「また仕事を辞めてしまった」「次こそは長く続けたいのに、うまくいかない」──ADHDの特性を持つ方の中には、転職を何度も繰り返してしまうことに悩んでいる方が少なくありません。しかし、転職を繰り返す原因を正しく理解し、自分に合った対策を取ることで、この悪循環から抜け出すことは十分に可能です。

本記事では、ADHDの方が転職を繰り返す原因から、自分に合った職場の見つけ方、転職エージェントの活用法まで詳しく解説します。

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ADHDの人が転職を繰り返してしまう原因とは

ADHDの方が転職を繰り返してしまう背景には、特性と環境のズレが大きく関わっています。「自分が悪い」と自己否定する前に、なぜ転職が続いてしまうのかを客観的に理解することが大切です。ここでは、代表的な3つの原因を見ていきましょう。

特性と職場環境の相性が合わず早期退職につながる

ADHDの方は、注意力の持続やマルチタスクが求められる業務で困難を感じやすい傾向があります。たとえば、細かい事務処理が中心の仕事や、暗黙のルールが多い職場では、特性とのミスマッチが起こりやすくなります。

自分の特性を把握しないまま就職すると、入社後に「思っていたのと違う」というギャップを感じ、早期退職につながってしまうのです。

限界まで我慢してから突発的に辞めてしまう

ADHDの方の中には、日々のストレスを溜め込みやすいタイプの方もいます。周囲に相談するタイミングを逃してしまい、気づいたときにはすでに精神的に限界を迎えているというケースは珍しくありません。

「もう無理だ」と感じた瞬間に退職を決断してしまい、次の職場を決めないまま辞めてしまうことも、転職を繰り返す一因となっています。

衝動的に次の仕事を決めて同じ失敗を繰り返す

ADHDの特性の一つに「衝動性」があります。早く次の仕事を見つけなければという焦りから、求人情報を十分に確認せずに応募・入社を決めてしまうことがあります。結果として、前職と似たような環境を選んでしまい、同じ理由でまた退職するという悪循環に陥りやすくなります。

転職先を決める際には、立ち止まって冷静に判断する仕組みを作ることが重要です。

転職を繰り返さないために押さえたい3つの考え方

転職を繰り返す流れを断ち切るためには、次の職場選びに入る前にいくつかの準備が必要です。ここでは、ADHDの方が意識しておきたい3つの考え方をご紹介します。どれも特別なスキルは必要なく、今日から取り組めるものばかりです。

自分の得意・不得意を具体的に整理する

転職を成功させるための第一歩は、自分自身の特性を言語化することです。「集中力が続かない」だけでなく、「興味のある分野なら何時間でも集中できる」「電話対応は苦手だがメール対応は得意」といったように、得意と不得意を具体的に書き出してみましょう。

この作業が、自分に合う仕事を見つけるための土台になります。

職場の雰囲気や業務内容を事前にリサーチする

求人票の情報だけで職場の実態を把握するのは難しいものです。可能であれば、職場見学や面接時に社内の雰囲気を確認したり、口コミサイトで社員の声を調べたりしましょう。

特に、業務の進め方がマニュアル化されているか、相談しやすい環境かどうかは、ADHDの方にとって長く働けるかを左右する重要なポイントです。

第三者の力を借りて客観的に判断する

自分一人で転職活動を進めると、どうしても視野が狭くなりがちです。転職エージェントやキャリアカウンセラー、就労支援機関など、第三者に相談することで、自分では気づかなかった強みや適性を発見できることがあります。

客観的な意見を取り入れることで、ミスマッチのリスクを大幅に減らすことができます。

転職回数が多くても内定をもらえる人の共通点

転職回数が多いことは、必ずしもマイナスに働くわけではありません。実際に、複数回の転職経験がありながらも希望の職場に採用されている方は存在します。ここでは、そうした方々に共通する3つのポイントを解説します。

過去の経験から学んだことを言葉にできる

採用担当者が気にするのは、転職回数そのものよりも「そこから何を学んだか」です。「前職では〇〇がうまくいかなかったが、その経験を通じて△△の大切さに気づいた」というように、自分の経験を振り返り、学びを整理しておきましょう。

成長のストーリーを伝えられる人は、転職回数が多くても好印象を与えることができます。

退職理由をポジティブに伝えられる

面接で退職理由を聞かれた際に、前職の不満や人間関係のトラブルをそのまま話してしまうと、印象が悪くなりがちです。

「より自分の特性を活かせる環境を探したかった」「キャリアの方向性を見直した結果」といったように、前向きな言葉に置き換えて伝える練習をしておくと、面接での評価が大きく変わります。

