双極性障害と診断されても、自分に合った仕事を見つけることで、安定して働き続けることは十分に可能です。この記事では、双極性障害の方が抱えやすい就労の悩みや、おすすめの職種、利用できる支援制度について詳しく解説します。自分らしく働くためのヒントを見つけていきましょう。
Contents
双極性障害(双極症)の基本を理解しよう

まず、双極性障害(双極症)とはどのような障害か、基本的な内容を確認します。
双極性障害とはどのような病気?
双極性障害は、気分が高揚する「躁状態」と、気分が落ち込む「うつ状態」を繰り返す精神疾患です。かつては「躁うつ病」とも呼ばれていました。気分の波は数週間から数ヶ月単位で変動し、日常生活や仕事に大きな影響を与えることがあります。
適切な治療と環境調整により、症状をコントロールしながら社会生活を送ることが可能です。100人に1人程度の割合で発症すると言われています。
Ⅰ型とⅡ型で異なる症状の特徴
双極性障害にはⅠ型とⅡ型があり、躁状態の程度が異なります。
- Ⅰ型
- 激しい躁状態が現れ、入院が必要になることもあります。
- Ⅱ型
- 軽い躁状態(軽躁状態)にとどまり、本人や周囲が気づきにくいのが特徴です。Ⅱ型ではうつ状態の期間が長く、うつ病と誤診されるケースもあります。
どちらのタイプでも、症状に合わせた働き方の工夫が重要になります。
双極性障害がある方の就労における悩みとは

次に、双極性障害がある方の就労における悩みについてまとめます。以下のような悩みが多く見られます。
- 気分の変動により仕事のパフォーマンスが安定しない
- 予定管理や優先順位づけが苦手になる
- 職場の人とのコミュニケーションでつまずきやすい
- 欠勤が増えたり、退職を繰り返してしまう
順に見ていきましょう。
気分の変動により仕事のパフォーマンスが安定しない
- 躁状態:過度に活動的になり、無理なスケジュールを組んでしまったり、ミスが増えたりする
- うつ状態:集中力や判断力が低下し、普段できていた業務が難しくなる
このような気分の波により、仕事の質や量が安定せず、自己評価の低下や職場での評価に影響が出ることがあります。症状の波を理解してもらえる環境が大切です。
予定管理や優先順位づけが苦手になる
症状が出ているときは、計画を立てたり、複数のタスクの優先順位をつけたりすることが難しくなります。
- 躁状態:次々と新しいことに手を出してしまう
- うつ状態:何から手をつければよいか分からなくなる
締め切りを守れなかったり、重要な仕事を後回しにしてしまったりすることで、業務に支障をきたす場合があります。
職場の人とのコミュニケーションでつまずきやすい
- 躁状態:多弁になったり、衝動的な発言をしてしまったりする
- うつ状態:人と話すこと自体が負担になり、必要な報告や相談ができなくなる
このような変化が周囲に理解されないと、人間関係のトラブルにつながることがあります。特に症状について説明していない職場では、誤解を招きやすい状況です。
欠勤が増えたり、退職を繰り返してしまう
症状の悪化により、通勤や業務の遂行が困難になり、欠勤が増えることがあります。
また、躁状態での衝動的な退職や、うつ状態での極度の疲労感から、仕事を続けられなくなるケースも少なくありません。転職を繰り返すことで経済的な不安や自信の喪失につながり、就労へのハードルがさらに高くなる悪循環に陥ることもあります。
就職・転職活動を始めるベストなタイミングとは?

続いて、就職・転職活動を始めるベストなタイミングについてまとめます。以下の側面から解説します。
- 躁の時期は判断力が低下するため要注意
- 医師や支援者に相談してから動き出そう
順に見ていきましょう。
躁の時期は判断力が低下するため要注意
躁状態のときは自信に満ち溢れ、「何でもできる」と感じやすくなります。しかし、この時期の判断は現実離れしていることが多く、自分の能力を過大評価して難易度の高い仕事に飛びついたり、十分な準備なしに転職を決めたりしてしまいます。
その結果、症状が落ち着いた後に後悔したり、仕事が続かなくなったりするリスクがあります。躁状態での大きな決断は避けるべきです。
医師や支援者に相談してから動き出そう
就職活動を始める際は、主治医や支援機関のスタッフに相談することをおすすめします。
- 現在の症状が安定しているか
- どの程度の労働時間や業務負荷なら対応できるか
を、専門家の視点から判断してもらえます。また、障害者雇用での就職や、就労移行支援の利用など、自分に合った選択肢についてもアドバイスを受けられます。
焦らず、準備を整えてから動き出しましょう。
双極性障害の方が安心して働ける職場の条件

