適応障害と診断され、退職を考えている方にとって最も心配なのが退職後のお金のことではないでしょうか。結論から言えば、傷病手当金は条件を満たせば退職後も受け取れます。本記事では傷病手当金や失業保険の仕組み、退職手続きの流れ、再就職に向けた転職エージェントの活用法まで丁寧に解説します

Contents

そもそも適応障害とはどんな病気か

次に、適応障害とはどんな病気か確認しておきましょう。

適応障害の主な症状と原因

適応障害とは、職場の人間関係や過度な業務負荷など特定のストレス要因に心身が過剰に反応する状態です。

  • 不安感
  • 抑うつ気分
  • 不眠
  • 食欲低下

などが代表的な症状で、日常生活に支障をきたします。

厚生労働省の調査では、2024年度の精神障害にかかる労災の支給決定件数は1,055件と6年連続で増加しています

参照:労働政策研究・研修機構「精神障害の労災支給決定件数が6年連続の増加」 

うつ病との違いと診断基準

適応障害はストレスの原因が明確で、原因から離れると症状が和らぐ点がうつ病と異なります。うつ病はストレス要因が除かれても症状が持続しやすく、治療方針も変わります。適応障害はICD-10のF43「重度ストレスへの反応および適応障害」に分類される、れっきとした疾患です。

適応障害を理由に仕事を辞めるのは甘えではない

適応障害を理由に仕事を辞めるのは甘えではないか、と不安になる方もいることでしょう。しかし決して甘えなどではありません。次に甘えではないと言える理由を確認しましょう。

職場環境が原因なら退職は有効な選択肢になる

適応障害の治療の基本はストレス要因を取り除くことです。

職場そのものが原因であれば、退職して環境を変えることは医学的にも合理的な判断といえます。

「甘えではないか」と自分を責める必要はありません。回復を最優先に考えましょう。

無理に働き続けるリスクとは

症状を抱えたまま勤務を続けると、うつ病などの重い精神疾患へ移行するおそれがあります。回復に要する期間が長引き、社会復帰がかえって困難になるリスクもあるため、早めに主治医へ相談し、休職や退職を含めた対応を検討することが大切です。

適応障害で仕事を辞めた人のリアルな体験談

続いて、適応障害で仕事を辞めた人の声をまとめます。

実際に離職を選んだ人の割合はどのくらいか

厚生労働省の「令和5年 労働安全衛生調査(実態調査)」によると、メンタルヘルス不調で連続1か月以上休業した労働者がいた事業所は10.4%、退職者がいた事業所は6.4%です。精神的な不調で職場を離れる人は珍しくありません

参照:厚生労働省「令和5年 労働安全衛生調査(実態調査)」 

辞めてよかったと感じたこと

経験者からは

「ストレスの原因から離れて体調が改善した」
「通勤の苦痛がなくなった」
「人生を見つめ直す時間が持てた」

といった声が多く聞かれます。適応障害はストレス要因からの距離が回復の鍵となるため、退職が転機になるケースは多いです。

辞めたあとに後悔したこと

一方で

「収入が途絶えて生活が苦しくなった」
「制度をもっと調べてから辞めればよかった」

という後悔の声もあります。傷病手当金や失業保険の知識を事前に持っておくことが、退職後の不安を和らげるポイントです。

再就職で苦労した点・意識したこと

「退職理由をどう説明するか」で悩む方が多いです。面接で病名を伝える義務はなく、「体調管理のため」など前向きな表現を準備しておくと安心です。また、無理のない勤務形態の求人を選ぶことも再発防止に役立ちます。

いま退職を迷っている人へのメッセージ

退職はゴールではなく新しいスタートです。まずは医師の判断を仰ぎ、使える制度を把握したうえで決断してください。一人で悩まず、専門家や支援機関を頼ることが大切です。

適応障害で退職する前に知っておきたい注意点

次に、適応障害で退職する前に知っておきたい注意点を具体的に挙げていきます。

法律上は退職の意思表示から2週間で辞められる

民法第627条により、期間の定めのない雇用契約では退職の意思表示から2週間で雇用関係は終了します。ただし就業規則で「30日前までに届け出」と定めている会社も多いため、事前確認をおすすめします

主治医や産業医に相談してから判断する

退職前に主治医へ病状と就労可否の意見を聞くことが大切です。医師の診断書は傷病手当金の申請や、ハローワークで「特定理由離職者」の認定を受ける際にも必要になります。

産業医がいる会社なら面談も活用しましょう。

休職と退職のどちらが有利か比較する

休職中は在籍したまま傷病手当金を受給でき、社会保険料も会社と折半です。退職すると国民健康保険への切り替えが必要で保険料は全額自己負担になります。経済面のメリット・デメリットを比較し、慎重に判断しましょう。

適応障害による退職手続きの具体的なステップ

続いて、適応障害による退職手続きの具体的なステップを順に解説します。

上司・人事に退職の意思を伝える方法

直属の上司に退職意思を伝えるのが一般的ですが、対面が難しければメールや書面でも問題ありません退職時期や引き継ぎについて整理しておくとスムーズに進められます。

就業規則を確認して必要書類を提出する

退職届のフォーマットや提出先は会社ごとに異なります。就業規則に従って手続きしましょう。「退職届」は撤回が原則できない確定的な意思表示ですので、提出前の確認が必要です。

体調不良で出社できないときの対処法

出社が困難な場合、退職届を内容証明郵便で送付する方法があります。届出の事実と日付を証拠として残せるため、後のトラブル防止に有効です。

退職代行サービスを利用する選択肢もある

会社との直接やりとりが困難な場合は退職代行サービスも検討できます。弁護士や労働組合が運営するサービスなら有給消化の交渉まで対応可能で、費用は2〜5万円程度が相場です。

