就職や転職を考えるとき、「一般雇用」と「障害者雇用」の違いが気になる方は多いのではないでしょうか。どちらの雇用形態が自分に合っているかを判断するには、それぞれの仕組みや働き方の特徴を正しく知ることが大切です。

本記事では、一般雇用の基本から障害者雇用との比較、メリット・デメリット、転職エージェントの活用法まで幅広く解説します。

Contents

一般雇用の意味と基本的な仕組み

一般雇用とは、障害の有無に関係なくすべての求職者が応募できる通常の採用枠です。求人数が豊富で、多くの方が利用する雇用形態です。まずは基本的な仕組みを押さえましょう。

一般雇用の定義

一般雇用は、企業が広く人材を募集する通常の雇用枠を指します。障害者手帳の有無は問われず、学歴・職歴・スキルなどを総合的に評価して選考が行われます。正社員から派遣・パートまで雇用形態も多岐にわたります。

一般雇用における採用の流れ

選考は、応募→書類選考→面接→内定が一般的な流れです。企業によっては適性検査やグループディスカッションを実施する場合もあります。

障害者雇用枠とは異なり、選考過程で障害に関する配慮の確認は基本的に行われません。そのため、面接時の移動手段やコミュニケーション方法に不安がある場合は、自分から企業に問い合わせる必要があります。

選考基準はあくまで他の応募者と同じ土俵での評価となる点を理解しておきましょう。

クローズ就労・オープン就労とは何が違う?

障害を開示せずに働く「クローズ就労」と、障害を企業に伝えて働く「オープン就労」があります。一般雇用はクローズ就労、障害者雇用枠はオープン就労が前提となるケースが多いです。

クローズ就労は求人の選択肢が広い反面、職場での配慮は受けにくくなります。一方、オープン就労は配慮を得やすいものの、応募先が限定される場合があります。どちらを選ぶかは、障害の程度や職場に求める環境によって異なります。

障害者雇用の基礎知識

障害者雇用は法律に基づいて設けられた特別な採用枠です。制度の目的や対象者の条件を確認しましょう。

障害者雇用の概要と目的

障害者雇用促進法に基づき、企業が一定割合以上の障害者を雇用する制度です。障害のある方が自身の能力を発揮しながら安定的に働ける環境を社会全体で整備することを目的としています。

企業には合理的配慮の提供が義務付けられており、たとえば車いす利用者へのバリアフリー対応や、精神障害のある方への業務量の調整などが該当します。2024年4月からは合理的配慮の提供義務がすべての事業者に拡大され、企業側の意識も年々高まっています。

障害者雇用率制度の仕組み

民間企業の法定雇用率は2024年4月から2.5%に引き上げられ、2026年7月には2.7%になる予定です。厚生労働省の「令和7年 障害者雇用状況の集計結果」によると、民間企業で雇用されている障害者数は約70万4,610人、実雇用率は2.41%で過去最高を記録しています。

参照:厚生労働省「令和7年 障害者雇用状況の集計結果

障害者雇用の対象となる人の条件

原則として障害者手帳(身体障害者手帳・療育手帳・精神障害者保健福祉手帳)の所持が条件です。法定雇用率にカウントされるのは手帳所持者に限られます。なお、手帳の等級や障害の種類によって雇用率の算定方法が異なり、重度の身体障害者・知的障害者は1人の雇用で2人分としてカウントされます。

手帳を取得していない方でも、主治医の意見書をもとにハローワークで相談できる場合があります。

障害者雇用が設けられている背景

障害のある方の就労機会を確保し、経済的自立を支援するという社会的要請が背景にあります。日本では1960年に身体障害者雇用促進法が制定されて以降、対象範囲の拡大や雇用率の引き上げが段階的に進められてきました。

近年は精神障害者の雇用義務化(2018年)や、法定雇用率の継続的な引き上げなど、制度面での整備がさらに加速しています。これらは障害の有無にかかわらず誰もが働ける共生社会の実現を目指す国の施策の一環です。