自己分析をもとに応募先を絞り込んでいる

やみくもに求人に応募するのではなく、自分の特性や希望条件に合致した企業に的を絞って応募している人は、選考通過率が高い傾向にあります。

「なぜこの会社を選んだのか」を明確に説明できることで、採用担当者に対して「この人はうちで長く活躍してくれそうだ」という安心感を与えることができます。

ADHDの特性を踏まえた仕事の探し方

自分に合った仕事を見つけるためには、ADHDの特性を正しく理解した上で、戦略的に仕事探しを進めることが大切です。「向いている仕事」を探すだけでなく、「避けたほうがよい環境」を知ることも、同じくらい重要なポイントです。

苦手な業務が多い職種を避ける

ADHDの方が苦手とする傾向がある業務を多く含む職種は、ストレスが蓄積しやすく、長続きしにくい原因になります。たとえば、長時間にわたる単調なデータ入力、厳密な正確性が求められる経理業務、臨機応変なマルチタスクが必要な受付業務などは、特性との相性を慎重に検討する必要があります。

自分が「つらい」と感じた業務を書き出すことで、避けるべき職種が見えてきます。

長く働ける職場の条件を先に明確にする

給与や勤務地だけでなく、「自分が長く働くために必要な条件」を事前に言語化しておくことが重要です。たとえば、「在宅勤務が選べること」「業務内容が明確であること」「上司に相談しやすい雰囲気があること」など、ADHDの特性に配慮した条件を優先順位をつけてリストアップしましょう。

条件が明確になるほど、求人を比較検討する際の判断軸がぶれにくくなります。

同じ特性を持つ人が活躍している職場を参考にする

ADHDの当事者が実際に働いて「うまくいった」と感じている職場の情報は、非常に参考になります。当事者のブログやSNS、就労支援機関での体験談などを通じて、どのような職場環境や職種で活躍している人が多いのかを調べてみましょう。

自分と似た特性を持つ人がいきいきと働いている環境は、自分にとっても合っている可能性が高いといえます。

ADHDに理解のある転職エージェントを活用しよう

転職を繰り返してきた方にとって、一人で求職活動を進めることには不安がつきまといます。そんなときに心強い味方になるのが、ADHDの特性に理解のある転職エージェントです。プロのサポートを受けることで、自分では見つけられなかった求人や働き方に出会える可能性が広がります。

転職エージェントを使うメリットとは

転職エージェントを利用する最大のメリットは、自分の特性や希望条件に合った求人を紹介してもらえることです。加えて、履歴書・職務経歴書の添削、面接対策、入社後のフォローアップなど、転職活動全体を通じたサポートを受けることができます。

特にADHDの方は、スケジュール管理や書類作成に苦手意識を持つケースが多いため、こうした実務面の支援は大きな助けになります。

障害者手帳がある場合におすすめのエージェント

障害者手帳を持っている方は、障害者雇用枠に特化した転職エージェントを活用することで、職場での合理的配慮を受けやすくなります。精神障害者の転職支援に実績のあるエージェントであれば、ADHDの特性を踏まえた求人紹介やアドバイスが期待できます。

具体的には、「dodaチャレンジ」(求人が幅広い)、「atGP」(定番エージェント)、「障害者雇用バンク」(20代・30代に強み)、「LITALICO仕事ナビ」(求人豊富な定番サービス)、「マイナビパートナーズ紹介」(定着支援も提供)などの転職エージェントがあり、1人ひとりに合わせたサポートを提供しています。

障害者雇用専門のアドバイザーが在籍しているかどうかも、エージェント選びの重要なチェックポイントです。

障害者手帳がない場合でも利用できるエージェント

ADHDの診断を受けていても、障害者手帳を取得していない方は少なくありません。そのような場合でも、一般雇用枠での転職を手厚くサポートしてくれるエージェントがあります。代表的なのは「リクルートエージェント」「マイナビ転職AGENT」などの転職エージェントです。

未経験者歓迎の求人を多く扱う「ハタラクティブ」のようなエージェントや、20代・第二新卒に特化した「キャリアスタート」といったサービスなど、自分の状況に合ったエージェントを選ぶことで、転職回数が多くても安心して活動を進められます。

エージェント選びで確認しておきたいポイント

転職エージェントを選ぶ際は、いくつかの点を事前に確認しておきましょう。まず、発達障害やADHDへの理解があるかどうか。次に、入社後の定着支援まで行っているかどうか。そして、自分の希望する勤務エリアや職種の求人を扱っているかどうかです。