退職後に受け取れる傷病手当金の仕組み

次に、退職後に受け取れる傷病手当金について解説します。

傷病手当金の制度概要と支給の目的

傷病手当金とは?
健康保険の被保険者が業務外の病気やけがで働けなくなった際に所得を保障する制度です。

適応障害やうつ病などの精神疾患も対象に含まれ、治療に専念するための経済的な支えとなります。

参照:全国健康保険協会「病気やケガで会社を休んだとき」

傷病手当金の対象になる人・ならない人

受給には4つの条件を満たす必要があります。

①業務外の病気・けがで療養中
②就労不能の状態
③連続3日間の待期期間を含み4日以上休業
④休業中に給与の支払いがないこと

国民健康保険の加入者は原則対象外です。

支給額の計算方法と受給可能な期間

1日あたりの支給額は

直近12か月間の標準報酬月額の平均÷30×2/3

で算出され、おおむね額面給与の約3分の2が目安です。受給期間は支給開始日から通算して最長1年6か月間です。2022年1月の法改正で途中就労した期間は除外して通算されるようになりました。

参照:全国健康保険協会「傷病手当金」

退職後も傷病手当金を継続して受け取るための条件

退職後の継続受給には、

①退職日までに被保険者期間が継続して1年以上あること
②退職日に傷病手当金を受給中か受給できる状態にあること

の2点が必要です。退職日に出勤すると資格を失うため、退職日は必ず欠勤扱いにしてください

申請手続きの流れと必要書類

「健康保険 傷病手当金支給申請書」に本人・事業主・主治医がそれぞれ記入し、協会けんぽまたは健康保険組合に提出します。不備がなければ約10営業日で支給されます。時効は2年間ですので早めの手続きが安心です。

失業保険(雇用保険の基本手当)も併せて確認しよう

さらに失業保険についても確認しておきましょう。

失業保険の基本的な仕組み

失業保険(雇用保険の基本手当)は、離職後の生活を支え再就職を促す給付金です。ハローワークに求職申込みを行い、「働く意思と能力がある」と認められた場合に支給されます。

参照:ハローワークインターネットサービス「基本手当について」 

受給資格を満たす条件とは

原則として離職前2年間に被保険者期間が通算12か月以上必要です。ただし適応障害による退職で「特定理由離職者」に該当すれば、離職前1年間に6か月以上の被保険者期間で受給可能になります。

支給額の目安ともらえる日数

基本手当日額は離職前6か月の賃金をもとに算出され、目安は離職前給与の50〜80%程度です。

所定給付日数は加入期間・年齢・離職理由により90日〜330日の幅があります。

参照:ハローワークインターネットサービス「基本手当の所定給付日数」 

特定理由離職者に該当すれば給付制限が免除される

適応障害で退職し、医師の診断書をハローワークに提出すると「特定理由離職者」に認定される可能性があります。認定されれば自己都合退職で通常発生する1か月の給付制限期間が免除され、7日間の待期期間後すぐに給付が始まります

参照:ハローワークインターネットサービス「特定受給資格者及び特定理由離職者の範囲の概要」 

傷病手当金と失業保険は同時に受給できるのか

両者の同時受給はできません。傷病手当金は「働けない状態」、失業保険は「働く意思と能力がある」ことが前提だからです。まず傷病手当金で治療に専念し、回復後に失業保険へ切り替えるのが一般的です。受給期間延長(最長4年間)の申請も忘れずに行いましょう。

適応障害からの再就職を成功させるために

最後に、適応障害からの再就職を成功させるために理解しておくべき点を解説します。

体調が安定してから転職活動を始める重要性

回復が不十分なまま転職すると新しい職場で再発するリスクがあります。主治医から「就労可能」と判断されてから動き始めても遅くはありません。焦らず、自分の体調と相談しながら進めましょう。

転職エージェントを活用するメリット

転職エージェントは求人紹介に加え、退職理由の伝え方のアドバイスや履歴書添削、面接日程の調整まで無料でサポートしてくれますメンタルヘルスに理解がある企業の紹介を受けられる点も大きな利点です。登録するだけでも情報収集の幅が広がります。

具体的には
LITALICO仕事ナビ(求人豊富な定番サービス)」「かべなし求人ナビ(就労移行支援や就労継続支援も確認できる)」「エージェント・サーナ(非公開求人が豊富)」などの転職エージェントがあり、1人ひとりに合わせたサポートを提供しています。
適応障害のある方向けの転職サービスについては、以下の記事が参考になります。

「適応障害のある方向けのおすすめ転職エージェント15選!特徴も比較・解説」

適応障害に理解のある職場を見つけるコツ

再発防止には職場選びが重要です。転職エージェントのキャリアアドバイザーに社風や労働環境の内部情報を聞くのが効果的です。ストレスチェックの実施状況や産業医の配置など、健康経営への取り組みも企業選びの判断材料にしましょう。

まとめ|適応障害での退職は正しい手順と制度の理解で不安を減らせる

適応障害による退職は甘えではなく、心と体を守るための前向きな判断です。傷病手当金は退職後も通算最長1年6か月にわたり受給でき、失業保険は特定理由離職者に認定されれば給付制限なしで受け取れます退職前に主治医へ相談し、制度を正しく理解しておくことが安心への第一歩です。再就職では転職エージェントを活用し、自分に合った職場を見つけてください。