「精神障害があると就職できないのでは」「何社応募しても書類で落とされる」——そんな不安を抱えていませんか。たしかに精神障害者の就職活動には厳しい現実があります。しかし近年、法定雇用率の引き上げや企業の意識変化により、精神障害者の採用数は右肩上がりで伸びています。
本記事では、精神障害者が採用されないといわれる背景を最新データで検証したうえで、不採用を乗り越えて内定を勝ち取るための具体的な対策を網羅的に解説します。
Contents
精神障害者の採用をめぐる最新データ
まずは公的な統計をもとに、精神障害者の雇用がいまどのような状況にあるのかを確認しましょう。
障害種別ごとの雇用者数を比較する
厚生労働省の発表によると、2024年6月1日時点で民間企業に雇用されている障害者の総数は約67万7,000人です。そのうち精神障害者は約15万717人で、前年比15.7%の増加となりました。
身体障害者(約36万9,000人)や知的障害者(約15万7,000人)と比べると雇用数自体はまだ少ないものの、伸び率は全障害種別のなかで最大です。
精神障害者の雇用が拡大している4つの社会的背景
精神障害者の雇用が増えている背景には、主に次の4つがあります。
第一に、2018年の障害者雇用促進法改正で精神障害者が雇用義務の対象に加わったこと。第二に、ダイバーシティ経営の推進で障害を個性として評価する企業が増えたこと。第三に、少子高齢化による深刻な人手不足。第四に、就労移行支援事業所や障害者向け転職エージェントなど支援体制が充実してきたことが挙げられます。
法定雇用率の引き上げスケジュールと今後の見通し
民間企業に課される障害者の法定雇用率は段階的に引き上げられており、2024年4月に2.5%、2026年7月には2.7%へ上昇する予定です。
身体障害者の高齢化や人数の横ばい傾向もあり、企業が雇用率を達成するには精神障害者の採用を避けて通れない状況になりつつあります。
「精神障害者は採用されない」といわれる理由
採用数が増えているとはいえ、精神障害者の就職活動が厳しい現実は否定できません。その背景にある企業側・制度側の要因を整理します。
企業側に精神障害への受け入れ経験が少ない
精神障害者の雇用義務化は2018年からと歴史が浅く、受け入れ実績のない企業がまだ多い状況です。
前例がないために「どう接していいかわからない」という不安が先行し、採用を見送るケースがあります。実際に、障害者専門エージェントの求人に掲載されている企業でも、精神障害者の雇用経験がないところは珍しくありません。
「すぐ辞めるのでは」という偏ったイメージが根強い
「精神障害者は体調が安定しにくく定着しない」という思い込みが採用のハードルになっています。
ただし、障害者雇用枠で適切な配慮を受けた場合の1年後定着率は64.2%と、一般求人・障害非開示(30.8%)を大きく上回っており、環境次第で十分に長く働けることがデータで示されています。
障害が目に見えにくく配慮の方法がわかりづらい
身体障害と異なり、精神障害は外見から判断しづらいことが特徴です。そのため企業の担当者が「何をどこまで配慮すればよいのか」を把握できず、結果的に採用を敬遠してしまうことがあります。
たとえば車いすの方にはバリアフリー環境を整えるという明確な対応がありますが、精神障害の場合は「業務量の調整」「声かけの頻度」など目に見えない配慮が中心となるため、具体的なイメージが湧きにくいのです。
手帳の更新制度が企業の雇用リスクと捉えられている
精神障害者保健福祉手帳は2年ごとの更新制です。更新時に等級が変わったり非該当になったりすると、企業側は法定雇用率のカウントを失います。この制度上の不確実性が「精神障害者の雇用はリスクが高い」という認識につながっています。
法定雇用率のカウント制度で身体障害者が優先されやすい
重度身体障害者は1人の雇用で2カウント(ダブルカウント)される制度があります。企業が少ない採用人数で雇用率を満たそうとすると身体障害者を優先しやすく、結果として精神障害者の採用枠が狭まる構造になっています。
データで見る精神障害者の雇用の厳しい現実
採用されたとしても、精神障害者が直面する課題は少なくありません。
正社員比率が他の障害区分より大幅に低い
