調子を崩しやすい」「ストレスが溜まると躁転しやすい」など、自分の傾向を知ることで予防的な対応が可能になります。
スマートフォンのアプリを活用するのも効果的です。
早期に主治医へ相談できる体制を作る
症状が悪化する前に主治医に相談できる関係を作っておくことが重要です。
定期的な通院はもちろん、調子が悪くなりそうな兆候を感じたら、予約を早めるなど柔軟に対応しましょう。早期対応により、症状の悪化を防ぎ、仕事への影響を最小限に抑えられます。
ストレスサインを見逃さない工夫
身体的なストレスサインに気づくことも大切です。
- 睡眠時間の変化
- 食欲の増減
- イライラ
- 集中力低下
などは、症状変動の前兆かもしれません。これらのサインに早く気づき、休息を取ったり主治医に相談することで、大きな波を避けられます。
家族や信頼できる人に協力してもらうのも有効です。
双極性障害のある方に向いている仕事の特徴

すべての仕事が双極性障害のある方に適しているわけではありません。以下のような症状をコントロールしやすい環境を選ぶことで、長く働き続けられる可能性が高まります。
- 勤務時間が規則正しい職種
- 在宅勤務やフレックス制度がある環境
- 一人で集中できる作業が多い仕事
- プレッシャーが比較的少ない業務内容
順に見ていきましょう。
勤務時間が規則正しい職種
生活リズムを整えやすい、始業・終業時刻が一定の仕事が適しています。
- 事務職
- 公共施設の職員
など、定時勤務が基本の職種は、睡眠リズムを保ちやすく症状も安定しやすくなります。
毎日同じ時間に起床・就寝できることは、双極性障害の方にとって大きなメリットです。
在宅勤務やフレックス制度がある環境
- 通勤のストレスを軽減できる在宅勤務
- 調子に合わせて出勤時間を調整できるフレックス制度がある職場
は働きやすいでしょう。
体調が優れない朝でも自宅で仕事を始められたり、通院に合わせて勤務時間を調整できる柔軟性は、症状管理と仕事の両立を助けます。
一人で集中できる作業が多い仕事
- データ入力
- プログラミング
- デザイン
- 文書作成
など、一人で黙々と進められる仕事は適しています。対人ストレスが少なく、自分のペースで作業できるため、気分の変動があっても比較的対応しやすい特徴があります。
ただし完全に孤立するのではなく、適度なコミュニケーションは必要です。
プレッシャーが比較的少ない業務内容
ノルマや厳しい納期がない、または比較的緩やかな業務は、ストレスが少なく症状を安定させやすくなります。
- 図書館司書
- 清掃業務
- 軽作業
など、マイペースで取り組める仕事は、双極性障害のある方にとって働きやすい環境といえます。
避けた方が良い仕事環境とは

症状を悪化させやすい環境を避けることも、長く働くための重要なポイントです。以下のような職場は慎重に検討しましょう。
- 長時間残業が常態化している職場
- 深夜勤務やシフト制の不規則な仕事
- 営業ノルマなどプレッシャーが強い業務
1つずつ解説します。
長時間残業が常態化している職場
慢性的な長時間労働は生活リズムを乱し、症状悪化の原因となります。
残業が月に何十時間もあるような職場では、十分な睡眠が取れず、症状のコントロールが困難になります。定時退社が基本の職場を選ぶことが、安定就労の鍵となります。
深夜勤務やシフト制の不規則な仕事
- 看護師
- 介護職
- 飲食店
などの交代制勤務は、生活リズムが乱れやすく双極性障害の方には向いていません。
昼夜のリズムが崩れると症状が不安定になりやすいため、できるだけ規則正しい勤務形態の仕事を選びましょう。どうしても必要な場合は、主治医と相談が必須です。
営業ノルマなどプレッシャーが強い業務
- 目標達成のプレッシャーが強い営業職
- クレーム対応が多い業務
は、大きなストレス源となります。
強いプレッシャーは躁転やうつ状態の引き金になりやすく、症状管理を困難にします。自分のペースで働ける環境を優先して選びましょう。
職場で配慮をお願いする際のポイント

