「ADHDだから弁護士は無理」と思い込んでいませんか。実は、ADHDの特性である過集中力や発想力、行動力は、弁護士業務と相性のよい部分が多くあります。
本記事では、ADHDの方が弁護士としてどのように強みを発揮できるのか、また直面しやすい課題やその対処法、さらに転職活動に役立つエージェント情報まで、幅広く解説します。
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そもそもADHDとはどんな特性?
ADHDは「注意欠如・多動症」と呼ばれる発達障害の一つです。脳の神経伝達物質の働きに偏りがあることが原因とされ、生まれつきの特性であって本人の努力不足ではありません。子どもの頃に診断されるケースだけでなく、社会人になって仕事上の困難をきっかけに初めて気づく方も少なくありません。
ここでは、ADHDの基本的な分類と、大人特有の困りごとについて確認します。
ADHDの主な3タイプ(不注意型・多動型・混合型)
ADHDは大きく3つのタイプに分けられます。
「不注意優勢型」はケアレスミスや忘れ物が多く、集中の持続が難しいのが特徴です。「多動・衝動優勢型」はじっとしていることが苦手で、思いついたことをすぐに口に出してしまう傾向があります。そして両方の特徴を併せ持つ「混合型」が最も多いとされています。
自分がどのタイプに近いかを知ることが、適した仕事環境を選ぶ第一歩になります。
大人のADHDに多い「生きづらさ」の正体
文部科学省が2022年に実施した調査では、通常学級に在籍する小中学生の8.8%が学習面または行動面で著しい困難を示すと報告されています(参照:文部科学省「通常の学級に在籍する特別な教育的支援を必要とする児童生徒に関する調査結果(令和4年)」)。
こうした特性を持つ方の多くは、大人になっても「なぜか仕事がうまくいかない」「周囲と同じようにできない」という漠然とした生きづらさを抱えています。診断を受けて初めて原因がわかり、対処法を見つけられたという声も多く聞かれます。
ADHDの人が仕事選びで悩みやすい背景
ADHDの方は能力自体が低いわけではないのに、職場で苦労しがちです。その理由を理解することで、自分に合ったキャリアの方向性が見えてきます。
「自分に合う仕事が見つからない」と感じる原因
ADHDの方が「何をやってもうまくいかない」と感じやすい最大の理由は、自分の特性と業務内容のミスマッチにあります。細かいルーティン作業やマルチタスクが求められる職場では苦手が目立ちやすく、結果的に自信を失ってしまうケースが多いのです。
逆に、自分の強みが活きる環境に出会えれば、大きな成果を上げられる可能性を秘めています。
職場環境とのミスマッチが起こりやすい理由
ADHDの特性は外見からは分かりにくいため、周囲の理解を得にくい側面があります。「なぜ同じミスを繰り返すのか」「なぜ時間管理ができないのか」と評価が下がり、本人も自己肯定感が低下するという悪循環に陥りがちです。
こうした環境が合わないと感じたら、特性を活かせる専門職への転向を検討するのも一つの手です。
ADHDの特性が弁護士業務にマッチする5つの理由
「ADHDに弁護士は向いてるのか」という問いに対して、答えはYESと言える場面が多くあります。弁護士業務にはADHDの強みが活きるポイントがいくつも存在します。ここでは代表的な5つの理由を紹介します。
過集中力が複雑な案件処理に活きる
ADHDの方は、興味を持った対象に対して驚異的な集中力を発揮する「過集中」の特性を持っています。弁護士業務では、膨大な判例を読み込んだり、複雑な契約書を精査したりする場面が多くあります。こうした没頭型の作業は、過集中の力が最大限に発揮される場面です。
発想力・ひらめきが法廷戦略の武器になる
既存の枠にとらわれない発想力は、ADHDの大きな強みです。弁護士の仕事では、相手方の主張を崩すための新しい切り口や、依頼者に有利な法的構成を考え出す創造力が求められます。型にはまらない思考ができるADHDの方は、法廷戦略の立案において独自の価値を発揮できます。
