「精神疾患があると就職できないのでは……」と不安を抱えている方は少なくありません。たしかに精神疾患を持つ方の就職活動には特有のハードルがあり、簡単とは言い切れない現実があります。しかし厚生労働省の統計によれば、精神障害者の就職件数は年々過去最高を更新し続けており、「就職できない」という時代は確実に変わりつつあります。

本記事では、精神疾患がある方が就職を実現するために知っておきたい準備・制度・サポート機関の情報を網羅的に解説します。正しい知識を身につけ、自分に合った働き方を見つけるための第一歩にしてください。

Contents

精神疾患があると就職できないと言われる理由と実態

精神疾患を抱える方にとって「自分は就職できないのではないか」という不安は切実です。しかし、その不安の多くは誤解や情報不足から生まれています。まずは「就職できない」と言われる背景と、実際のデータを確認しましょう。

「精神疾患=不採用」という思い込みの正体

「精神疾患がある」と聞くだけで採用を敬遠する企業がある一方、それは必ずしも多数派ではありません。

企業側が不安を感じる主な原因は、精神疾患そのものではなく「何ができて何が難しいのか分からない」という情報不足にあります。症状や配慮事項が具体的に伝われば採用に前向きになる企業も増えています。

つまり「精神疾患=不採用」は事実ではなく、コミュニケーション不足が生み出す思い込みに過ぎないのです。

企業が採用時に懸念する「定着率」と「体調管理」の本音

企業が精神疾患のある求職者に対して最も懸念するのは「長く働き続けられるか」という点です。

障害者職業総合センターの調査によれば、精神障害者の1年後の職場定着率は約49.3%と、身体障害者(60.8%)や知的障害者(68.0%)に比べて低い傾向にあります(参照:独立行政法人 高齢・障害・求職者雇用支援機構「障害者の就業状況等に関する調査研究」2017年 https://www.nivr.jeed.go.jp/research/report/houkoku/houkoku137.html )。

企業は「採用してもすぐに辞めてしまうのでは」という不安を抱えており、これが選考のハードルにつながっています。

統計から見る:精神障害者の就職件数は年々増加している

一方で、明るいデータもあります。厚生労働省「令和5年度 ハローワークを通じた障害者の職業紹介状況」によると、精神障害者の就職件数は60,598件で対前年度比12.1%増となり、過去最高を更新しました(参照:厚生労働省「令和5年度障害者の職業紹介状況等」https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_40951.html )。

2018年に障害者雇用促進法が改正され精神障害者が雇用義務の対象に加わったこと、法定雇用率が段階的に引き上げられていること(2024年4月から2.5%、2026年7月から2.7%)が追い風となっています。「就職できない」のではなく、「就職のチャンスは年々広がっている」のが現実です。

就職活動を始める前に確認すべき「3つの準備」

精神疾患を抱えながらの就職活動は、焦ると症状を悪化させるリスクがあります。まずは以下の3つの準備が整っているかを確認しましょう。

焦りは禁物!主治医から「就労許可」は出ているか

就職活動を始める大前提として、主治医に「働いても大丈夫な状態か」を確認することが不可欠です。

症状が安定していない段階で無理に動き出すと、面接での失敗体験が自信を大きく損ないかねません。主治医から就労に関する意見をもらい、必要であれば勤務可能な時間帯や業務負荷の目安も確認しておきましょう。医師の「大丈夫」という言葉は、就職活動を進めるうえで大きな安心材料になります。

自己理解を深める:自分の病気と「できること・できないこと」の整理

就職活動の成否を大きく左右するのが「自己理解の深さ」です。

自分の精神疾患によって何が苦手で、逆にどのような環境なら力を発揮できるのかを言語化しましょう。たとえば「電話対応は苦手だが、データ入力や書類整理なら集中して取り組める」のように具体的に整理することが大切です。

この自己理解は、企業に配慮事項を伝える際にもそのまま活用でき、ミスマッチの防止にもつながります。

生活リズムの安定:毎日決まった時間に起きて活動できているか

企業が精神疾患のある方を採用する際に重視するのが「生活リズムが安定しているか」です。

毎朝決まった時間に起床し、日中に活動する生活を2〜3か月継続できていれば、就労に対する準備性が高いといえます。もしまだ生活リズムが不規則であれば、後述する就労移行支援事業所への通所から始めるのも有効な選択肢です。