職場に障害を伝え、必要な配慮をお願いすることは、長く働くために有効な手段です。適切な伝え方を知っておきましょう。以下の側面から解説します。
- どのタイミングで障害を伝えるべきか
- 具体的に何をお願いすればよいのか
- 産業医や人事との連携の取り方
順に見ていきましょう。
どのタイミングで障害を伝えるべきか
一般雇用の場合、採用面接時または入社後早めの段階で伝える方法があります。それぞれメリット・デメリットがありますが、必要な配慮を受けるためには、できるだけ早い段階で伝える方が望ましいでしょう。
障害者雇用枠を利用する場合は、最初から開示することになります。
具体的に何をお願いすればよいのか
「配慮してください」という漠然としたお願いではなく、
「繁忙期の残業は難しい」
など、具体的な内容を伝えましょう。自分に何ができて何が難しいのかを明確に説明することで、職場も対応しやすくなります。
産業医や人事との連携の取り方
会社に産業医がいる場合は、定期的に面談して体調を報告することで、職場との橋渡しをしてもらえます。人事部門とも連携し、配置転換や業務調整が必要な際に相談できる関係を築いておくことが大切です。主治医の診断書を活用するのも有効です。
活用できる就労支援サービスと制度

双極性障害のある方が働くために利用できる、さまざまな支援サービスや制度があります。積極的に活用しましょう。
- 障害者雇用枠での就職を検討する
- 就労移行支援事業所を利用する
- ジョブコーチ制度の活用方法
順に見ていきます。
障害者雇用枠での就職を検討する
障害者手帳を取得すると、障害者雇用枠で就職できます。この枠では企業側も配慮が前提となっており、無理のない働き方がしやすくなります。給与は一般雇用より低い場合もありますが、安定して長く働ける環境が得られるメリットは大きいでしょう。
障害者雇用枠への就職では、障害者特化型の転職エージェントを活用することがポイントです。
- 具体的には
- ハイクラスもふくめた幅広い求人が特徴の「dodaチャレンジ」、転職サイト・転職エージェント両方の使い方が可能でスカウトも受けられる「atGP」、20代・30代の求人に強みのある「障害者雇用バンク」などの転職エージェントがあります。自分に合うエージェントを理解するためには、初めは複数のエージェントに登録して利用しながら絞り込むのがおすすめです。
dodaチャレンジ/atGP/障害者雇用バンク/ランスタッドチャレンジド/LITALICO仕事ナビ
また障害のある方向けの転職サービスについては、以下の記事が参考になります。
就労移行支援事業所を利用する
就労移行支援事業所では、仕事に必要なスキル訓練だけでなく、生活リズムの安定化や症状管理の方法も学べます。就職後の定着支援も受けられるため、不安がある方は利用を検討してみましょう。最長2年間、無料または低額で利用できます。
ジョブコーチ制度の活用方法
ジョブコーチは、職場に訪問して本人と企業の双方を支援する専門家です。
業務の進め方や職場でのコミュニケーション方法をアドバイスし、定着をサポートします。
ハローワークや就労支援機関を通じて利用できますので、必要に応じて相談しましょう。
長く働き続けるための日常生活の工夫

仕事以外の日常生活を整えることも、安定就労には欠かせません。以下のポイントを意識して生活しましょう。
- 規則正しい睡眠時間を確保する
- 過度な飲酒や夜更かしを避ける
- 信頼できる相談相手を持つ
1つずつ解説します。
規則正しい睡眠時間を確保する
毎日同じ時間に就寝・起床することは、双極性障害の症状管理において最も重要です。休日も平日と同じリズムを保つことで、気分の波を小さくできます。睡眠時間が極端に短くなったり長くなったりした場合は、症状変動のサインかもしれません。
過度な飲酒や夜更かしを避ける
アルコールは睡眠の質を低下させ、薬の効果にも影響します。また夜更かしは生活リズムを乱す原因となります。適度なリラックスは必要ですが、症状を悪化させる生活習慣は避けましょう。規則正しい生活が、安定した仕事につながります。
信頼できる相談相手を持つ
家族、友人、主治医、支援者など、困ったときに相談できる人を持つことは重要です。一人で抱え込まず、調子が悪くなりそうなときに早めに相談できる関係を築いておきましょう。ピアサポートグループなど、同じ障害のある仲間とつながることも有効です。
まとめ:双極性障害があっても仕事は続けられる

双極性障害があっても、
- 適切な治療
- 自己管理
- 環境調整
により、長く働き続けることは十分に可能です。自分の症状パターンを理解し、向いている仕事を選び、必要なサポートを活用することが大切です。焦らず、自分のペースで就労を目指していきましょう。一人で悩まず、専門家や支援機関に相談しながら進めることをお勧めします。