複数のエージェントに登録して比較することで、自分に最も合ったサービスを見つけやすくなります。

ADHDの方向けの転職サービスについては、以下の記事が参考になります。

転職エージェント以外に頼れる就職支援サービス

転職エージェント以外にも、ADHDの方が活用できる就職支援サービスは複数あります。自分の状態や準備段階に応じて、最適なサービスを選びましょう。ここでは、代表的な3つの支援先をご紹介します。

ハローワークの専門窓口を活用する

全国のハローワークには、障害のある方を対象とした「専門援助部門」が設置されています。障害者手帳の有無にかかわらず相談できる場合も多く、職業相談や求人紹介、面接練習などのサポートを無料で受けることができます。

まずは最寄りのハローワークに問い合わせて、利用可能なサービスを確認してみましょう。

就労移行支援事業所で準備を整える

すぐに就職するのが不安な方には、就労移行支援事業所の利用がおすすめです。最長2年間、ビジネスマナーやパソコンスキル、コミュニケーション訓練などのプログラムを受けながら、就職に向けた準備を進めることができます。

事業所によってはADHDの特性に特化したプログラムを提供しているところもあるため、複数の事業所を比較検討することをおすすめします。

発達障害者支援センターに相談する

各都道府県に設置されている発達障害者支援センターでは、就労に関する相談を無料で受け付けています。ADHDの特性に詳しい専門スタッフが、仕事探しの方向性や利用できる制度についてアドバイスしてくれます。

転職活動を始める前の「そもそもどうすればいいかわからない」という段階から相談できるのが大きな強みです。

面接・書類選考で転職回数をどう伝えるか

転職回数が多いことは、書類選考や面接で不安要素になりがちです。しかし、伝え方次第では、むしろ自分の成長をアピールするチャンスに変えることもできます。ここでは、職務経歴書と面接それぞれでの工夫をお伝えします。

職務経歴書での書き方の工夫

転職回数が多い場合、職務経歴書はキャリア式(職種・スキル別)でまとめるのが効果的です。時系列で並べると転職回数が目立ちやすくなりますが、キャリア式であれば「どんなスキルを身につけてきたか」に焦点を当てることができます。

各職場で得た経験やスキルを簡潔にまとめ、応募先で活かせるポイントを強調しましょう。

面接で正直に伝えつつ前向きな印象を残すコツ

面接では、転職理由を正直に伝えることが基本ですが、伝え方には工夫が必要です。「環境が合わなかった」という事実だけでなく、「その経験を通じて、自分に合う働き方が明確になった」というように、学びと成長を示すストーリーを準備しておきましょう。

また、応募先の企業で長く働きたいという意欲を具体的に伝えることで、採用担当者の安心感につながります。

【Q&A】ADHDと転職の繰り返しに関するよくある疑問

ADHDの方が転職活動を進める中で、多くの方が抱える疑問にお答えします。

面接でADHDであることを伝えるべき?

ADHDの開示は義務ではなく、ご自身の判断に委ねられます。障害者雇用枠で応募する場合は開示が前提となりますが、一般雇用枠の場合は伝えるかどうかを選べます。

開示することで合理的配慮を受けやすくなるメリットがある一方、選考に影響する可能性もゼロではありません。転職エージェントや支援機関に相談しながら、自分にとって最適な判断をしましょう。

就職支援サービスはいつから使い始めるのがよい?

できるだけ早い段階で利用を始めることをおすすめします。「転職先を辞めたくなってから」ではなく、「次の転職を繰り返さないために」という予防的な意識で活用するのが理想です。

在職中でも利用できるサービスは多いため、気になるサービスがあれば、まずは無料相談から始めてみましょう。

正式な診断がなくても利用できる支援はある?

ADHDの正式な診断がなくても利用できる支援サービスは複数あります。ハローワークの一般窓口や、一般向けの転職エージェントは診断の有無を問わず利用できます。また、発達障害者支援センターでは、診断前の段階でも相談を受け付けています。

「診断がないから支援を受けられない」と思い込まず、まずは相談してみることが大切です。

まとめ:ADHDで転職を繰り返す悪循環を断ち切るために

ADHDの方が転職を繰り返してしまうのは、決して本人の努力不足ではありません。特性と職場環境のミスマッチ、ストレスの蓄積、衝動的な判断など、複数の要因が重なった結果です。

この悪循環を断ち切るためには、まず自分の特性を正しく理解し、得意・不得意を言語化することが出発点になります。その上で、職場環境を慎重にリサーチし、転職エージェントや支援機関といった第三者の力を借りることで、自分に合った職場に出会える可能性は大きく高まります。

転職回数が多いことを過度に悲観する必要はありません。大切なのは、過去の経験から学び、次の一歩をより良いものにすることです。本記事で紹介した方法を参考に、あなたに合った働き方を見つけていきましょう。