障害者トライアル雇用は、一定期間の試行的な雇用を通じて、職場との相性を見極められる制度です。厚生労働省のデータではトライアル終了後の継続雇用率は8割を超えており、求職者にとって有効な手段といえます。しかし、期間終了後に不採用となるリスクや求人数の少なさなど、事前に把握しておくべきデメリットも存在します。

本記事では、求職者の視点から障害者トライアル雇用のデメリットと対策を中心に、制度の基本から転職エージェントの活用法まで幅広く解説します。

Contents

障害者トライアル雇用の基本を押さえよう

障害者トライアル雇用のデメリットを正しく理解するには、まず制度の全体像を知ることが大切です。ここでは、制度の概要、利用条件、試行期間、企業に支給される助成金について順に説明します。

障害者トライアル雇用制度の概要

障害者トライアル雇用とは、ハローワークなどの紹介を通じて、障害のある求職者を企業が一定期間試行的に雇用する制度です。企業と求職者が実際の業務を通じてお互いの適性を確認し、相互理解を深めたうえで継続雇用につなげることを目的としています。

厚生労働省は「障害者の早期就職の実現や雇用機会の創出を図る」ことを制度の趣旨として掲げています。

参照:厚生労働省「障害者トライアルコース・障害者短時間トライアルコース

利用できるのはどんな人?対象となる条件

この制度を利用できるのは、障害者雇用促進法第2条第1号に定められた障害者のうち、以下のいずれかに当てはまる方です。

NOTE
紹介日時点で経験のない職業への就職を希望している方、過去2年以内に2回以上の離職・転職を経験している方、離職期間が6か月を超えている方が該当します。

なお、重度身体障害者・重度知的障害者・精神障害者の方は、上記の条件に関わらず対象となります。

参照:厚生労働省「『障害者トライアル雇用』に応募してみませんか?(求職者の方へ)

トライアル期間はどのくらい?

障害者トライアル雇用の期間は、原則として3か月間です。ただし、精神障害者の場合は6か月から最長12か月まで延長することが認められています。

また、令和3年4月からは、テレワークによる勤務を行う場合にも最長6か月までの延長が可能となりました。通勤が困難な方や在宅勤務を希望する方にとっては、より柔軟に制度を活用できる仕組みが整備されつつあります。

参照:厚生労働省「障害者トライアルコース・障害者短時間トライアルコース

企業に支給される助成金の仕組み

トライアル雇用を実施した企業には、対象者1人につき月額最大4万円の助成金が支給されます(最長3か月間)。精神障害者を雇い入れた場合は、最初の3か月間は月額最大8万円、その後の3か月間は月額最大4万円となり、支給期間は最長6か月です。

助成金は求職者本人に支給されるものではなく、あくまで企業側の受入れ体制整備を

支援するための制度である点を理解しておきましょう。

参照:厚生労働省「障害者トライアルコース・障害者短時間トライアルコース

障害者短時間トライアル雇用とはどう違う?

障害者トライアル雇用と似た制度として「障害者短時間トライアル雇用」があります。両者は対象や勤務時間が異なるため、自分に合った制度を選ぶことが重要です。

短時間トライアル雇用の対象者と勤務時間

障害者短時間トライアル雇用は、すぐに週20時間以上の勤務が難しい精神障害者や発達障害者を対象とした制度です。雇入れ時の所定労働時間を週10時間以上20時間未満として開始し、体調や職場への適応状況に合わせて、3か月から12か月の期間中に週20時間以上の就労を目指していきます。

参照:厚生労働省「障害者トライアルコース・障害者短時間トライアルコース

自分に合うのはどちらか判断するポイント

通常のトライアル雇用と短時間トライアル雇用のどちらを選ぶかは、現時点での体調や就労可能な時間が判断基準になります。週20時間以上の勤務に不安がある方は短時間トライアル雇用から始め、段階的に勤務時間を増やしていくほうが、身体的・精神的な負担を抑えやすくなります。

ハローワークの窓口で相談すれば、自分の状況に合った制度を案内してもらえます。

障害者トライアル雇用の応募から採用までのステップ

制度を利用する際の具体的な手順を知っておくことで、準備をスムーズに進められます。ここでは、応募から常用雇用への移行までの流れを4つの段階に分けて説明します。

ハローワークへの登録と求人の探し方

障害者トライアル雇用を利用するには、まずハローワークに求職登録を行います。登録時に障害者トライアル雇用を希望する旨を伝えれば、トライアル雇用専用の求人を紹介してもらえます。

ハローワーク以外にも、民間の職業紹介事業者を通じた紹介も対象となるため、

複数の窓口を並行して活用すると選択肢が広がります。

面接選考の特徴と書類選考との違い

障害者トライアル雇用の選考は、原則として面接によって行われます。厚生労働省は事業主に対し、書類選考ではなく面接での選考を求めています。これは、書類だけでは障害の特性や業務適性を十分に判断できないためです。