行動力とスピード感が依頼者対応で評価される
思い立ったらすぐ行動に移せるのもADHDの特性です。弁護士の仕事では、クライアントからの急な相談や緊急の法的対応が発生することも珍しくありません。こうした局面で即座に動ける行動力は、依頼者からの信頼に直結します。
正義感・共感力がクライアントの信頼を得やすい
ADHDの方には感受性が豊かな人が多く、困っている人に対して強い共感を示す傾向があります。弁護士にとって、依頼者の気持ちに寄り添い、真摯に向き合う姿勢は不可欠な資質です。この共感力の高さは、クライアントとの信頼関係を築くうえで大きなアドバンテージになります。
刺激や変化の多い業務が飽きにくい
弁護士の業務は案件ごとに内容が異なり、同じ仕事の繰り返しにはなりにくいという特徴があります。新しい法律問題に取り組んだり、法廷に立ったり、交渉の場に出たりと、常に新しい刺激があります。ルーティンワークが苦手なADHDの方にとって、この変化の多さはモチベーションを保ちやすい環境といえます。
一方で注意が必要――ADHDの弁護士が直面しやすい課題
ADHDと弁護士の相性がよい面がある一方で、注意すべき点も確かに存在します。事前に課題を把握しておけば、対策を立てやすくなります。
書類管理・期日管理のミスリスク
弁護士業務では、裁判の期日や書面の提出期限を厳密に守る必要があります。不注意の特性が強い場合、スケジュールの抜け漏れが致命的なミスにつながりかねません。期限管理は弁護士として最も注意が必要な領域の一つです。
長時間のデスクワークへの集中維持
法律文書の作成や判例リサーチなど、長時間にわたるデスクワークは弁護士の日常業務です。過集中が発動しない場面では、逆に集中が続かないというADHDの特性が表れやすく、作業効率が大幅に低下してしまうことがあります。
マルチタスク処理が求められる場面での困難
複数の案件を同時に抱えるのは弁護士にとって日常的なことです。案件Aの書面を作成しながら、案件Bの依頼者対応を行い、案件Cの期日準備を進めるといった同時進行が求められます。優先順位の整理が苦手なADHDの方にとって、この点は大きなハードルになりえます。
対人コミュニケーションでのトラブル
衝動性の強いタイプの方は、相手の話を遮ってしまったり、思ったことをそのまま口にしてしまうことがあります。弁護士は依頼者、裁判官、相手方弁護士など多くの関係者とやり取りする仕事であるため、コミュニケーションの取り方には意識的な配慮が必要です。
ADHDの弁護士が長く活躍するための工夫術
課題があるからといって弁護士を諦める必要はありません。具体的な工夫によって、ADHDの弱点をカバーしながらキャリアを築くことは十分に可能です。
タスク管理ツール・リマインダーを徹底活用する
スケジュール管理の弱さを補うために、デジタルツールを最大限に活用しましょう。Googleカレンダーのリマインダー機能、タスク管理アプリ(Todoist、Notionなど)を使い、期日の数日前にアラートが鳴る仕組みを作ることで、抜け漏れリスクを大幅に軽減できます。
アナログの手帳と併用するのも効果的です。
事務スタッフやパラリーガルとの役割分担を明確にする
弁護士がすべてを一人で抱え込む必要はありません。書類の整理やスケジュール管理など、不注意が出やすい事務作業はパラリーガルや事務スタッフに任せ、自分は法的判断や依頼者対応に集中する体制を整えましょう。
苦手な部分を人に委ね、得意な部分に注力する分業体制がADHDの方には特に有効です。
得意分野に特化してキャリアを築く
弁護士の仕事は幅広く、分野によって求められるスキルが異なります。たとえば、知的財産法やIT法務のように新しい発想力が求められる分野、刑事弁護のように法廷での瞬発力が問われる分野は、ADHDの強みが活きやすいといえます。
あれもこれもと手を広げるよりも、自分が熱中できる専門分野を見つけ、そこに集中的にリソースを投入するほうが成果につながりやすいでしょう。
主治医やカウンセラーと連携して体調を安定させる
