統合失調症と診断されながら働いている方の中には、「会社にばれるのではないか」と不安を抱えている方も少なくありません。障害を職場に伝えず働く「クローズ就労」には法律上の問題はないものの、体調管理や通院のしづらさなど多くのリスクが伴います。

本記事では、統合失調症が会社にばれる主なきっかけや、隠して働くデメリット、オープンにするメリット、そして障害者雇用や転職エージェントの活用法まで、安心して働くための情報を幅広く解説します。

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統合失調症を会社に伝えずに働くことは法律上問題ないのか

「統合失調症を会社に伝えなければならないのか」と不安に感じる方は多いでしょう。結論から言えば、障害を隠して就職すること自体に法律上の問題はありません。ここでは、告知義務や実態について解説します。

障害の告知義務はなく、非公開での就労は違法ではない

障害者雇用促進法やその他の労働法において、労働者が自分の障害を会社に申告する義務は定められていません。厚生労働省の「プライバシーに配慮した障害者の把握・確認ガイドライン」でも、企業が障害者手帳の所持を確認する際は本人の同意が必要であり、申告を拒否したことを理由に不利益な扱いをしてはならないとされています。

つまり、統合失調症を職場に伝えずに働くことは法的に問題のない選択です。

参照:厚生労働省「プライバシーに配慮した障害者の把握・確認ガイドライン

採用時や入社後に精神疾患の有無を問われるケースは少ない

採用面接で精神疾患について直接聞かれることは一般的にはありません。入社後の健康診断においても、精神障害者保健福祉手帳の有無が確認されることは通常ありません。

ただし、面接で病歴を聞かれた場合は虚偽の申告を避けたほうが無難です。後から事実と異なることが判明した場合、信頼関係に影響する可能性があるためです。

障害を非公開にして働いている人はどのくらいいるのか

2017年に行われた調査では、、「一般求人に障害を非開示にして就職した者12.0%」というデータがあります。一般求人のほうが求人数も職種も豊富であるため、クローズ就労を選ぶ方は一定数存在しているのが現状です。

参照:独立行政法人 高齢・障害・求職者雇用支援機構「障害者の就業状況等に関する調査研究」(2017年)

統合失調症が会社にばれる主なきっかけ

法的には問題がなくても、日常の業務のなかで障害が知られてしまうケースは存在します。ここでは、統合失調症が会社にばれる代表的なきっかけを紹介します。

通院や服薬のスケジュールから気づかれる

統合失調症の治療では、定期的な通院と継続的な服薬が欠かせません。平日の日中に通院のための中抜けや早退が続いたり、昼休みに人目を気にしながら服薬している姿を見られたりすることで、周囲に疑問を持たれるケースがあります。

体調の波による欠勤・早退が続く

統合失調症は、ストレスや環境の変化によって症状が悪化しやすい疾患です。急な欠勤や早退が増えると、上司や同僚から体調面の心配をされ、詳しい事情を尋ねられる場面が出てくる可能性があります。

年末調整で障害者控除の申告から発覚する

障害者手帳を持っている場合、所得税の障害者控除を受けることができます。

しかし、会社で年末調整を行う際にこの控除を申告すると、人事や総務担当者に障害者手帳の所持が知られてしまいます。控除を受けつつ職場に知られたくない場合は、自分で確定申告を行うという方法もあります。

社会保険や傷病手当金の手続きで判明する

症状が悪化して休職する場合、傷病手当金の申請には医師の診断書が必要です。会社を通じて手続きを行うことが多いため、その過程で疾患名が知られることがあります。

また、自立支援医療の受給者証を使って医療費を抑えている場合も、手続きの過程で間接的に情報が伝わることがあります。

同僚や知人からの情報で知られる

職場と私生活の人間関係が重なっている場合、共通の知人を通じて障害のことが伝わるケースもあります。SNSでの発信がきっかけとなることもあるため、情報管理には注意が必要です。

