精神障害があると「転職は難しいのでは」と不安を感じる方は少なくありません。しかし法定雇用率の段階的な引き上げにより、精神障害者を受け入れる企業は着実に増えています。大切なのは自分の特性を理解し、無理のない働き方を選ぶことです。

本記事では最新の雇用データをもとに、転職を成功させるための具体的なステップやエージェントの活用法、さらには入社後のセルフケアまでを網羅的に解説します。

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精神障害を持つ方の転職は可能?現状と成功のポイント

精神障害があっても転職は十分に可能です。企業側の受け入れ体制は年々整備されており、適切な準備と支援を活用すれば自分に合った職場を見つけられます。ここではまず、最新の雇用データと転職成功のために押さえておきたいポイントを確認しましょう。

精神障害者の雇用状況と近年のトレンド

厚生労働省「令和6年 障害者雇用状況の集計結果」によると、民間企業で雇用されている精神障害者は約15万717人で、前年から15.7%増加しました。障害種別の中でも精神障害者の伸び率が最も大きく、企業の採用意欲が年々高まっていることがわかります。

背景には2024年4月に法定雇用率が2.3%から2.5%へ引き上げられたことがあり、さらに2026年7月には2.7%への引き上げも予定されています。制度面の後押しは今後も続くため、精神障害のある方にとって転職の追い風が吹いている状況です。

参照:厚生労働省「令和6年 障害者雇用状況の集計結果

自分に合った働き方を見つけるための「3つの軸」

転職成功の鍵は「職種・業務内容」「勤務形態(フルタイムか時短か)」「職場環境(人間関係や配慮体制)」の3つの軸で、自分の希望と限界を整理することです。

たとえば対人ストレスに弱い方はバックオフィス業務やデータ入力を中心に、体調に波がある方は週3〜4日勤務から探すといったように、軸が明確になるほど求人選びの精度が上がります。

自分だけで整理が難しければ、就労移行支援事業所やキャリアアドバイザーに相談して客観的な視点を取り入れましょう。

転職活動を始める前に確認すべき「主治医の診断」

活動を始める前に必ず主治医へ相談してください。症状が安定していない段階で無理に動くと、かえって体調を崩すリスクがあります。「就労可能」の判断を得たうえで動き始めるのが鉄則です。また、転職先で必要になる配慮事項を医師と一緒に整理しておくと、後述するナビゲーションブック作成にも活かせます。

主治医から「もう少し休養が必要」と言われた場合は、リワークプログラムや就労移行支援を利用して段階的に準備を進めましょう。

後悔しないための「オープン就労」と「クローズ就労」の選び方

障害を企業に開示して障害者雇用枠で働く「オープン就労」か、障害を伝えずに一般枠で働く「クローズ就労」かは、転職活動における最大の分岐点です。それぞれの特徴を理解し、自分の状況に合った道を選びましょう。

メリットとデメリットを徹底比較

オープン就労の最大のメリットは、職場から合理的配慮を受けやすい点です。通院のための時間調整や業務量のコントロールなど、症状に合わせた働き方が実現しやすくなります。一方で障害者雇用枠は一般枠と比べて給与水準が低い傾向があり、キャリアアップの選択肢が限られるケースもあります。

クローズ就労は給与や昇進面で有利なことが多い反面、配慮を得られないため心身への負荷が大きくなるリスクを伴います。

障害を公表する「オープン就労」で得られる配慮

オープン就労では通院日の午前休や業務内容の変更など、入社前に具体的な配慮を取り決められるため、入社後のミスマッチを防ぎやすくなります。

障害者雇用に実績のある企業では産業医や人事担当者との定期面談が制度化されていることも多く、困りごとを早期に解消できる体制が整っています。長く安定して働きたい方にとっては大きな安心材料です。

一般枠で働く「クローズ就労」のリスクと対策

クローズ就労では職場に障害を伝えないため、業務量の増加や人間関係のストレスを一人で抱え込みがちです。体調が悪化しても「言い出せない」状況に追い込まれる可能性があることは理解しておきましょう。

対策としてはかかりつけ医に加え、地域の障害者就業・生活支援センターや民間のカウンセリングサービスなど、社外に複数の相談先を確保しておくことが重要です。

どちらを選ぶべきか迷った時の判断基準

判断のポイントは「配慮がない環境でも業務を遂行できるかどうか」です。服薬管理だけで日常業務をこなせるならクローズ就労も選択肢になりますが、定期通院や業務量の調整が不可欠な方はオープン就労のほうが長期的に安定しやすいでしょう。