一般雇用と障害者雇用を比較|5つの観点から見る違い

両者には働き方にさまざまな違いがあります。勤務時間、業務内容、サポート体制、給与、キャリアの5つの観点から比較します。

①勤務時間や働き方の自由度

障害者雇用では体調に合わせた短時間勤務やフレックスタイムを利用しやすい環境が多いです。たとえば週20時間からの勤務や、午前中のみの出勤といった柔軟な働き方が認められるケースもあります。

一般雇用はフルタイム勤務が基本で、勤務時間の柔軟性は企業の制度次第です。近年はリモートワークを導入する企業も増えていますが、障害に配慮した制度として用意されているわけではない点に注意が必要です。

②業務内容や担当範囲

一般雇用では成果やスキルに応じて幅広い業務を任されます。プロジェクトのリーダーを担ったり、クライアント折衝を行ったりと、裁量の大きな仕事に挑戦できる機会も豊富です。

障害者雇用では個人の特性に合わせて業務内容が調整されることがあり、データ入力やファイリングなどの定型業務が中心になることもあります。ただし近年は、ITスキルや語学力を活かして専門性の高い業務に就く方も増えています。

③職場での支援・フォロー体制

障害者雇用では、一般雇用より手厚い支援体制が用意されています。

定期面談によるフォロー

上司や人事担当者との定期面談で、体調変化や業務上の困りごとを早期にキャッチし対応を検討します。月1回や週1回など頻度は企業によって異なりますが、「困っていることはないか」「業務量は適切か」といった確認が定期的に行われるため、問題が深刻化する前に対処できるのが利点です。

ジョブコーチ・支援員による伴走サポート

外部のジョブコーチが職場に同行し、業務の進め方や同僚とのコミュニケーションについて具体的なアドバイスを行います。支援期間は一般的に数か月で、本人だけでなく企業側の担当者にも障害特性に応じた接し方を助言してくれます。就職直後の不安が大きい時期に専門家の伴走があることで、職場への定着率が高まります。

社内での障害理解を広げる取り組み

社内研修や勉強会を通じて従業員の障害理解を深める企業も増えています。具体的には、障害の特性に関するeラーニングの実施や、障害当事者を講師に招いた勉強会、受け入れ部署向けのマニュアル作成などが行われています。こうした取り組みによって同僚の理解が深まると、日常的な声かけや業務上の配慮が自然に行われるようになり、職場全体の働きやすさが向上します。

④給与・待遇面の差

障害者雇用は一般雇用と比べて給与水準が低い傾向にあります。厚生労働省の「令和5年度障害者雇用実態調査」によると、月額平均賃金は身体障害者で約23万5,000円、知的障害者で約13万7,000円、精神障害者で約14万9,000円です。これは短時間勤務者や非正規雇用者の割合が高いことが主な要因です。

ただし、フルタイムで働く身体障害者の平均月収は約26万8,000円であり、勤務時間によっては一般雇用に近い水準となるケースもあります。

⑤キャリア形成の選択肢

一般雇用では昇進や職種変更、部署異動などキャリアパスが豊富に用意されています。実績を積めば管理職への昇格や専門職としてのキャリアアップも十分に目指せます。障害者雇用でも近年は管理職に登用される事例が増えていますが、企業規模や業種によっては選択肢が限られることがあります。

長期的なキャリアプランを重視する方は、応募前に昇進制度や人事評価の仕組みを確認しておくとよいでしょう。

一般雇用を選ぶメリット

一般雇用には、求人の多さや収入面などさまざまな利点があります。

求人の選択肢が幅広い

業種・職種・企業規模を問わず応募でき、特に専門職や管理職のポジションが豊富です。

障害者雇用枠では事務職や軽作業が中心になりがちですが、一般雇用であれば営業・企画・エンジニアなど職種の幅が格段に広がります。勤務地や働き方の条件にこだわりがある方にとっても、選択肢が多いのは大きなメリットです。