ADHDの特性と上手に付き合うには、医療やカウンセリングのサポートも重要です。必要に応じて薬物療法を取り入れたり、認知行動療法によるセルフマネジメントの手法を学んだりすることで、仕事のパフォーマンスを安定させることが期待できます。
一人で抱え込まず、専門家の力を借りる姿勢が長期的なキャリア継続につながります。
弁護士以外にもある!ADHDの強みが活きる職業例
弁護士以外にも、ADHDの特性を活かせる職業は複数あります。弁護士を目指す過程で他のキャリアパスも視野に入れておくと、選択肢が広がります。
IT系(プログラマー・エンジニア)
プログラミングは、一つの課題に没頭して取り組む作業スタイルが基本です。過集中の特性が大きなアドバンテージになるほか、論理的な思考力も活かしやすい分野です。リモートワークが可能な職場も多く、自分に合った作業環境を選びやすいのも魅力です。
クリエイティブ系(デザイナー・ライター)
自由な発想力を直接アウトプットできるクリエイティブ系の職種も、ADHDの方に適しています。デザイナーやライター、イラストレーターなどは、独自の視点や感性がそのまま強みになります。フリーランスとして働ける選択肢もあり、自分のペースで仕事がしやすい点もポイントです。
研究・専門職系
研究職や学術分野では、特定のテーマに深くのめり込む力が高く評価されます。大学や研究機関のほか、企業の研究開発部門でも専門性の高い人材は求められています。弁護士と同様に、専門知識を武器に活躍できるフィールドです。
ADHDの方が自分に合った職場を見つけるには
自分の特性を理解したうえで、適切なサポートを受けながら就職・転職活動を進めることが大切です。ここでは具体的な方法を3つ紹介します。
障害者雇用枠という選択肢を知っておく
厚生労働省の「令和5年度障害者雇用実態調査」によると、民間企業で雇用されている発達障害者は推計9万1,000人にのぼり、前回調査(2018年)の約3万9,000人から大幅に増加しています(参照:厚生労働省「令和5年度障害者雇用実態調査の結果を公表します」)。
精神障害者保健福祉手帳を取得すれば障害者雇用枠での応募が可能になり、合理的配慮を受けられる環境で働くことができます。一般枠と比較して給与面の差はありますが、安定した就労を実現しやすいというメリットがあります。
障害に理解のある転職エージェントを活用するメリット
ADHDの方が転職活動を行う場合、発達障害に精通した転職エージェントを利用することで、特性に合った求人をマッチングしてもらえます。履歴書・職務経歴書の書き方から面接対策まで、障害特性を踏まえた個別サポートを受けられるのが最大のメリットです。
一人で悩みながら求人を探すよりも、専門家の知見を借りたほうが、ミスマッチのない転職を実現しやすくなります。
おすすめの転職エージェント3選【ADHD当事者向け】
ADHDを含む発達障害の方に実績のある転職エージェントとしては、以下のようなサービスがあります。
一つ目は「atGP(アットジーピー)」で、障害者雇用に特化した大手サービスとして豊富な求人数を誇ります。二つ目は「dodaチャレンジ」で、パーソルグループの障害者向け転職支援サービスとして専任アドバイザーのサポートが手厚い点が特徴です。三つ目は「ランスタッドチャレンジド」で、外資系を含む幅広い求人を取り扱っています。
いずれも登録・相談は無料なので、まずは複数のエージェントに登録して比較してみるのがおすすめです。
まとめ|ADHDと弁護士は相性が良い――強みを活かす戦略がカギ
ADHDの特性である過集中力、発想力、行動力、共感力は、弁護士業務において大きな武器になります。一方で、期日管理やマルチタスクといった苦手な部分には、ツールの活用や周囲との連携で十分に対処可能です。「ADHDだから弁護士には向いてない」と諦めるのではなく、自分の特性を正しく理解し、強みを伸ばす環境を選ぶことが最も大切です。
転職や就職で悩んでいる方は、発達障害に理解のある転職エージェントの力も借りながら、自分に合ったキャリアを見つけてください。