迷った場合は障害者雇用に精通した転職エージェントへ相談すると、過去の支援事例をもとに客観的なアドバイスをもらえます。

精神障害の方が転職活動をスムーズに進めるステップ

ここからは実際の転職活動の進め方を見ていきます。無理なく、かつ効率的に動くための4つのステップを紹介します。

自己分析で「自分の取扱説明書」を作成する

障害特性・得意な作業・苦手な場面・体調が崩れやすい条件などを紙に書き出し、「自分の取扱説明書」としてまとめましょう。診断名だけでなく「午後になると集中力が落ちやすい」「マルチタスクが苦手」「急な予定変更に弱い」のように具体的に言語化することが大切です。

この資料は履歴書作成や面接準備にも直接活用できるため、転職活動の土台となります。

ストレス要因を特定し、避けるべき環境を明確にする

過去の職場でつらかった経験を振り返り、何が原因で体調を崩したのかを分析しましょう。「電話が鳴り続ける環境」「成果主義で常にプレッシャーがある」「残業が月40時間を超えていた」など、具体的なストレス要因をリストアップします。

避けるべき環境が明確になれば、求人選びの精度が格段に上がり入社後のミスマッチを未然に防げます。

無理のない勤務形態(時短・週3日〜など)を検討する

いきなりフルタイムで働き始めると、負荷が大きくなりすぎて早期離職につながりかねません。厚生労働省「令和5年度障害者雇用実態調査」によると、雇用されている精神障害者のうち約4割が週30時間未満の勤務形態で働いています。

まずは時短勤務や週3〜4日でスタートし、体調を見ながら徐々に勤務時間を延ばすのが長く働き続けるコツです。

参照:厚生労働省「令和5年度障害者雇用実態調査結果報告書

履歴書・職歴証明書で「ブランク」をどう説明するか

療養やリハビリによるブランクは正直に伝えて問題ありません。大切なのは空白期間に何をしていたかを前向きに説明することです。「治療に専念し体調を安定させた」「就労移行支援事業所で実務スキルを身につけた」「現在は主治医から就労可能の診断を受けている」など、回復のプロセスと今の状態を簡潔にまとめると、採用担当者に安心感を与えられます。

選考を突破するための「合理的配慮」の伝え方

障害者雇用枠での選考では、企業に「合理的配慮」を求めることができます。ただし伝え方を間違えると企業側に不安を与えてしまうことも。選考で好印象を残す伝え方のポイントを解説します。

企業が知りたいのは「何ができないか」ではなく「どうすればできるか」

面接で配慮を伝える際に「○○ができません」とだけ言うと、企業は採用後の姿をイメージしにくくなります。「○○は苦手ですが、△△の方法なら対応できます」のように、代替手段やサポートがあれば業務を遂行できるという伝え方を意識しましょう。

企業が本当に知りたいのは、一緒に働くための具体的な情報です。

体調の変化サインと、その際の対処法をセットで伝える

「体調が悪くなったらどうなるのか」は企業が最も気にするポイントです。「睡眠の質が下がると翌日の集中力に影響が出るため、そのサインが出たら上司に報告し業務量を調整させていただきたい」のように、不調のサインと具体的な対処法をセットで伝えると、企業側も安心して受け入れの準備を進められます。

ナビゲーションブック(自分の特性をまとめた資料)の活用術

ナビゲーションブックとは、自分の障害特性や得意・不得意、必要な配慮事項などをA4用紙1〜2枚にまとめた自己紹介資料です。面接時に提出すると、口頭だけでは伝えきれない情報を正確に共有できます。

「障害の概要」「業務上の得意・不得意」「配慮してほしいこと」「自分でできる対処法」の4項目を軸に作成すると、企業担当者にとってもわかりやすい内容に仕上がります。

精神障害に強い転職エージェントを利用すべき理由

精神障害のある方の転職では、一人で活動を進めるよりも障害者雇用に特化した転職エージェントを利用するほうが効率的かつ安心です。具体的には、「dodaチャレンジ(求人が幅広い)」「atGP(定番エージェント)」「障害者雇用バンク(20代・30代に強み)」「LITALICO仕事ナビ(就労移行支援も検索可能)」「マイナビパートナーズ紹介(インターンシップの情報も提供)」などの転職エージェントがあり、1人ひとりに合わせたサポートを提供しています。

ここではエージェント活用のメリットを3つの観点から紹介します。

非公開求人の中に「精神障害への理解がある企業」が眠っている

転職エージェントは、一般の求人サイトには掲載されない非公開求人を多数保有しています。なかには精神障害者の受け入れ実績が豊富な企業や、合理的配慮の体制がしっかり整った求人も含まれています。とくに「エージェント・サーナ」は非公開求人を多数保有しているエージェントの代表です。

