障害があっても自分のスキルを活かして自由に働きたい──そう考えてフリーランスという働き方に関心を持つ方が増えています。内閣官房の調査によれば、日本のフリーランス人口は約462万人にのぼり、多様な働き方の一つとして社会に定着しつつあります。

本記事では障害者がフリーランスとして独立する際のメリット・デメリットから、活用できる支援制度、そして「やはり会社で働きたい」と思った場合の転職エージェント活用法まで網羅的に解説します。

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障害者にとってフリーランスという選択肢が注目される背景

企業に雇用される以外にも個人で仕事を請け負うフリーランスという道が、障害のある方にとって現実的な選択肢となりつつあります。なぜ今この働き方が注目されているのでしょうか。

雇用される以外の働き方が広がっている理由

厚生労働省の令和7年集計によると、民間企業で雇用されている障害者は約70万4,610人で22年連続の過去最高を更新しました。しかし法定雇用率を達成している企業は46.0%にとどまっており、障害者が希望する職種や勤務環境で就職できるとは限りません。

こうした現実が「企業に属さず自分で仕事を設計する」フリーランスへの関心を高めています。

参照:厚生労働省「令和7年 障害者雇用状況の集計結果」 

「働きづらさ」を自分の力で解消するという発想

求人の多くは勤務時間や勤務場所が固定されており、障害特性によってはマッチしないケースが少なくありません。フリーランスであれば作業環境やペース配分を自分自身で決められるため、「自分に合う仕事がないなら自分でつくる」という前向きな発想が多くの当事者に支持されています。

障害者がフリーランスで働く5つのメリット

フリーランスには障害のある方にとって特に大きな利点があります。ここでは代表的な5つのメリットを紹介します。

体調や障害の特性に合わせて仕事量・時間を調整できる

最大の魅力は、働く時間と仕事量を自分でコントロールできることです。体調に波がある方や定期的な通院が必要な方でも、調子に合わせてスケジュールを柔軟に組み替えられます。無理をせず長く働き続けるうえで、この自由度は非常に大きなメリットです。

自分の強みやスキルを軸にした仕事選びが可能

障害者雇用枠の求人は事務補助や軽作業に偏る傾向があり、専門スキルを持っていても活かしきれないことがあります。フリーランスであればデザインやプログラミング、ライティングなど自分の得意分野をそのまま仕事にできます。評価軸がスキルになるため、障害の有無に左右されにくいのも強みです。

在宅ワーク中心で通勤の負担をなくせる

満員電車やバスでの通勤は、身体的にも精神的にも大きな負担になりがちです。在宅で完結する案件を中心に選べば移動のストレスがなくなり、その分のエネルギーを本来の業務に集中させることができます。車いすユーザーや感覚過敏のある方にとって特に大きな利点です。

職場の対人関係から解放される

日常的な人間関係がストレスの大きな要因になるという方は少なくありません。フリーランスではクライアントとの必要最低限のやりとりで業務が完結するため、職場特有の気疲れから解放されます。コミュニケーションもチャットやメール中心にできるので、自分のペースで対応できます。

障害者がフリーランスで活躍しやすい職種一覧

具体的にはWebライター、グラフィックデザイナー、イラストレーター、Webエンジニア、動画編集者、データ入力、翻訳、ハンドメイド作家などが代表的です。いずれもパソコンとインターネット環境があれば在宅で取り組めるため、障害のある方が参入しやすい分野といえます。

障害者がフリーランスになる前に知っておくべきデメリット・リスク

自由度が高い反面、企業勤めにはないリスクも存在します。独立を決断する前にデメリットをしっかり把握しておきましょう。

毎月の収入が安定しない不安とどう向き合うか

フリーランスは案件ごとに報酬が発生する仕組みのため、月によって収入が大きく上下します。特に独立直後は顧客がつくまでに時間がかかるため、最低でも生活費の3〜6か月分を事前に貯蓄しておくことが推奨されます。副業から始めてリスクを分散する方法も有効です。

健康保険・年金など社会保障が手薄になる

会社員は厚生年金や健康保険に加入できますが、フリーランスになると国民健康保険・国民年金への切り替えが必要です。傷病手当金も原則として利用できなくなるため、民間の医療保険やフリーランス協会が提供する所得補償制度などで自分自身の備えを整えることが大切です。

スケジュール管理・体調管理をすべて自分で行う難しさ

自由に働けることの裏返しとして、納期の管理も体調不良時のリカバリーもすべて自分の責任になります。タスク管理ツールやカレンダーアプリを活用し、調子の良い日に作業を前倒しで進める習慣を身につけると、急な体調変化にも対応しやすくなります。

請求書作成・帳簿管理・確定申告の事務負担

フリーランスは営業や制作だけでなく、請求書の発行、帳簿の記帳、毎年の確定申告まで一人で対応する必要があります。freeeやマネーフォワードなどのクラウド会計ソフトを導入すると、帳簿付けから申告書類の作成まで大幅に効率化できるので、早めに導入しておきましょう。

相談相手が少なく孤独を感じやすい

一人で作業する時間が長くなると、仕事の悩みや不安を共有できる相手がいないことが精神的な負担になりがちです。フリーランス向けのオンラインコミュニティや障害当事者のSNSグループに参加するなど、意識的に人とのつながりを確保することが長く続けるコツです。

障害者がフリーランスとして独立するまでのステップ

いきなり独立するのではなく、段階を踏んで準備を進めることが成功率を高めます。以下の4ステップを参考にしてください。

Step1|自分の障害特性と「できること」を棚卸しする

まずは自分の体調の波、得意な作業内容、集中できる時間帯、苦手な環境などを書き出しましょう。自分だけでは客観視が難しい場合は、就労移行支援事業所やハローワークの職業評価を活用すると整理しやすくなります。