統合失調症を隠して働くデメリットとリスク

障害を非公開にして働くクローズ就労には、いくつかの大きなデメリットがあります。特に統合失調症の場合、継続的な治療とストレス管理が重要であるため、以下のリスクを十分に理解しておくことが大切です。

業務量や勤務時間の配慮を受けられない

障害を伝えていない以上、合理的配慮を求めることはできません。業務の負荷が高くても、残業が多くても、自分だけ特別な対応を受けることは難しくなります。こうした環境が症状の悪化につながるリスクがあります。

症状悪化時に周囲の理解が得られにくい

クローズ就労の場合、もし症状が悪化しても、その背景を周囲が知らないため適切なサポートを受けることが困難です。パフォーマンスの低下やコミュニケーションの変化に対して、理解よりも厳しい評価がなされてしまう恐れがあります。

通院のための休みを取りづらくなる

定期通院の必要性を説明できないため、毎回何かしらの理由をつけて休みを取る必要があります。頻繁な休暇取得が続くと、業務への姿勢を疑われたり、人事評価に影響したりする可能性があります。

就労支援機関との連携が難しくなる

オープン就労であれば、就労移行支援事業所や障害者就業・生活支援センターなどの外部機関が職場との間に入り、環境調整を行ってくれます。しかしクローズ就労の場合、こうした支援者と職場が連携することは困難です。

常に「ばれるかもしれない」という精神的負担を抱える

障害を隠し続けること自体が、大きなストレス要因となります。「いつ知られるか」「知られたらどうなるか」という不安を常に抱えることは、統合失調症の症状管理にとってマイナスに働く可能性があります。

統合失調症を会社にオープンにして働くメリット

一方、障害を開示して働くオープン就労には、安定して長く働くためのさまざまなメリットがあります。

合理的配慮を受けて無理なく働ける

障害者雇用促進法に基づき、事業主は障害のある労働者に対して合理的配慮を提供する義務があります。具体的には、業務量の調整、静かな作業環境の確保、休憩時間の柔軟な設定などが挙げられます。

こうした配慮があることで、無理なく自分のペースで働き続けることが可能になります。

通院スケジュールを調整しやすくなる

障害をオープンにしていれば、通院日の確保について上司に相談しやすくなります。勤務時間のシフトや半日休暇の取得など、治療と仕事を両立するための調整がスムーズに進みます。

体調悪化時に職場のサポートを得やすい

事前に障害について共有しておくことで、症状が悪化した際に周囲が適切に対応できます。早めの休養を促してもらえたり、業務を一時的に分担してもらえたりすることで、重症化を防ぎやすくなります。

障害者控除など税制上の優遇を活用できる

オープンにしていれば、年末調整で障害者控除を申告しても問題になることはありません。所得税・住民税の負担を正当に軽減でき、経済面でのメリットを十分に活かすことができます。

障害を開示するかどうかを判断するためのポイント

オープンとクローズのどちらを選ぶかは、個人の状況によって異なります。以下のポイントを参考に、ご自身にとって最適な選択を検討してみてください。

自分の症状の安定度と必要な配慮を整理する

まず、現在の症状がどの程度安定しているか、日常の業務にどのような配慮が必要かを整理しましょう。症状が安定しており特別な配慮がなくても働ける場合はクローズ就労も選択肢に入りますが、定期的な配慮が必要であればオープン就労のほうが安全です。

職場の障害者雇用実績や受け入れ体制を確認する

応募先の企業が障害者雇用に積極的かどうかも重要な判断材料です。障害者雇用の実績がある企業であれば、受け入れ体制が整っている可能性が高く、安心して働ける環境が期待できます。企業の採用ページや口コミサイトなどで情報を集めましょう。

主治医や支援機関に相談して客観的な意見をもらう

一人で判断するのが難しい場合は、主治医やハローワークの専門相談員、就労移行支援事業所のスタッフなどに相談することをおすすめします。自分では気づきにくいリスクや、適切な働き方のアドバイスをもらえるでしょう。

