「障害者雇用で働いているけれど、もう辞めたい」——そう感じていませんか。配慮不足や人間関係の悩みなど理由は人それぞれですが、勢いで退職すると後悔につながることもあります。

本記事では辞めたくなる原因を整理し、対処法から転職エージェントの活用法まで解説します。

Contents

障害者雇用で「辞めたい」と感じるのは珍しいことではない

障害者雇用で「辞めたい」と思うのは特別なことではありません。データからも多くの方が同じ悩みを抱えていることがわかります。

障害者雇用の離職率はどのくらい?一般雇用との比較

障害者職業総合センター(JEED)の調査では、就職1年後の定着率は身体障害者で60.8%、知的障害者で68.0%、精神障害者では49.3%です。精神障害のある方は約半数が1年以内に離職している計算になります。

一般労働者の離職率が年間約15%前後であることを踏まえると、

障害者雇用の離職率は全体的に高い水準にあるといえます。

参照:JEED「障害者の就業状況等に関する調査研究」(2017年) 

「辞めたい」と感じやすいタイミングとは

就職から3か月以内に離職が集中する傾向があります。入社直後は理想と現実のギャップを感じやすく、「思っていた仕事と違う」「配慮が十分でない」といった不満が噴出しやすい時期です。

さらに半年〜1年後になると、周囲から「もう慣れたはず」と見なされて支援体制が薄れ、業務の負担が増えることで再び「辞めたい」気持ちが強まるケースも多く見られます。

【障害種別】障害者雇用を辞めたくなる主な原因

辞めたくなる背景は障害の種別によって傾向が異なります。

身体障害のある方が抱えやすい職場の悩み

厚生労働省の資料では、身体障害者の継続雇用の課題として「体力との関係」「通勤の負担」が挙げられており、雇用者の高齢化傾向も指摘されています。また、仕事を続ける上で改善が必要な点として「能力に応じた評価、昇進・昇格」が28.0%で最多となっています。

参照:厚生労働省「障害者雇用の現状等」(平成29年9月20日) 

精神障害のある方が抱えやすい職場の悩み

「疲れやすい」「症状が悪化した」「人間関係がつらい」が特徴的です。平均勤続年数は5年3か月と短く、体調の波への理解不足で孤立しやすい傾向があります。

知的障害のある方・ご家族が抱えやすい職場の悩み

業務への適応や職場コミュニケーションに困難を感じるケースが多く、JEEDの調査では「コミュニケーションを容易にする手段や支援者の配置」を求める声が24.2%ありました。

業務指示が口頭だけで伝わりにくかったり、困ったときに誰に相談すればよいか

わからなかったりする状況が、大きなストレスにつながります。

ご家族が本人に代わって悩みを抱え込むケースも少なくありません。

参照:JEED「障害のある求職者の実態調査 中間報告

発達障害のある方が抱えやすい職場の悩み

暗黙のルールや曖昧な指示への対応に苦労しやすい反面、障害者求人での1年後定着率は79.5%と高く、マッチング次第で長く働けます。ミスマッチ時に退職意向が強まりやすいのが特徴です。

障害者雇用を辞めたい理由で特に多い5つのケース

障害種別を問わず多い退職理由を整理しました。

職場の配慮が不十分で働きづらい

合理的配慮は法律上の義務ですが、実際には「頼みづらい」「対応されない」という声が多くあります。設備面のバリアフリーだけでなく、業務量の調整、休憩の取りやすさ、通院のための時間確保といったソフト面の配慮が不足していることも大きな原因です。

配慮を申し出ること自体にハードルを感じ、

我慢を重ねた結果、限界を迎えてしまうパターンは珍しくありません。

業務内容が単調・スキルアップできない

単純作業に限定され「やりがいがない」「キャリアの先が見えない」と感じる方は少なくありません。障害者雇用では補助的な業務だけを割り当てられるケースがあり、スキルを伸ばしたい方にとっては大きな不満要因になります。