Step2|小さな案件から副業としてスタートする

最初はクラウドワークスやランサーズなどのクラウドソーシングサイトで小さな案件に挑戦してみましょう。副業であれば本業の収入を確保したまま実績を積めるため、いきなり収入がゼロになるリスクを避けられます。

Step3|事業計画を立てて開業届を提出する

副業で安定した収入が見込めるようになったら、事業の方向性を簡単にまとめて税務署に開業届を提出します。同時に青色申告承認申請書を出しておくと、最大65万円の特別控除が適用されるため節税効果も期待できます。

Step4|クラウドソーシングやSNSで仕事を獲得する

クラウドソーシング以外にも、自分の作品やスキルをSNSやポートフォリオサイトで発信することで仕事の幅が広がります。実績と信頼が蓄積されるにつれて指名での依頼が増え、収入も安定していきます。

活用できる支援制度・助成金を押さえよう

障害のある方がフリーランスで独立する際には公的な支援制度を活用できます。見逃しているケースが多いため、早い段階で情報を集めておきましょう。

障害者向けの創業・起業支援制度とは

日本政策金融公庫の「新規開業資金」は、障害のある方を含む幅広い層が低金利で融資を受けられる制度です。また各自治体が独自の創業支援補助金を設けていることもあるため、地元の商工会議所や中小企業支援センターに問い合わせてみましょう。

自治体や国の助成金・補助金の探し方

中小企業庁が運営する「ミラサポplus」や、各都道府県の産業支援ポータルサイトで最新の補助金・助成金情報を検索できます。個人事業主も対象となる「小規模事業者持続化補助金」は、販路開拓にかかる経費の一部が補助される使いやすい制度です。

就労継続支援事業所をスキルアップの場として使う方法

就労継続支援B型事業所のなかには、工賃を受け取りながらパソコン操作やWebデザインなどの実践的なスキルを習得できるところがあります。いきなり独立するのが不安な方は、スキルと実務経験を養う準備段階として活用することで、自信を持ってフリーランスに移行できます。

フリーランスと障害者手帳──等級による影響はあるのか

障害者手帳を持っていてもフリーランスになれるのかと心配する方は多くいます。ここでは手帳とフリーランス活動の関係を整理します。

手帳の有無・等級でフリーランス活動に制限はあるか

結論から言えば、開業届の提出に手帳の有無や等級は一切関係ありません。むしろ手帳を保有しているとメリットがあり、たとえば個人事業税の減免制度では、合計所得金額370万円以下の場合に障害者1人につき5,000円(特別障害者は10,000円)が減額される自治体があります。お住いの自治体についても調べてみるとよいでしょう。

参考:練馬区「個人事業税の減額

障害年金や各種手当との併用で注意すべきポイント

障害年金を受給しながらフリーランスとして収入を得ること自体は制度上問題ありません。ただし精神障害の場合、就労の状況が次回の更新審査で考慮される可能性があるため、事前に主治医や年金事務所に相談しておくと安心です。また特別障害者手当などには所得制限がある点も確認しておきましょう。

「やはりフリーランスは不安」と感じたら──転職エージェントという選択肢

フリーランスについて調べるなかで「収入が不安定になるのが怖い」「すべてを一人で抱えるのは難しい」と感じた方もいるでしょう。その場合は障害者専門の転職エージェントを活用するという道もあります。

障害者専門の転職エージェントを利用するメリット

障害特性に理解のあるキャリアアドバイザーが、求人の紹介から書類添削、面接対策までトータルに支援してくれます。一般の求人サイトには掲載されない非公開求人を多数保有しているケースも多く、自力の就職活動では出会えなかった好条件の求人に応募できる可能性が広がります。

具体的には、「dodaチャレンジ」(求人が幅広い)、「atGP」(定番エージェント)、「障害者雇用バンク」(20代・30代に強み)、「LITALICO仕事ナビ」(求人豊富な定番サービス)、「マイナビパートナーズ紹介」(定着支援も提供)などの転職エージェントがあり、1人ひとりに合わせたサポートを提供しています。

フリーランス経験を活かして好条件の求人を狙う方法

たとえ短期間であってもフリーランスで培ったスキルや実績は、転職活動において大きなアピール材料になります。制作物や成果物をポートフォリオとして整理しておけば、Webデザイナーやエンジニアなど専門職の求人で高い評価を得やすくなります。

エージェントにフリーランスの経験を伝え、スキルに合った求人を提案してもらいましょう。

おすすめの障害者向け転職エージェント3選

代表的なサービスとして、大手パーソルグループが運営する「dodaチャレンジ」、障害者雇用支援の老舗「atGP(アットジーピー)」、非公開求人が豊富な「エージェント・サーナ」が挙げられます。いずれも登録・利用は完全無料なので、複数のエージェントに登録し、自分と相性の良いアドバイザーを見つけることをおすすめします。

まとめ|障害者がフリーランスで自分らしく働くために大切なこと

障害者がフリーランスとして働くことはけっして夢物語ではありません。体調に合わせた柔軟な働き方ができる一方で、収入の不安定さや自己管理の難しさという課題も伴います。

大切なのは、いきなり独立せず副業からスモールスタートすること、活用できる公的支援を最大限に利用すること、そして「自分には合わない」と感じたら転職エージェントを通じた就職に切り替える柔軟さを持つことです。自分にとって最適な働き方を見つけるために、今日から一歩を踏み出してみてください。