「自閉症でも自分に合う仕事はあるのだろうか」と不安を感じている方は少なくありません。厚生労働省の令和5年度障害者雇用実態調査によると、発達障害者の雇用者数は推計9万1千人で、5年前から大幅に増えています。特性を理解し強みを活かせる職種を選べば、安定して働くことは十分に可能です。
本記事では自閉症の方に向いている仕事や就活のコツ、支援制度を解説します。
参照:厚生労働省「令和5年度障害者雇用実態調査の結果を公表します」
Contents
自閉症(自閉スペクトラム症)の基本を知ろう
仕事選びの第一歩は自分の特性を正しく知ることです。自閉症の概要と仕事に関わる強み・弱みを確認しましょう。
自閉症とはどんな特性?主な症状と診断基準
自閉症は対人コミュニケーションの難しさや特定の物事への強いこだわりを特徴とする先天的な脳機能の違いです。症状の現れ方には個人差が大きく、知的能力に遅れがない方も多くいます。
診断は精神科や心療内科の専門医がDSM-5などの国際的な基準に基づいて行います。近年は成人になってから診断を受けるケースも増えており、上記の厚生労働省の調査では就業中の発達障害者のうち自閉症を含む広汎性発達障害が69.1%と最も多い割合を占めています。
自閉症の方が持つ強みと苦手な領域
高い集中力や正確さへのこだわり、ルールを忠実に守れる点が仕事上の強みです。論理的思考やパターン認識に優れている方も多く、データ分析やプログラミングなどの領域で力を発揮しやすい傾向があります。
一方であいまいな指示の理解や急な変更対応、暗黙のルールの察知などに困難を感じやすい面もあります。苦手を克服しようとするだけでなく、強みを活かせる環境を選ぶという視点が大切です。
自閉症の方が職場で直面しやすい6つの困りごと
職場での悩みには共通パターンがあります。事前に知り、対策に役立てましょう。
① 指示があいまいだと業務の進め方に迷う
「適当にやっておいて」のような指示では作業が止まりがちです。「いつまでに・何を・どの形式で」と確認する習慣をつけましょう。
② 「言わなくてもわかるでしょ」という空気が読めない
暗黙のルールや言外の意味を汲み取るのが難しい傾向があります。「なぜ注意されたのかわからない」という経験が積み重なると、自信を失ってしまうこともあります。上司に明確な言葉で伝えてもらうよう依頼し、不明な点はその場で質問する習慣をつけることが対策です。
③ チームワークの場面で動き方がつかめず孤立しがち
自分の役割や連携タイミングがわかりにくいことがあります。役割分担をリスト化してもらうと動きやすくなります。
④ 複数の業務を同時にこなすのが難しい
電話応対をしながらメモを取る、急な依頼に対応しつつ既存の作業を進めるといったマルチタスクが苦手な方は多くいます。上司と優先順位を整理し、一つずつ取り組める環境を相談しましょう。
⑤ 感覚過敏によりオフィス環境がストレスになる
蛍光灯のちらつきや周囲の話し声、空調の音など、多くの人が気にならない刺激がストレス源になることがあります。ノイズキャンセリングイヤホンの使用許可や静かな席への配置変更を事前に相談しましょう。テレワーク制度がある企業を選ぶのも有効な対策です。
⑥ 自分の特性に合った仕事がわからない
障害者職業総合センターの調査では発達障害者の就職1年後の定着率は71.5%で、約3割が離職しています。支援機関の活用がおすすめです。
参照:障害者職業総合センター「障害者の就業状況等に関する調査研究」
自閉症の方におすすめの仕事12選【特性を活かせる職種】
集中力・正確性・パターン認識力を活かしやすい職種を紹介します。
ITエンジニア・プログラマー
論理的思考と細部への注意力が活きる分野です。コードには正解・不正解が明確にあるため、あいまいさが少ない点も自閉症の方に合いやすいポイントです。リモートワークが普及しており、感覚過敏がある方にもメリットがあります。
データ入力・データ分析
数値を正確に処理する業務で、手順が明確なため取り組みやすい仕事です。決まったフォーマットに沿って淡々と作業を進められるため、集中力の高さが大きな武器になります。ExcelやBIツールなどのスキルを身につければ、キャリアアップの幅も広がります。
経理・会計業務
ルールに基づく正確な処理力が活かせ、繰り返し業務で安定しやすい職種です。仕訳入力や請求書の処理など手順が決まった作業が中心で、数字のミスを見逃さない注意力が評価されます。簿記などの資格を取得すれば、就職時のアピール材料にもなります。
