身体障害のある方が転職を考えるとき、「自分に合った仕事が見つかるだろうか」「どこに相談すればいいのか」と不安を感じることは少なくありません。しかし近年、障害者雇用は拡大を続けており、身体障害のある方が活躍できる職場は着実に増えています。

本記事では、身体障害の基礎知識から転職活動の進め方、支援機関や転職エージェントの活用法まで、転職成功に必要な情報をまとめて解説します。

Contents

身体障害とはどのような障害か

身体障害とは、身体機能に一定以上の障害が永続的に存在する状態のことです。転職活動を始める前に、自分の障害がどの種類・等級に当たるかを正しく理解しておくことが大切です。

身体障害に含まれる障害の分類

身体障害者福祉法では、身体障害を「肢体不自由」「視覚障害」「聴覚または平衡機能の障害」「音声・言語・そしゃく機能の障害」「内部障害(心臓・腎臓・呼吸器・膀胱・直腸・小腸・免疫・肝臓の機能障害)」の5つに分類しています。

種類によって日常生活や仕事での困りごとは大きく異なるため、自分の障害がどこに該当するかを把握しておきましょう。

参照:厚生労働省「身体障害者手帳

 

等級の仕組みと手帳の取得条件

身体障害者手帳の等級は1級(最重度)から7級まであり、手帳交付の対象は6級以上です。7級単独では交付されませんが、7級の障害が2つ以上重複する場合は6級として交付を受けられます。

等級の認定は厚生労働省の「身体障害者障害程度等級表」に基づき、都道府県知事が指定する医師の診断書をもとに行われます。

参照:厚生労働省「身体障害者障害程度等級表

等級によって受けられる支援はどう変わるか

手帳を取得すると医療費助成や税控除、交通機関の割引などが利用できます。等級が重いほど支援は手厚くなり、1級・2級の方は税制上の特別障害者控除の対象です。また障害者雇用枠ではダブルカウント(1人を2人分として算定)が適用され、企業の採用意欲が高まる傾向にあります。

身体障害のある方が職場で感じやすい悩みと対処法

障害の種類や程度に応じて、職場ではさまざまな困難が生じることがあります。転職先選びに活かすため、よくある悩みと対策を把握しておきましょう。

職場環境やバリアフリーに関する悩み

肢体不自由の方にとって、段差やエレベーターの有無は通勤・移動に直結する問題です。転職先を選ぶ際はバリアフリー状況を事前に確認し、可能であれば職場見学を申し込むことで、入社後のギャップを減らせます。

業務内容・業務量の調整に関する悩み

内部障害のある方は外見から障害が伝わりにくく、業務量の過多や通院への配慮不足が生じることがあります。入社時に配慮事項を書面にまとめて上司や人事担当者に提示し、具体的な業務調整について合意しておくことが大切です。

周囲とのコミュニケーションに関する悩み

聴覚障害や言語障害のある方は、電話対応や会議参加で困難を感じるケースが多いです。チャットツールの活用や議事録の共有など、自分に合ったコミュニケーション手段を整理し、合理的配慮として企業に伝えられるよう準備しておきましょう。

悩みを軽減するために実践できる工夫

自分のできること・できないことをまとめた「自己紹介シート」を作成し、配属先に共有する方法が有効です。配慮のお願いと併せて、自分がどのように貢献できるかも示すことで、職場の相互理解が深まります。

身体障害のある方が転職活動を始める前に準備すべきこと

障害のある方の転職では、一般的な準備に加え、障害特性の整理や支援者との連携が重要になります。着手前に取り組むべきポイントを確認しましょう。

自分の障害特性と配慮事項を整理する

「デスクワークは可能だが長時間の立ち仕事は困難」「月2回の通院で半休が必要」など、働くうえで必要な配慮を具体的に書き出しておきましょう。面接での説明がスムーズになるだけでなく、企業とのミスマッチを防ぐことにもつながります。

働き方の希望条件を明確にする

勤務時間や在宅勤務の可否、通勤手段への配慮など、障害特性に関わる条件もリストアップしておきましょう。「絶対に譲れない条件」と「あれば望ましい条件」を分けて整理すると、求人選びの判断軸が定まりやすくなります。

主治医や支援者に相談しておく

主治医に現在の体調で無理のない働き方や就業上の注意点を確認しておくと安心です。就労移行支援事業所に通所中の方は、支援員に面接対策や企業説明の方法についてサポートを依頼するのも有効です。

身体障害のある方の転職先の選び方

厚生労働省の「令和6年 障害者雇用状況の集計結果」によると、民間企業の障害者雇用数は67万7,461.5人と過去最高を更新し、うち身体障害者は36万8,949.0人です。企業の採用意欲が高まるなか、転職先選びのポイントを確認しましょう。

参照:厚生労働省「令和6年 障害者雇用状況の集計結果

一般枠と障がい者雇用枠の違いを知る

一般枠は障害の有無を問わない求人で、障がい者雇用枠は障害者手帳を持つ方を対象とした求人です。一般枠は選択肢が広い一方、障がい者雇用枠は配慮体制が整いやすいという特徴があります。自分の希望に応じて使い分けましょう。

障がい者雇用枠で働くメリット・デメリット

合理的配慮を受けやすく、障害を開示した状態で働けるため心理的負担が軽い点がメリットです。一方、一般枠と比べて職種や給与の選択肢がやや限定されることもあります。ただし近年は専門職やリモート対応の障がい者雇用求人も増えつつあります。

一般枠で働くメリット・デメリット

職種や業種の幅が広く、キャリアアップの機会が同等に得られるのがメリットです。しかし障害を非開示にすると配慮を得にくく、体調管理が自己責任になりやすい点に注意が必要です。