収入やキャリアアップの可能性が高い

フルタイム正社員採用が多く、昇給・賞与・退職金制度が整った企業も多いため、長期的な収入面のメリットが大きいです。障害者雇用では短時間勤務や非正規雇用の割合が高く、月収に差が出やすい傾向があります。

スキルや経験を積みながら年収アップを目指したい方にとって、一般雇用のキャリアパスは魅力的な選択肢といえるでしょう。

障害を開示せずに働ける

障害の有無を企業に伝える義務がないため、周囲を気にせず仕事に集中できるのがメリットです。「障害者」というレッテルを貼られたくない、同僚と対等な関係で働きたいと考える方にとっては、精神的な負担が軽減される選択肢です。

ただし、障害を開示していないと通院や体調不良の際に事情を説明しにくく、配慮を受けられないという側面もあります。開示するかどうかは、障害の種類や職場環境、自身のセルフケア能力を踏まえて慎重に判断する必要があります。

一般雇用を選ぶデメリット

障害のある方にとっては注意すべき点もあります。

職場での配慮を受けにくい

クローズ就労の場合、企業側は障害を把握していないため、業務量や勤務時間に関する配慮は期待しにくくなります。たとえば通院のための休みを取りづらかったり、体調が悪い日でも通常どおりのパフォーマンスを求められたりする可能性があります。

周囲に相談できないまま負担を抱え込んでしまうリスクがある点は、事前に理解しておく必要があります。

体調管理やストレス対処を自分で行う必要がある

定期面談や支援員のフォローがないため、体調やストレスの自己管理が求められます。服薬のタイミングや疲労の蓄積に自分で気を配りながら働く必要があり、セルフケアのスキルが十分でないと心身の不調につながりやすくなります。

日頃から自分なりのリフレッシュ方法を持っておくことや、信頼できる主治医やカウンセラーと定期的に相談する習慣をつけておくことが大切です。

ミスマッチが起きた際に離職につながりやすい

障害を開示していないと、業務内容や職場環境が合わないと感じても上司や人事に相談しにくい状況が生まれがちです。その結果、無理を重ねて体調を崩し、早期離職に至るケースも少なくありません。

事前に企業研究を十分に行い、自分の体力や特性に合った職場かどうかを慎重に見極めることが、ミスマッチを防ぐカギになります。

障害者雇用で働く場合のメリット・デメリット

障害者雇用にも特有のメリットとデメリットがあります。

障害者雇用のメリット|合理的配慮と定着支援

法律に基づく合理的配慮(勤務時間の調整、通院への配慮など)を受けられることが最大の利点です。就労定着支援事業による就職後の継続フォローも利用できます。また、障害を開示したうえで働くため、体調が悪い日に無理をする必要がなく、精神的な安心感を得やすいのも見逃せないポイントです。

職場に理解者がいる環境は、長く働き続けるうえで大きな支えになります。

障害者雇用のデメリット|給与やポジションの制約

求人数が一般雇用より少なく、給与水準も低い傾向があります。前述のとおり、知的障害者の平均月収は約13万7,000円、精神障害者は約14万9,000円であり、単独での生活が厳しい金額になる場合もあります。また、任される業務の範囲が限定的で、キャリアの広がりに物足りなさを感じる方も少なくありません。

障害年金やグループホームなどの福祉制度と組み合わせて生活設計を立てることも検討しておくとよいでしょう。

自分に合った雇用形態を見つけるために活用したい支援機関

どちらの雇用形態が合っているか迷ったときは、専門の支援機関を頼りましょう。

ハローワークの専門窓口

全国のハローワークには障害者向けの専門窓口(障害者専門援助部門)が設置されています。一般雇用・障害者雇用の両方の求人を紹介してもらえるほか、職業適性検査や面接対策の支援も受けられます。