自力の情報収集では出会えない好条件の求人にアクセスできるのは、エージェントを利用する大きな利点です。

キャリアアドバイザーが企業との「調整役」になってくれる

エージェントのキャリアアドバイザーは、求職者と企業の間に立って配慮事項の伝達や勤務条件の調整を代行してくれます。

「自分から直接は言いにくい」と感じる配慮の要望も、障害者雇用のプロが適切な言葉に変換して企業に伝えてくれるため、交渉のストレスを大幅に軽減できます。

面接同行や条件交渉など、メンタル面の負担を軽減できる

エージェントによっては面接への同行や入社条件の交渉まで対応してくれるサービスもあります。選考プロセス全体を通じて伴走してもらえるため、精神的な負担が大きくなりがちな転職活動を安心して進められます。

入社後のフォロー体制を持つエージェントを選べば、職場への定着まで継続的にサポートしてもらえるのも心強いポイントです。

障害のある方向けの転職サービスについては、以下の記事が参考になります。

転職後に「長く働き続ける」ためのセルフケア術

転職はゴールではなくスタートです。新しい職場で安定して働き続けるには、日頃からのセルフケアが欠かせません。入社後に意識したい3つのポイントを紹介します。

入社直後の「頑張りすぎ」を防ぐペース配分

新しい環境では「認めてもらいたい」という気持ちからつい無理をしがちです。しかし入社直後に飛ばしすぎると反動で体調を崩し、早期離職につながるリスクがあります。

最初の3か月は「70%の力で働く」という意識を持ち、業務量や残業時間を自分からコントロールすることを心がけましょう。

職場の相談窓口や産業医を事前に確認しておく

入社したら早い段階で社内の相談窓口や産業医の存在を確認しておきましょう。体調に変化を感じた時にすぐ相談できるルートを知っているだけで、心理的な安心感が大きく違います。

上司との1on1ミーティングがあれば、定期的に体調や業務量について率直に話す習慣をつけるのも効果的です。

オンとオフを切り替える自分なりのリフレッシュ法

仕事のストレスを翌日に持ち越さないためには、自分に合ったリフレッシュ法を確立しておくことが重要です。

散歩や入浴、趣味の時間など心身をリセットできるルーティンを持ちましょう。なかでも睡眠は体調管理の土台です。就寝時間を一定に保ち、十分な睡眠時間を確保することを最優先にしてください。

よくある質問(Q&A)

離職期間が長くても正社員になれますか?

離職期間の長さだけで不採用になるとは限りません。障害者雇用枠ではブランクの理由が療養やリハビリであることに企業側も一定の理解を持っています。重要なのは現在の体調が安定していることと働く意欲があることをしっかり伝えることです。

就労移行支援を利用した実績や、生活リズムが整っている事実を示せると企業の安心材料になります。

障害者手帳を持っていなくてもエージェントは利用できますか?

多くの障害者雇用専門エージェントでは、障害者手帳の所持を求人紹介の条件としています。ただし手帳の申請中でも相談を受け付けてくれるエージェントもあるため、まずは問い合わせてみましょう。

手帳をまだ取得していない場合は、主治医に相談のうえ申請手続きを進めつつ、エージェントへの登録を並行して行うのが効率的です。

面接で病気についてどこまで詳しく話すべきですか?

オープン就労の場合、診断名や現在の治療状況、必要な配慮事項は伝える必要があります。ただし発症の詳しい経緯やプライベートな事情まで話す義務はありません。

企業が知りたいのは「安定して働けるかどうか」と「どんな配慮があれば力を発揮できるか」の2点です。この2点に焦点を絞って簡潔に伝えるようにしましょう。

まとめ:一歩踏み出すあなたを支えるパートナーを見つけよう

精神障害があっても、適切な準備と支援を活用すれば自分に合った職場で安定して働くことは十分に可能です。まずは主治医への相談から始め、自己分析で特性を整理し、オープン就労かクローズ就労かを見極めましょう。

転職活動を一人で進めることに不安を感じるなら、障害者雇用に特化した転職エージェントの力を借りるのがおすすめです。キャリアアドバイザーが求人紹介から面接対策、入社後のフォローまで一貫してサポートしてくれるため、精神的な負担を抑えながら活動を進められます。焦らず自分のペースで一歩ずつ前に進むことが、長く働き続けられる職場と出会うための最善の方法です。