まずは「毎日通う」という習慣を体に覚えさせることが、安定就労への近道です。

自分に合った働き方を選ぶ:一般枠と障害者雇用枠の違い

精神疾患のある方が就職する際、大きな分岐点となるのが「一般枠で働くか、障害者雇用枠で働くか」の選択です。それぞれの特徴を理解したうえで、自分に合った道を選びましょう。

一般枠(オープン)で働くメリット・デメリット

一般枠で障害を開示して応募する方法を「オープン就労」と呼びます。

求人数が障害者雇用枠より多いため選択肢が広がり、給与水準も比較的高い傾向にあります。ただし、障害者雇用枠と比べると企業側に法的な配慮義務が発生しにくく、通院や体調不良時の理解を得られるかは企業次第です。

障害特性が軽度で、通常の業務遂行に大きな支障がない方に向いています。

一般枠(クローズ)で病気を隠して働くリスクと注意点

障害を開示せずに一般枠で働く「クローズ就労」は、一見ハンディなく働ける点がメリットです。

しかし通院のための休みが取りにくい、体調悪化時に周囲に相談できないなど、精神的な負担は大きくなりがちです。無理を重ねた結果、短期離職につながるケースも少なくありません。

クローズ就労を選ぶ場合は、自分の症状が安定しており、職場にバレるリスクとストレスに耐えられるかを慎重に見極める必要があります。

障害者雇用枠を選ぶことで得られる「合理的配慮」とは

障害者雇用枠では、企業は障害者に対して「合理的配慮」を提供する義務があります。具体的には、通院のための勤務時間調整、業務量の配慮、静かな作業環境の確保、定期的な面談の実施などが該当します。

こうした配慮を受けることで、体調の波があっても働き続けやすくなります。法定雇用率の引き上げにより障害者雇用枠の求人自体も増加傾向にあるため、以前よりも選択肢は確実に広がっています。

どちらを選ぶべき?判断基準となるチェックリスト

どちらの枠で働くかを決めるには、次のポイントを自問してみてください。「週5日フルタイムで通勤できるか」「服薬や通院を仕事と両立できるか」「体調が悪い日に職場へ相談できる環境が必要か」「給与と働きやすさのどちらを優先するか」。

配慮が必要だと感じるなら障害者雇用枠、症状が安定しており高い給与を求めるなら一般枠が向いています。迷う場合は転職エージェントや就労移行支援の支援員に相談するのがおすすめです。

精神疾患を抱えながらの就職活動を成功させるステップ

準備が整ったら、いよいよ具体的な就職活動に進みます。精神疾患を抱える方が面接を突破するために、押さえておきたいポイントを解説します。

履歴書・職歴書の空白期間(ブランク)をどう説明するか

精神疾患による休職や療養で職歴に空白がある場合、正直にかつ前向きに伝えることが大切です。「体調を崩し療養していました。現在は主治医から就労可能と判断されています」と簡潔に述べたうえで、療養期間中に取り組んだこと(資格取得、就労移行支援への通所など)を添えると、前向きな姿勢が伝わります。

空白期間をごまかすよりも、回復に向けた努力を示す方が企業からの信頼を得やすくなります。

面接で必ず聞かれる「現在の体調」と「通院状況」への回答例

障害者雇用枠の面接では、体調と通院状況について高い確率で質問されます。回答のポイントは「現在の安定度」と「セルフケアの習慣」を具体的に伝えることです。

たとえば「月に1回の通院を継続しています。服薬により症状は安定しており、就労移行支援に週5日通所できています」のように、客観的な事実を交えて説明しましょう。

企業が知りたいのは「採用後も安定して出勤できるか」であり、それに答える回答を準備しておくことが重要です。

「長く働けること」を証明するための具体的なエピソード準備

企業にとって最大の不安は「すぐに辞めてしまわないか」です。この不安を払拭するには、安定した生活リズムや継続的な活動実績を示すエピソードが有効です。

就労移行支援への安定通所、ボランティア活動、アルバイト経験など「一定期間、休まず続けた経験」を具体的な数字(期間・日数)とあわせて伝えましょう。体調管理の工夫(ストレス発散法、睡眠の確保など)を語れると、さらに説得力が増します。

効率的に内定を得るなら「特化型転職エージェント」が不可欠な理由

公的なサポート機関に加えて、ぜひ活用していただきたいのが障害者雇用に特化した転職エージェントです。一般的な転職サイトでは見つからない情報やサポートを受けられます。