次に、双極性障害の方が安心して働ける職場の条件についてまとめます。以下の条件が挙げられます。
- 病気への理解と配慮が得られる環境
- 困ったときに相談できる体制が整っている
- 時短勤務やリモートワークなど柔軟な働き方が可能
- 急な変更や繁閑差の少ない安定した業務内容
- 毎日同じ流れで進むルーティン業務が多い
- 刺激が少なく穏やかな職場環境
1つずつ見ていきましょう。
病気への理解と配慮が得られる環境
職場が双極性障害について理解し、必要な配慮を提供してくれることが最も重要です。
- たとえば
- 障害者雇用での採用や、オープン就労(障害を開示して働くこと)を選択することで、通院のための休暇や業務量の調整などの配慮を受けやすくなります。理解ある上司や同僚がいる環境では、症状の変化にも柔軟に対応してもらえ、長く働き続けられる可能性が高まります。
困ったときに相談できる体制が整っている
定期的な面談や相談窓口があり、仕事上の悩みや体調の変化を気軽に話せる環境が理想的です。
- たとえば
- 産業医や保健師が在籍している企業、障害者雇用の定着支援を行っている企業では、専門的なサポートを受けられます。また、就労移行支援事業所の定着支援サービスを利用することで、職場外にも相談相手を持つことができ、困ったときの選択肢が広がります。
時短勤務やリモートワークなど柔軟な働き方が可能
通院や体調管理のために、勤務時間や働き方に柔軟性がある職場が適しています。
- たとえば
- 週3〜4日勤務や、1日6時間などの短時間勤務からスタートできる環境なら、無理なく働き始められます。また、在宅勤務が可能であれば、通勤の負担が減り、自分のペースで業務を進めやすくなります。徐々に勤務時間を増やしていくステップアップも検討しやすくなります。
急な変更や繁閑差の少ない安定した業務内容
予測可能な働き方ができる環境は、生活リズムを整えやすく、症状の安定にもつながります。
- 安定したスケジュールで進められる業務
- 繁忙期と閑散期の差が少ない職種
が向いています。
また、急な残業や休日出勤が頻繁にある職場は避けた方が無難です。突発的な予定変更や、時期によって極端に忙しくなる仕事は、症状を悪化させる要因になります。
毎日同じ流れで進むルーティン業務が多い
決められた手順で進められる定型業務が中心の仕事は、双極性障害の方に適しています。毎日同じパターンで作業できることで、気分の波があっても業務を進めやすくなります。マニュアルがしっかりしている職場もおすすめです。
反対に、
- 常に新しい判断や創造性が求められる仕事
- 臨機応変な対応が必要な業務
は、症状によってはストレスになる場合があります。
刺激が少なく穏やかな職場環境
騒がしい環境や、プレッシャーの強い職場は症状を悪化させることがあります。
- 静かで落ち着いた雰囲気の職場
- 個人作業が中心で対人ストレスが少ない環境
が理想的です。
また、競争が激しい雰囲気や、常に高い目標達成を求められる職場よりも、自分のペースで着実に業務を進められる環境の方が長く働きやすいでしょう。照明や音などの感覚刺激にも配慮がある職場が望ましいです。
双極性障害の方におすすめの仕事・職種10選

次に、双極性障害の方におすすめの仕事・職種をご紹介します。以下の通りです。
- データ入力・事務作業
- 図書館司書・書店スタッフ
- 軽作業・梱包・清掃業務
- 在宅でできるWebライター・テープ起こし
- プログラマー・IT系職種(条件次第)
順に見ていきましょう。
データ入力・事務作業
パソコンを使ったデータ入力や書類整理などの事務作業は、ルーティンワークが中心で予測しやすい業務内容です。一人で黙々と作業できる時間が多く、対人ストレスも比較的少ないのが特徴です。在宅勤務が可能な企業も増えており、自分のペースで働きやすい職種といえます。
障害者雇用での求人も多く、配慮を受けながら働ける可能性が高い仕事です。
図書館司書・書店スタッフ
図書館や書店は静かで落ち着いた環境であり、刺激が少ない職場です。本の整理や貸し出し業務など、ルーティンワークが中心で、マイペースに作業できます。利用者とのやり取りも穏やかなことが多く、過度な対人ストレスがかかりにくいのがメリットです。
本が好きな方にとっては、興味のある分野で働けるというやりがいもあります。
軽作業・梱包・清掃業務
倉庫での商品のピッキングや梱包作業、清掃業務などは、決められた手順で進められるシンプルな仕事です。黙々と作業に集中できる環境を求める方に向いています。複雑な判断を求められることが少なく、体を動かすことでリフレッシュにもなります。
短時間勤務からスタートできる求人も多く、障害者雇用の受け入れ実績がある企業も多数あります。
在宅でできるWebライター・テープ起こし
自宅で自分のペースで進められる在宅ワークは、通勤の負担がなく、柔軟に働ける点が魅力です。Webライターやテープ起こしの仕事は、締め切りさえ守れば時間の使い方を自分で決められます。
ただし、自己管理が求められるため、症状が安定している時期に始めることが重要です。クラウドソーシングサイトを利用すれば、小さな案件から始められます。
プログラマー・IT系職種(条件次第)
プログラミングやシステム開発などのIT職種は、在宅勤務やフレックス制度を導入している企業が多く、柔軟な働き方が可能です。障害者雇用でIT職を募集している企業も増えています。
一人で集中して作業する時間が長く、自分のペースで進めやすい面があります。
ただし、
- 納期のプレッシャーが大きいプロジェクト
- 頻繁な仕様変更がある現場
は避けた方が無難です。
双極性障害の方が知っておきたい支援制度