求職者にとっては、経歴に自信がなくても直接自分をアピールできる機会があるという点でメリットがあります。

参照:厚生労働省「障害者の雇用を希望する事業主の皆さまへ

トライアル期間中の働き方と評価の流れ

採用が決まると、原則3か月間(精神障害者は6〜12か月間)の有期雇用契約を締結して勤務を開始します。この期間中は、実際の業務に携わりながら、職場環境への適応状況や業務遂行能力を企業と求職者の双方で確認していきます。

企業側は雇用開始から2週間以内に「トライアル雇用実施計画書」をハローワークへ提出する必要があり、計画に基づいた支援体制のもとで就労することになります。

トライアル終了後に常用雇用へ移行するまで

トライアル期間の終了前に、企業は継続雇用に移行するか、期間満了とするかを決定します。双方の合意が得られれば、改めて常用雇用の契約を締結します。

厚生労働省が公表しているデータによると、トライアル雇用終了後の継続雇用率は

8割を超えています。ただし、継続雇用が保証されているわけではない点は理解しておきましょう。

参照:厚生労働省「『障害者トライアル雇用』のご案内

求職者から見た障害者トライアル雇用のメリット

デメリットを見ていく前に、求職者が得られるメリットも把握しておきましょう。制度の利点を理解したうえでデメリットと比較することで、より適切な判断ができるようになります。

職場の雰囲気や業務内容を事前に体験できる

トライアル期間中は実際の職場で働くため、人間関係や業務の進め方、通勤の負担などを入社前に確認できます。面接や説明会だけではわからない「現場のリアル」を体験できることは、入社後のミスマッチを防ぐうえで大きなメリットです。

未経験やブランクがあっても挑戦しやすい

制度の対象条件には、就労経験のない職業への就職希望者や、離職期間が6か月を超えている方が含まれています。これは、未経験やブランクのある方でも応募しやすい仕組みが整っていることを意味します。

選考も面接中心のため、経歴よりも

人柄や意欲を伝えられるチャンスがあります。

企業と相互に適性を見極める時間が持てる

通常の採用では短期間で入社を決断しなければなりませんが、トライアル雇用では数か月の猶予があります。「この会社で長く働けるか」「必要な配慮は受けられるか」をじっくり確かめたうえで判断できるため、入社後の早期離職を防ぎやすくなります。

求職者が知っておくべき障害者トライアル雇用のデメリット

制度にはメリットがある一方、求職者として事前に理解しておくべきデメリットも存在します。ここでは代表的な5つのデメリットを取り上げます。

トライアル終了後に不採用となるリスクがある

トライアル雇用はあくまで「試行」であり、期間終了後の継続雇用は保証されていません。継続雇用率は8割以上と高い水準ではあるものの、約2割の方はトライアル後に契約終了となっています。不採用になった場合は、再び求職活動を始める必要があるため、心理的な負担が大きくなることがあります。

期間中の雇用条件が本採用と異なる場合がある

トライアル期間中は有期雇用契約であり、給与や待遇が本採用時と異なるケースがあります。障害特性に応じた労働時間の設定が行われることも多く、一般的な正社員と比較して収入が低くなる傾向があります。

経済面での不安がある方は、

事前に雇用条件を十分に確認しておくことが重要です。

対象求人が限られており選択肢が狭まりやすい

障害者トライアル雇用の求人は、通常の障害者雇用求人と比べて数が限られています。企業はトライアル雇用専用の求人票を作成する必要があるため、すべての企業がこの制度を導入しているわけではありません。希望する職種や勤務地で求人が見つからない可能性もあるため、他の就職ルートとの併用を検討することをおすすめします。

トライアル期間中に精神的な負担を感じやすい

「評価されている」という意識が常にあるため、通常の雇用以上に緊張感やストレスを抱えやすいというデメリットがあります。特に精神障害や発達障害のある方にとっては、新しい環境への適応と評価のプレッシャーが重なり、体調を崩すきっかけになることもあります。就労支援機関やジョブコーチの活用が効果的です。

助成金目的で採用する企業が存在する可能性

助成金制度がある以上、残念ながら助成金の受給を主な目的としてトライアル雇用を利用する企業がゼロとは言い切れません。こうした企業では、トライアル期間中の指導やサポートが不十分だったり、期間終了後に継続雇用されにくかったりする恐れがあります。

応募前に企業の障害者雇用実績や評判を

確認することが大切です。

企業側から見たメリット・デメリットも理解しておこう

求職者として制度を活用する際には、企業がトライアル雇用をどのように捉えているかを理解しておくことも有益です。企業側の視点を知ることで、面接時のアピールポイントや職場での振る舞い方のヒントが得られます。