成長実感のない状態が長く続くと、モチベーションの低下だけでなく「自分はここにいる意味があるのか」という自己肯定感の低下にもつながりかねません。

同僚や上司との人間関係がうまくいかない

厚生労働省の資料でも「職場の雰囲気・人間関係」は離職理由の上位です。障害への無理解や過度な気遣い、放置がストレスになります。

参照:厚生労働省「障害者雇用の現状等」(平成29年)

体調やメンタルの悪化が続いている

特に精神障害のある方に多く、無理を続けた結果、長期離脱につながることもあります。早めの対処が大切です。

給料が低く生活が厳しい

令和5年度の調査では、平均月額賃金は身体障害者が約23万5,000円に対し、精神障害者は約14万9,000円、知的障害者は約13万7,000円です。

参照:厚生労働省「令和5年度障害者雇用実態調査結果報告書

辞めたいと感じたときにまず試してほしい5つの対処法

すぐに退職届を出す前に、以下の方法を試してみてください。

自分の「辞めたい理由」を紙に書き出して整理する

「人間関係」「業務」「体調」「給与」など項目別に整理し、解決可能なものとそうでないものを切り分けましょう。

漠然と「つらい」「辞めたい」と感じている状態では、適切な対処法が見えてきません。紙やノートに書き出すことで思考が整理され、「実は体調面が一番の問題だった」「給与さえ改善すれば続けられる」といった本当の原因に気づけることがあります。

上司や人事に合理的配慮の見直しを相談する

配慮内容が入社時のまま見直されていないケースは多くあります。体調や業務内容は時間とともに変化するため、定期的な見直しが本来は必要です。「何をどうしてほしいか」を具体的に伝えることで、状況が改善する可能性があります。

たとえば「週1回の在宅勤務を認めてほしい」「電話対応を免除してほしい」など、

できるだけ明確な形で要望を伝えると、会社側も対応しやすくなります。

就労支援機関・定着支援サービスを活用する

障害者就業・生活支援センターや就労定着支援事業所などの第三者が介入することで、職場への要望が伝えやすくなります。自分一人で上司に掛け合うのが難しい場合でも、支援員が間に入って調整してくれるため、問題がスムーズに解決するケースがあります。

JEEDの調査でも、支援機関との連携がある場合は職場定着率が高まることが確認されています

産業医やカウンセラーに相談する

産業医やEAP(従業員支援プログラム)があれば積極的に利用しましょう。医療的な視点で対処法が見つかることがあります。

休職制度の利用を検討する

体調不良が続く場合は休職も選択肢です。傷病手当金を受給できる場合もあるため、事前に条件を確認しておきましょう。

対処しても改善しない場合は転職を前向きに考えよう

対処法を試しても変わらなければ、転職も前向きな選択肢です。

「逃げの転職」ではなく「自分を守る転職」という考え方

合わない環境から離れるのは自己防衛です。辞めたい理由を明確にし、次の職場で同じ問題を繰り返さないよう準備することが成功のカギです。

障害者雇用から一般雇用に切り替えるという選択肢

一般雇用で働く選択もありますが、配慮が得にくくなる面があります。JEEDの調査では、一般求人で障害を開示せず就職した場合、定着率が大きく低下する傾向が示されています。

自分に必要な配慮の度合いを冷静に見極めた上で、

障害者雇用枠と一般雇用のどちらが自分に合っているかを判断しましょう。

退職前に確認しておきたい公的支援・手当

失業給付(障害者は給付日数が優遇)、自立支援医療、障害年金など活用できる制度があります。退職前にハローワーク等で確認しておくと安心です。

障害者雇用の転職で転職エージェントを活用すべき理由

転職を決意したら、障害者雇用に特化した転職エージェントの活用がおすすめです。

ハローワークや求人サイトで自力で探すこともできますが、障害者雇用の求人は一般に比べて情報が少なく、自分に合った職場を見つけるのが難しいのが実情です。専門のエージェントを利用することで、ミスマッチを防ぎながら効率よく転職活動を進められます。

障害者雇用に特化したエージェントとは?