令和5年度の障害者雇用実態調査によると、精神障害者の正社員比率は32.7%にとどまります。身体障害者の約6割が正社員であるのと比較すると大きな開きがあります。短時間勤務を希望する方が多いことも一因ですが、雇用の安定性には依然として課題が残ります。
平均賃金が一般雇用の半分以下にとどまっている
同調査では、精神障害者の平均賃金は月額14万9,000円と報告されています。一般労働者の平均月収31万8,300円と比べると半分に届かず、身体障害者の23万5,000円にも大きく及びません。経済的な自立が難しい現状があります。
障害非開示で就職した場合の1年定着率は約3割
厚生労働省の調査では、一般求人に障害を開示せず就職した精神障害者の1年後定着率はわずか30.8%です。障害を伝えず働くと必要な配慮が得られないため、体調を崩しやすく早期離職に直結しています。
一方、障害者雇用枠で就職した場合の定着率は64.2%まで上がることから、障害をオープンにして適切な環境で働くことが長く続けるための重要な分岐点といえます。
書類選考で落とされるケースが多い実態
障害者雇用の就職活動では、書類選考の通過率が5〜10%程度ともいわれています。精神障害者は受け入れ実績のない企業から敬遠されやすく、面接にたどり着く前に不採用となるケースが少なくありません。
不採用が続くと自信を失いがちですが、通過率の低さは業界全体の構造的な問題でもあります。自分を責めすぎず、後述する転職エージェントの書類添削サービスなどを活用して改善を図りましょう。
採用されない原因は”自分”にもあるかもしれない──見直すべきポイント
企業側の課題だけでなく、求職者側の準備不足が不採用につながっている可能性もあります。
障害特性の自己理解が不十分なまま応募していないか
自分の障害がどのような場面で影響するのかを具体的に説明できないと、企業は採用後のイメージを持てません。まずは自身の特性を正確に棚卸しし、得意なこと・苦手なことを言語化することが出発点です。
職場で必要な配慮を具体的に説明できるか
「配慮してほしい」とだけ伝えても企業側は対応しきれません。「週1回の上司との短時間面談」「業務指示を口頭とメールの両方でもらいたい」など、具体的に伝えられると採用担当者の安心感が大きく高まります。
体調管理・セルフケアの方法を言語化できているか
企業が重視するのは「安定して働けるかどうか」です。通院の頻度や服薬の状況、ストレスを感じたときの対処法を自分の言葉で語れるようにしておくと、面接での評価が格段に変わります。
働く意欲や将来のキャリアビジョンを伝えられているか
「この会社でどのような仕事がしたいか」「将来どんなスキルを身につけたいか」を明確に話せることは、障害の有無に関わらず大切なポイントです。企業は前向きに長く働いてくれる人材を求めています。
精神障害者が内定率を高めるための実践テクニック
ここからは、選考の通過率を上げるための具体的な行動をご紹介します。
障害者雇用枠と一般枠、それぞれのメリット・デメリットを把握する
障害者雇用枠は配慮を受けやすく定着率が高い一方、求人数や給与水準に制限がある場合も。一般枠は選択肢が広がりますが、障害を開示しない場合の定着率は低くなります。自分の状態と優先事項に合わせた判断が必要です。
精神障害者保健福祉手帳を取得してから就活を始める
障害者雇用枠に応募するには手帳の所持が前提です。手帳があることで企業側の法定雇用率にカウントされるため、採用のメリットが明確になり選考に進みやすくなります。申請から発行まで約2か月かかるため、早めに準備を進めましょう。
応募書類の自己PR・配慮事項欄の書き方を磨く
履歴書や職務経歴書の配慮事項欄には、障害の概要・業務上必要な配慮・セルフケアの取り組みを簡潔に記載します。自己PRでは過去の経験やスキルに加え、障害と向き合いながら努力してきたエピソードを盛り込むと好印象につながります。
模擬面接を繰り返して受け答えに慣れておく
「障害についてどう説明するか」「配慮事項をどう伝えるか」は面接での頻出質問です。就労移行支援事業所や転職エージェントの模擬面接サービスを利用し、緊張する場面でも自分の言葉で話せるよう練習を重ねましょう。
自分に合った職種・働き方を見極める