企業の障害者への配慮姿勢を見極める方法

企業ホームページのダイバーシティ情報や「もにす認定」の有無を確認しましょう。面接の場でバリアフリー環境や過去の障害者雇用の実績について質問するのも、企業姿勢を見極める有効な手段です。

在宅勤務やフレックスなど柔軟な働き方ができるか確認する

通勤負担の軽減や通院への対応のため、在宅勤務やフレックスタイム制の有無は重要なチェックポイントです。求人に明記がなくても、転職エージェント経由で企業に交渉してもらえるケースがあります。

身体障害のある方の転職活動で頼れる支援機関・サービス

厚生労働省の「令和5年度障害者雇用実態調査」では、企業が身体障害者採用で最も連携した機関はハローワークでした。さまざまな公的支援機関を積極的に活用しましょう。

参照:厚生労働省「令和5年度障害者雇用実態調査の結果を公表します

ハローワークの専門窓口を活用する

全国のハローワークには障害者専門の窓口があり、求人紹介から書類添削、面接対策まで無料でサポートを受けられます。障害者雇用に特化した合同面接会も定期的に開催されているため、積極的に参加してみましょう。

地域の職業センターに相談する

各都道府県に設置された「地域障害者職業センター」では、職業カウンセラーによる職業評価やジョブコーチ支援が受けられます。自分に合う仕事を客観的に見極めたい方や、入社後の定着に不安がある方に適したサービスです。

就業・生活支援センターでトータルサポートを受ける

全国330カ所以上に設置されている「障害者就業・生活支援センター」では、仕事と日常生活の両面から総合的に支援を受けられます。就職活動中から入社後まで一貫したフォローが受けられるのが特長です。

就労移行支援事業所でスキルを身につける

一般企業への就職を目指す障害のある方が、最長2年間にわたりパソコンスキルやビジネスマナーなどを学べる福祉サービスです。利用料は多くの方が無料で、転職に向けた実践的な準備を着実に進められます。

身体障害のある方の転職に転職エージェントをおすすめする理由

公的機関に加えて民間の転職エージェントを併用すると、転職活動の選択肢と質を大きく高められます。

転職エージェントは登録から入社まで無料で利用でき、求職者側に費用負担が発生しない点も大きな魅力です。特に障害者雇用に特化したエージェントは、企業の受け入れ体制や職場環境について詳しい情報を持っているため、ミスマッチのない転職を実現しやすくなります。

ハローワークなどの公的支援機関とうまく役割分担しながら活用するのがポイントです。

非公開求人や障がい者雇用に特化した求人を紹介してもらえる

転職エージェントは一般公開されていない非公開求人を多数保有しています。障害者雇用に積極的な大手企業の求人や、配慮体制が充実した優良企業の情報を、エージェント経由でしか入手できないケースも少なくありません。

求人票には載らない社内の雰囲気や実際の配慮事例といったリアルな情報を教えてもらえることもあり、ハローワークや求人サイトだけでは出会えない選択肢にアクセスできるのが、エージェントを利用する最大の強みといえます。

書類添削・面接対策など選考を手厚くサポートしてもらえる

障害内容や必要な配慮の記載方法から面接での受け答えまで、障害者雇用に精通したキャリアアドバイザーがマンツーマンで支援してくれます。特に「障害をどこまで開示するか」「配慮事項をどう伝えればポジティブな印象を与えられるか」といった悩みに対し、豊富な支援経験に基づく具体的なアドバイスがもらえる点は心強いです。

プロのサポートにより選考通過率の向上が期待できます。

企業との条件交渉や入社後のフォローまで任せられる

配慮事項や勤務条件の交渉をエージェントに代行してもらえるため、直接言いにくい要望も適切に伝えることができます。たとえば「通院日は在宅勤務にしたい」「車椅子対応の座席配置を希望する」といった細かい条件も、エージェントが企業の人事担当者と直接やり取りして調整してくれます。

入社後の定着を支えるフォロー体制が整ったエージェントも多く、長期的な安心につながります。

転職エージェントを選ぶときに確認したいポイント

障害者雇用の支援実績が豊富で、身体障害を含む幅広い障害種別に対応しているかを確認しましょう。アドバイザーの専門知識や取扱求人数も重要な判断材料です。初回面談で自分の障害特性や希望条件をしっかりヒアリングしてくれるか、レスポンスの速さや提案の質はどうかなど、実際に登録してみて相性を確かめることも大切です。

複数のエージェントに登録して比較検討するのがおすすめです。

身体障害のある方が転職活動で押さえておきたい注意点

転職を成功に導くために、障害の伝え方やスケジュール管理についても意識しておきましょう。

障害についての伝え方とタイミング

障がい者雇用枠では応募段階から障害を開示しますが、一般枠では伝えるかどうかを自分で選べます。開示する場合は「できること」と「配慮が必要なこと」をセットで伝えましょう。障害を通じて培った粘り強さや工夫力もアピール材料になります。

無理のないスケジュールで進める

転職活動は一般的に3〜6カ月かかります。通院や体調の波を考慮して余裕あるスケジュールを組み、焦りによる条件の妥協を避けましょう。転職エージェントや支援機関を活用しながら、自分のペースで着実に進めることが大切です。

まとめ|身体障害のある方が自分に合った転職先を見つけるために

身体障害のある方が転職を成功させるには、障害特性の整理・雇用枠の理解・企業研究を丁寧に行うことが不可欠です。ハローワークや職業センターなどの公的支援と、障害者雇用に特化した転職エージェントを上手に組み合わせることで、選択肢の幅と選考通過率を大きく高められます。

法定雇用率の引き上げで障害者採用に前向きな企業は増えています。支援制度やサービスを積極的に活用し、自分らしく働ける職場を見つけてください。