統合失調症のある方が安心して働くには障害者雇用がおすすめ

クローズ就労の職場定着率の低さを踏まえると、統合失調症のある方には障害者雇用枠での就労を検討することをおすすめします。

障害者雇用枠なら配慮を前提とした環境が整っている

障害者雇用枠で採用される場合、企業はあらかじめ障害の特性を理解したうえで、配慮のある職場環境を用意しています。

独立行政法人 障害者職業総合センターの調査(2017年)によると、障害者求人で就職した場合の1年後の職場定着率は70.4%であるのに対し、一般求人で障害を非公開にして就職した場合は30.8%にとどまっています。この差は、職場の配慮や支援体制の有無が定着率に大きく影響していることを示しています。

参照:独立行政法人 高齢・障害・求職者雇用支援機構「障害者の就業状況等に関する調査研究」(2017年)

障害者雇用の求人数は年々増加している

民間企業の障害者法定雇用率は段階的に引き上げられており、2024年4月からは2.5%、2026年7月からは2.7%に引き上げ予定です。これに伴い、障害者雇用の求人数や雇用者数も過去最高を更新しています。

厚生労働省の「令和6年 障害者雇用状況の集計結果」では、雇用障害者数は67万7,461.5人と過去最高を記録しました。以前に比べて選べる求人の幅も広がってきています。

参照:厚生労働省「障害者の法定雇用率引上げと支援策の強化について

転職エージェントを活用して自分に合った職場を見つけよう

障害者雇用での就職・転職を考えるなら、障害者向けの転職エージェントの活用が効果的です。一般的な求人サイトでは見つけにくい求人にアクセスでき、専門のサポートを受けることができます。

障害者向け転職エージェントを利用するメリット

障害者向け転職エージェントには、障害者雇用に特化したアドバイザーが在籍しています。統合失調症をはじめとする精神障害への理解が深く、症状に合った求人を紹介してもらえます。履歴書の書き方や面接での障害の伝え方など、一人では準備しにくいポイントについても具体的にサポートを受けられます。

非公開求人や職場定着サポートが受けられる

転職エージェント経由でしか応募できない非公開求人が存在します。大手企業や条件の良い求人が含まれていることも多く、選択肢が大きく広がります。また、入社後のフォローアップや定期面談を通じて、職場への定着を支援してくれるエージェントもあります。長く安定して働くためには、こうした入社後の支援体制も重要です。

おすすめの障害者向け転職エージェント3選

障害者向け転職エージェントの中でも、特に精神障害の方に利用されているサービスを3つ紹介します。

atGP(アットジーピー):業界最大級の障害者向け転職サービスです。求人数が豊富で、精神障害のある方向けのサポートにも力を入れています。オンラインでの面談にも対応しており、通院との両立がしやすい点も特徴です。

dodaチャレンジ:パーソルグループが運営する障害者専門の転職支援サービスです。大手企業の求人を多く取り扱っており、キャリアアドバイザーが入社後の定着まで継続的にフォローしてくれます。

DIエージェント:障害の種別や特性に合わせた丁寧なマッチングが強みです。在宅勤務や時短勤務の求人も取り扱っており、体調に合わせた柔軟な働き方を希望する方に向いています。

まとめ|統合失調症が会社にばれる不安を減らし、自分らしく働くために

統合失調症を会社に伝えずに働くことは法律上問題ありませんが、通院や体調の波、年末調整などのきっかけで知られる可能性はゼロではありません。また、クローズ就労では配慮が受けられず、職場定着率が約30%にとどまるというデータもあります。

安定して長く働くためには、障害者雇用枠の活用やオープン就労を視野に入れることが大切です。まずは主治医や支援機関に相談し、自分の症状や必要な配慮を整理することから始めましょう。そのうえで、障害者向け転職エージェントのサポートを受ければ、自分に合った職場を見つけやすくなります。

「ばれるかもしれない」という不安を抱え続けるのではなく、安心して自分らしく働ける環境を選ぶこと。それが、統合失調症とともに長く健やかに働き続けるための第一歩です。