精神障害者が多く就いている職種には、事務補助・データ入力・軽作業・コールセンターなどがあります。また、フルタイム勤務が難しい場合は短時間勤務やテレワーク可の求人を探すことも選択肢です。無理のない働き方を選ぶことが長期定着の鍵になります。
就労支援機関を活用して就職成功率を上げる
一人で就活を進めるより、専門機関のサポートを受けたほうが内定率は大きく向上します。
就労移行支援事業所でビジネススキルと自己管理力を身につける
就労移行支援事業所では、パソコンスキルやビジネスマナーの訓練に加え、自己理解を深めるプログラムや模擬就労を通じた実践練習が受けられます。
利用期間は原則2年以内で、費用は世帯収入に応じた自己負担(多くの方が無料)です。就職後の定着支援まで一貫してサポートしてもらえる点も大きなメリットです。
ハローワーク障害者窓口を利用して非公開求人にアクセスする
ハローワークの障害者専門窓口では、一般には公開されていない障害者雇用求人を紹介してもらえます。専門の相談員が障害特性に合った求人を一緒に探してくれるため、ミスマッチの少ない応募が可能です。また、応募書類の書き方指導や面接への同行といった支援を受けられる場合もあります。
利用はすべて無料なので、転職エージェントと併用して求人の選択肢を広げるのがおすすめです。
地域障害者職業センターで職業評価・リハビリを受ける
各都道府県に設置されている地域障害者職業センターでは、職業適性の評価や職業準備支援を受けることができます。自分にどのような仕事が向いているかを客観的に知りたい方にとって、有効な第一歩になります。
さらに、就職後にジョブコーチ(職場適応援助者)を派遣してもらえる制度もあり、職場での人間関係や業務の進め方に不安がある方には心強いサポートとなるでしょう。
転職エージェントを味方につけて採用を勝ち取る方法
就職・転職活動を効率的に進めるうえで、障害者専門の転職エージェントの利用は非常に有効な手段です。
障害者専門の転職エージェントを利用すべき3つの理由
第一に、精神障害者の受け入れ実績がある企業の求人を優先的に紹介してもらえること。第二に、応募書類の添削や面接対策など、障害特性を踏まえた個別サポートが受けられること。第三に、入社後の職場定着まで継続的にフォローしてくれるエージェントが多いことです。
書類選考の通過率はエージェント利用者のほうが約3倍高いともいわれています。
エージェント選びで失敗しないためのチェックポイント
エージェントを選ぶ際は、精神障害者の支援実績が豊富かどうか、求人の対応エリア(全国対応か首都圏限定か)、非公開求人の保有数、入社後の定着支援の有無などを比較しましょう。複数のエージェントに登録して相性の良い担当者を見つけるのも効果的です。
おすすめの障害者向け転職エージェント比較
代表的なサービスとしては、求人数が業界トップクラスで全国対応の「dodaチャレンジ」、精神障害の支援に力を入れている「atGP」、非公開求人が豊富な「エージェント・サーナ」、定着支援も行っている「マイナビパートナーズ紹介」などがあります。
いずれも無料で利用できるため、まずは登録して自分の市場価値や応募可能な求人を把握するところから始めてみてください。なお精神障害のある方向けの転職サービスについては、以下の記事が参考になります。
まとめ:「精神障害者は採用されない」を覆すために今日からできること
「精神障害者は採用されない」という言説は、データを見れば”完全な事実”ではありません。精神障害者の雇用数は毎年過去最高を更新しており、法定雇用率の引き上げを追い風に企業の採用意欲は高まっています。
ただし、不採用が続く背景には企業側の知識不足やカウント制度の偏りだけでなく、求職者自身の準備不足が影響しているケースもあります。障害特性の自己理解を深め、必要な配慮を具体的に伝えられるようにすること。そして就労移行支援事業所や転職エージェントといった専門家のサポートを積極的に活用すること。この2つを実行するだけで、就職活動の結果は大きく変わります。
一人で悩み続ける必要はありません。まずは転職エージェントへの無料登録や、最寄りの就労移行支援事業所への見学予約など、小さな一歩を今日踏み出してみてください。