企業がトライアル雇用を導入する理由

企業にとってのメリットは、実際の業務を通じて障害特性や業務適性を確認でき、雇用のミスマッチを減らせる点です。助成金により採用コストの負担が軽減されることも、初めて障害者雇用に取り組む企業にとっては導入のハードルを下げる要因になっています。

企業側が感じる運用上の課題とは

一方で企業には、教育担当者の配置や助成金申請の事務負担が発生します。また、トライアル雇用の選考は面接で行う必要があり、求人票の作成も通常とは異なるフォーマットが求められます。こうした手間を理由にトライアル雇用を避ける企業もあるため、結果的に対象求人が少なくなっている現状があります。

障害者トライアル雇用で失敗しないためのポイント

デメリットがあるからといって制度の利用を避けるのではなく、事前の準備と期間中の意識で成功率を高めることが大切です。

トライアル期間中に確認しておくべきこと

試行期間中は「この職場で長期的に働けるか」を見極める貴重な時間です。業務内容が自分のスキルや体力に合っているか、配慮事項が適切に守られているか、上司や同僚とのコミュニケーションに問題はないかなど、チェックすべきポイントをあらかじめリストアップしておくと判断しやすくなります。

合わないと感じたときの対処法

トライアル期間中に「この職場は自分に合わない」と感じた場合は、まずハローワークや就労支援機関の担当者に相談しましょう。企業側との間に入って調整してもらえるケースもあります。

無理に我慢を続けて体調を崩すよりも、

早い段階で状況を共有し、対策を講じることが重要です。

なお、トライアル期間中の退職は通常の退職手続きと同じ方法で行えます。

常用雇用への移行率を事前にチェックする

応募を検討している企業について、過去のトライアル雇用から常用雇用への移行実績を確認しておくことも有効です。ハローワークの窓口で企業の情報を聞くほか、障害者雇用に特化した口コミサイトや転職エージェントを通じて情報を集めることができます。移行率が極端に低い企業には注意が必要です。

トライアル雇用を利用する前に転職エージェントに相談すべき理由

障害者トライアル雇用のデメリットを補い、より自分に合った就職先を見つけるためには、転職エージェントの活用が効果的です。

障害のある方向けの転職サービスについては、以下の記事が参考になります。

    障害者専門の転職エージェントでできること

    障害者雇用に特化した転職エージェントでは、障害特性や希望条件を丁寧にヒアリングしたうえで、適切な求人を紹介してもらえます。面接対策や書類添削のサポートも受けられるため、一人で就職活動を進めるよりも効率的かつ安心感があります。

    キャリアアドバイザーは障害者雇用の実態に精通しているため、企業の受入れ体制や職場環境についても具体的な情報を提供してくれます。

    具体的には、「dodaチャレンジ」(求人が幅広い)、「atGP」(定番エージェント)、「障害者雇用バンク」(20代・30代に強み)、「LITALICO仕事ナビ」(求人豊富な定番サービス)、「マイナビパートナーズ紹介」(定着支援も提供)などの転職エージェントがあり、1人ひとりに合わせたサポートを提供しています。

    非公開求人や職場定着サポートが受けられる

    転職エージェントが保有する非公開求人には、一般に公開されていない好条件のポジションが含まれていることがあります。また、入社後の定着支援として定期面談を実施しているエージェントもあり、就職後に困りごとが発生した際にも相談できる体制が整っています。

    トライアル雇用の「継続雇用されないかもしれない」という不安を軽減する選択肢としても有効です。

    トライアル雇用以外の選択肢も比較検討できる

    転職エージェントに相談することで、障害者トライアル雇用以外にも自分に合った就職ルートがないかを一緒に検討できます。障害者雇用枠での正社員採用、就労移行支援事業所の利用、A型・B型事業所など、選択肢は多岐にわたります。

    トライアル雇用のデメリットが気になる方は、

    複数のルートを比較したうえで最善の方法を選びましょう。

    障害者トライアル雇用のデメリットを踏まえた賢い活用法|まとめ

    障害者トライアル雇用は、職場との相性を確かめながら就職できる有効な制度です。継続雇用率は8割を超えており、未経験やブランクのある方にも門戸が開かれています。一方で、トライアル終了後に不採用となるリスクや求人数の少なさ、精神的な負担といったデメリットも無視できません。

    制度を上手に活用するためには、トライアル期間中に確認すべきポイントを整理しておくこと、合わないと感じたら早めに相談すること、そして転職エージェントを併用して選択肢を広げることが大切です。デメリットを正しく理解し、適切な対策を講じたうえで、自分らしい働き方への第一歩を踏み出してみてください。