具体的には、「dodaチャレンジ(求人が幅広い)」「atGP(定番エージェント)」「障害者雇用バンク(20代・30代に強み)」「LITALICO仕事ナビ(就労移行支援も検索可能)」「マイナビパートナーズ紹介(インターンシップの情報も提供)」などの転職エージェントがあり、1人ひとりに合わせたサポートを提供しています。

ネットには出ない「精神疾患に理解のある企業」の求人を持っている

障害者雇用に特化した転職エージェントは、一般の求人サイトには掲載されない非公開求人を多数保有しています。中でも「エージェント・サーナ」は、非公開求人を多数保有しています。とくに精神疾患への理解が深く、配慮実績のある企業の求人は、エージェント経由でなければ出会えないケースが珍しくありません。

自力で一社ずつ企業を調べて応募するよりも、はるかに効率的にマッチ度の高い求人にアクセスすることが可能です。

アドバイザーが企業との間に入って「配慮事項」を交渉してくれる

精神疾患のある方にとって、企業に自分の配慮事項を伝えるのは心理的なハードルが高い作業です。特化型エージェントでは、専任のキャリアアドバイザーが求職者と企業の間に立ち、必要な配慮内容(通院日の確保、業務量の調整、休憩の取り方など)を代わりに交渉してくれます。

自分では言いにくいことをプロが仲介してくれるため、入社後のミスマッチを大幅に減らすことができます。

模擬面接や書類添削など、メンタル面に配慮した伴走支援

特化型エージェントのサポートは求人紹介だけにとどまりません。履歴書や職務経歴書の添削、ブランク期間の説明方法のアドバイス、模擬面接の実施など、選考対策を手厚く行ってくれます。

精神疾患を抱える求職者の心理面に配慮しながら進めてくれるため、一人で準備するよりも安心感が格段に違います。面接に対する不安が強い方こそ、エージェントの力を借りる価値があります。

入社後のアフターフォローがあるから早期離職を防げる

多くの特化型エージェントでは、入社後も定期的にフォローアップの連絡を行い、職場で困りごとがないかを確認してくれます。「上司に相談しにくい悩み」や「配慮が実際には行われていない」といった問題も、エージェントを通じて企業側に伝えることができます。

就職がゴールではなく、その後の定着まで見据えたサポートが受けられることは、精神疾患のある方にとって大きな安心材料です。

転職エージェントを最大限に活用するコツ

せっかくエージェントに登録しても、使い方次第で成果は大きく変わります。効果を最大化するためのポイントを押さえましょう。

自分の現状を正直に伝えることがミスマッチ防止の第一歩

エージェントに登録する際は、自分の症状や服薬状況、苦手な業務、希望する配慮事項を包み隠さず伝えましょう。

「良く見せたい」と情報を伏せてしまうと、結果的にミスマッチの求人を紹介されてしまいます。正直に伝えることで、アドバイザーはあなたの特性に合った企業を的確に選んでくれます。弱みを開示することは恥ずかしいことではなく、よりよいマッチングのための最善策です。

相性の良い担当者を見極めるためのポイント

エージェントの質は担当者によって大きく異なります。精神疾患に対する理解があるか、こちらのペースを尊重してくれるか、レスポンスは丁寧かといった点を初回面談で確認しましょう。

もし担当者との相性が合わないと感じた場合は、遠慮せず担当変更を申し出て構いません。就職活動は長期戦になることもあるため、信頼して相談できる担当者を見つけることが非常に重要です。

複数のエージェントに登録して比較検討する重要性

転職エージェントはそれぞれ保有する求人や得意とする業界が異なります。1社に絞らず、2〜3社のエージェントに同時登録することで、より多くの求人にアクセスでき、サービスの質を比較することも可能になります。複数のアドバイザーから異なる視点でアドバイスを受けることで、自分に合った働き方が明確になることもあります。

登録は無料なので、まずは気になるエージェントに気軽に相談してみましょう。以下の記事では、障害者特化型の転職エージェントについてサービスごとに解説しています。

dodaチャレンジatGP障害者雇用バンクランスタッドチャレンジドLITALICO仕事ナビ

まとめ:精神疾患があっても自分らしいキャリアは築ける

精神疾患があるからといって就職できないということはありません。厚生労働省の統計データが示すとおり、精神障害者の就職件数は年々増加し、法改正による追い風も続いています。

大切なのは、焦らずに準備を整え、自分に合った働き方と支援制度を上手に活用することです。障害者雇用に特化した転職エージェントを積極的に利用し、一人で抱え込まないことが就職成功のカギになります。まずは小さな一歩から始めてみてください。あなたらしいキャリアは、必ず見つかります。