双極性障害の方が知っておきたい支援制度をご紹介します。以下の精度があります。
- 自立支援医療
- 精神障害者保健福祉手帳
- 障害年金
順に見ていきましょう。
自立支援医療で通院費の負担を軽減
自立支援医療制度を利用すると、精神科の通院費や薬代の自己負担額が原則1割に軽減されます。継続的な治療が必要な双極性障害の方にとって、経済的な負担を大幅に減らせる重要な制度です。
市区町村の窓口で申請でき、所得に応じた月額上限も設定されています。診断書や保険証などの書類が必要ですが、主治医に相談すればスムーズに手続きを進められます。
精神障害者保健福祉手帳を取得するメリット
精神障害者保健福祉手帳を取得すると、
- 税金の控除
- 公共交通機関の割引
- 携帯電話料金の減免
などの経済的メリットがあります。また、障害者雇用枠での就職が可能になり、企業から配慮を受けやすくなります。
手帳は1級から3級まであり、症状の程度に応じて認定されます。市区町村の窓口で申請でき、2年ごとの更新が必要です。
取得を迷っている方は、まず医師に相談してみましょう。
障害年金の受給条件と申請方法
障害年金は、病気やケガで日常生活や仕事に制限がある場合に支給される年金制度です。双極性障害でも、症状の程度によっては受給できる可能性があります。初診日から1年6ヶ月経過していることや、保険料の納付要件を満たしていることが条件です。
申請には診断書や病歴・就労状況等申立書などが必要で、手続きが複雑なため、社会保険労務士に相談することもおすすめです。
就職活動で頼れる相談先・支援サービス

続いて、就職活動で頼れる相談先・支援サービスをまとめます。以下の通りです。
- ハローワークの専門援助窓口
- 障害者雇用に特化した人材紹介サービス
- 就労移行支援事業所
1つずつ見ていきましょう。
ハローワークの専門援助窓口を活用する
ハローワークには障害者専門の窓口があり、障害の特性に配慮した求人紹介や就職相談を受けられます。専門の相談員が、適性や希望に合った仕事探しをサポートしてくれます。
障害者向けの合同面接会やセミナーも定期的に開催されています。
利用は無料で、全国のハローワークで対応しているため、気軽に相談できる身近な支援機関です。
障害者雇用に特化した人材紹介サービス
民間の障害者雇用専門の転職エージェントは、企業との深いつながりを活かした求人紹介が強みです。非公開求人も多く、一般のハローワークでは見つからない好条件の仕事に出会える可能性があります。キャリアカウンセラーが面接対策や履歴書の添削もサポートしてくれるため、就職活動に不安がある方でも安心です。
- たとえば
- dodaチャレンジは、ハイクラスもふくめた幅広い求人が特徴です。atGPは転職サイト・転職エージェント両方の使い方が可能でスカウトも受けられます。障害者雇用バンクは20代・30代の求人に強みがあります。複数のサービスに登録して、自分に合った求人を探すのがおすすめです。
就労移行支援事業所でスキルと自信をつける
就労移行支援は、一般企業への就職を目指す障害者向けのトレーニング施設です。
- ビジネスマナー
- パソコンスキル
- コミュニケーション能力
などを習得しながら、自分の適性や働き方を見つけていきます。体調管理や生活リズムを整えるサポートも受けられ、就職後の定着支援もあります。
原則2年間利用でき、自己負担は前年度の世帯収入に応じて決まります。多くの方が無料で利用しています。
双極性障害と向き合いながら自分らしいキャリアを築くために

双極性障害があっても、適切な治療と環境選びによって、安定して働き続けることは可能です。大切なのは、自分の症状の特徴を理解し、無理のない働き方を選択することです。焦らず、支援制度や相談機関を活用しながら、自分に合った仕事を見つけていきましょう。
症状の波と上手に付き合いながら、長く働けるキャリアを築いていくことができます。まずは小さな一歩から始めてみてください。