障害のある方の転職を専門に支援する人材紹介サービスです。障害特性に詳しいキャリアアドバイザーが在籍しており、求人紹介から応募書類の作成支援、面接対策、入社後のフォローまで一貫してサポートしてくれます。

ハローワークとの違いは、企業の社風や配慮体制といった内部情報まで把握している点です。「前の職場で配慮が足りなかった」という経験をアドバイザーに伝えれば、同じ失敗を繰り返さない企業を選んでもらいやすくなります。

具体的には、「dodaチャレンジ(求人が幅広い)、atGP(定番エージェント)、障害者雇用バンク(20代・30代に強み)、LITALICO仕事ナビ(求人豊富な定番サービス)、マイナビパートナーズ紹介(定着支援も提供)などの転職エージェントがあり、1人ひとりに合わせたサポートを提供しています。

転職エージェントを使う3つのメリット

メリットは主に3つあります。

1つ目は、一般の求人サイトには掲載されていない非公開求人を紹介してもらえることです。障害者雇用に積極的な企業が、エージェント経由でのみ募集しているケースは少なくありません。

2つ目は、自分の障害特性に合った企業をプロの視点で選んでもらえることです。職場環境や配慮実績をもとに提案してくれるため、ミスマッチのリスクが下がります。3つ目は、応募書類の添削や面接練習といったサポートが無料で受けられることです。

障害をどう説明すればよいか迷う方も多いですが、

アドバイザーと一緒に整理することで自信を持って選考に臨めます。

エージェント利用の流れと費用

利用の流れは、Webサイトから登録→アドバイザーとの初回面談→希望条件に合った求人の紹介→応募・書類選考・面接→内定・入社、というステップが一般的です。初回面談では、障害の内容や必要な配慮、希望の働き方などを丁寧にヒアリングしてもらえます。

費用は求職者側には一切かかりません。企業が採用成功時にエージェントへ報酬を支払う仕組みのため、安心して利用できます。オンライン面談や電話面談に対応しているエージェントがほとんどなので、在職中で時間が取りにくい方でも無理なく相談を始められます。

自分に合ったエージェントの選び方

エージェント選びでは、自分の障害種別における支援実績、対応エリア、保有求人の量と質をまず確認しましょう。精神障害に強いエージェント、身体障害向けの求人が豊富なエージェントなど、それぞれ得意分野が異なります。1社だけに絞らず、2〜3社に登録して比較するのがおすすめです。

実際に面談してみて、「障害について決めつけずに話を聞いてくれるか」「希望条件を一方的に否定しないか」といった点を判断基準にすると、相性の良いアドバイザーを見つけやすくなります。

障害のある方向けの転職サービスについては、以下の記事が参考になります。

    障害者雇用を辞める前に知っておきたい注意点

    退職を決めたあとも押さえるべきポイントがあります。

    退職の伝え方とスムーズな手続き

    就業規則を確認し、少なくとも1か月前に直属の上司へ伝えましょう。退職理由は「一身上の都合」で問題ありませんが、感情的にならず冷静に伝えることが大切です。

    引き継ぎのスケジュールも併せて相談すると、円満退職につながります。

    また、退職届を提出する前にメールや口頭で意思を伝え、

    合意を得てから書面にするとトラブルを避けやすくなります。

    失業保険・傷病手当金の受給条件を確認する

    障害者は「就職困難者」として一般より長い給付日数が適用される場合があります。たとえば、45歳未満で被保険者期間1年以上の場合、一般の離職者が90日であるのに対し、就職困難者は300日まで延長されます。

    在職中に病気やけがで休職していた方は、傷病手当金との調整が必要になることもあるため、退職前にハローワークや健康保険組合で条件を確認しておきましょう。

    ブランク期間をつくらないためのスケジュール管理

    在職中から転職エージェントに登録し、退職日と入社日を近づけるよう計画しましょう。ブランクが長引くと再就職のハードルが上がります。

    まとめ|障害者雇用を辞めたい気持ちを否定せず、最善の選択をしよう

    障害者雇用を辞めたいと感じること自体は悪いことではありません。辞めたい理由を整理し、まず今の環境で対処法を試してみましょう。それでも改善しなければ、転職エージェントを活用して前向きに次のキャリアを考えてください。あなたの心身の健康を最優先に、自分に合った働き方を見つけていきましょう。