利用は無料で、障害者手帳を持っている方はもちろん、申請中の方や手帳を持っていない方でも相談が可能です。まずは最寄りのハローワークに問い合わせてみるとよいでしょう。

地域障害者職業センターの役割

各都道府県に設置されている地域障害者職業センターでは、職業評価やジョブコーチの派遣を通じて、自分に合った仕事の見極めや職場適応をサポートしてくれます。「自分にどんな仕事が向いているかわからない」という段階の方でも、専門のカウンセラーによるアセスメントを受けることで、強みや課題を客観的に把握できます。

就職後の職場定着支援にも対応しているため、長期的に頼れる存在です。

就労移行支援事業所でできること

就労移行支援事業所は、一般就労を目指す障害のある方を対象とした通所型の福祉サービスです。ビジネスマナーやパソコンスキル、コミュニケーション訓練など、就職に必要なスキルを実践的に身につけることができます。

利用期間は原則2年以内で、障害福祉サービス受給者証があれば自己負担なしで利用できるケースが多いです。事業所ごとにプログラムの特色が異なるため、見学や体験を通じて自分に合った場所を選ぶことをおすすめします。

一般雇用での就職・転職を成功させるなら転職エージェントの活用がおすすめ

支援機関に加えて転職エージェントを併用することで、自分に合った求人に効率よく出会えます。

転職エージェントを利用するメリット

希望やスキルに合った求人紹介に加え、書類添削・面接対策・条件交渉までトータルでサポートしてくれます。非公開求人にアクセスできるのも大きな強みです。

一般雇用の求人は数が多い分、自分に合ったものを見つけるのに時間がかかりがちですが、エージェントを利用すれば効率よく求人を絞り込むことができます。

利用は基本的に無料で、費用面の心配なく活用できる点もメリットです。

障害者向け転職エージェントと一般向けエージェントの違い

障害者向けエージェントは障害に関する知識が豊富で、企業への配慮事項の伝え方や障害開示のタイミングについても適切にアドバイスしてくれます。企業の受け入れ体制や過去の定着率といった、一般の求人票だけではわからない情報を持っているのも強みです。

具体的には、「dodaチャレンジ(求人が幅広い)」「atGP(定番エージェント)」「障害者雇用バンク(20代・30代に強み)」「LITALICO仕事ナビ(求人豊富な定番サービス)」「マイナビパートナーズ紹介(定着支援も提供)」などの転職エージェントがあり、1人ひとりに合わせたサポートを提供しています。

一方、一般向けエージェントは業界・職種を問わず幅広い求人を扱っている点がメリットです。「リクルートエージェント」「マイナビAGENT」などが求人数の多いサービスです。

自分の状況に応じて両方を併用し、それぞれの強みを活かすのが効果的な活用法といえるでしょう。

エージェント選びで押さえておきたいポイント

求人数だけでなく、担当アドバイザーとの相性も重要です。複数のエージェントに「登録して比較し、障害者雇用の実績が豊富なエージェントを選ぶとより的確なサポートが受けられます。

初回面談で自分の希望や不安を率直に伝え、対応の丁寧さやレスポンスの速さを見極めるとよいでしょう。合わないと感じたら遠慮なく担当者の変更を依頼することも大切です。

障害のある方向けの転職サービスについては、以下の記事が参考になります。

まとめ|一般雇用と障害者雇用の違いを理解して自分に合った働き方を選ぼう

一般雇用は求人の幅広さや収入面で優れ、障害者雇用は配慮や支援の手厚さが魅力です。どちらが良い・悪いではなく、自分の障害の程度や体調、キャリアの方向性に合わせて選ぶことが大切です。

迷ったときはひとりで抱え込まず、ハローワークや就労移行支援事業所、地域障害者職業センターなどの公的機関に相談してみましょう。また、転職エージェントを併用することで、非公開求人を含む幅広い選択肢の中から自分に合った職場を効率よく探すことができます。

大切なのは、焦らず自分のペースで情報を集め、納得のいく働き方を見つけることです。