Webサイト制作(デザイン・コーディング)
視覚的こだわりやコードの正確な記述力が求められる仕事です。デザインとコーディングのどちらかに特化できる点も、得意分野を深められる自閉症の方に合っています。フリーランスとして自分のペースで働く選択肢もあります。
ソフトウェアテスター(品質検証)
プログラムの不具合を見つけ出すテスト業務で、細部の違いに気づく力と手順を忠実に実行する力が活かせます。テスト手順書に沿って同じ操作を繰り返す場面が多く、ルーティン作業が得意な方にも適しています。未経験から挑戦しやすい点も魅力です。
研究職・学術分野の専門職
特定分野への没頭力が強みになり、自分のペースで研究を進められる環境が多い職種です。大学や研究機関のほか、企業の研究開発部門でも専門知識を活かして活躍できます。一つのテーマを深く掘り下げる粘り強さが高く評価される領域です。
翻訳・校閲・ライティング
言語への正確さを活かし、一人で集中して取り組める仕事です。誤字脱字や表現の揺れを見逃さない注意力が求められるため、細部へのこだわりが強みになります。在宅ワークの案件も豊富で、対人コミュニケーションの負担を抑えやすい職種です。
図面作成(CADオペレーター)
設計図をもとに精密な図面をパソコンで作成する業務です。寸法や線の位置を正確に入力する作業が中心で、手順が明確な環境のなかで高い集中力を発揮しやすい職種です。建築・製造業界を中心に安定した需要があります。
倉庫内作業・検品スタッフ
商品の仕分けや検品など、決まった手順で黙々と進める仕事です。対人コミュニケーションが最小限で済む環境が多く、自分のペースを保ちやすい点がメリットです。体を動かしながら働きたい方や、成果が数値で見える仕事にやりがいを感じる方にも向いています。
図書館司書・アーカイブ管理
資料の分類・整理を体系的に行う業務は、秩序を重視する特性との相性が良い仕事です。静かな環境で働けるため感覚過敏がある方にも向いています。決められたルールに従って情報を正確に管理する力が求められ、几帳面さが評価される職種です。
動画編集・映像制作
映像素材を細かくカット・編集する作業は、集中力とこだわりが存分に活かせます。テロップの位置やカットのタイミングなど、細部の調整を繰り返す根気強さが求められるため、自閉症の特性が武器になる場面が多い職種です。在宅勤務も可能なケースが増えています。
清掃業務・メンテナンス作業
手順が決まったルーティンワークで、毎日同じ流れで作業を進められる安心感があります。清掃した場所がきれいになるなど成果が目に見えやすく、達成感を得やすい仕事です。一人で担当エリアを任されることが多く、マイペースに取り組める点も魅力です。
自閉症の方が自分に合った仕事を見つけるための5つのステップ
計画的な準備が適職への近道です。
ステップ1:自己分析で得意・不得意を明確にする
集中できた場面や疲れやすかった場面を書き出し、特性を棚卸ししましょう。就労移行支援事業所で実施される職業適性検査を受けると、客観的なデータをもとに自分の向き不向きを把握できます。
ステップ2:業務内容と自分の特性を照らし合わせる
「マルチタスクの有無」「マニュアル整備」などの視点で求人票を確認しましょう。業務内容が具体的に書かれている求人は、入社後のギャップが少なく安心です。不明な点は応募前にエージェントや企業に質問するとよいでしょう。
ステップ3:職場の環境・雰囲気を事前にチェックする
オフィスの明るさや騒音レベル、座席の配置など感覚面を確認しましょう。可能であれば職場見学や短期実習に参加して、実際の環境を体感することをおすすめします。見学時にはトイレや休憩スペースなどのリラックスできる場所もチェックしておくと安心です。
ステップ4:配慮事項を整理して企業に伝える準備をする
「指示は文書でほしい」「電話応対は苦手」など、必要な合理的配慮を具体的に整理しておくと面接でもスムーズです。厚生労働省が公開している「就労パスポート」を使って情報を整理するのも一つの方法です。
ステップ5:専門家や支援機関を活用する
就労支援機関や転職エージェントに相談すると、新たな選択肢が見つかることもあります。
転職エージェントを活用して自閉症に理解ある職場を探そう
障害者向け転職エージェントは、自分に合った職場を効率的に見つける有効な手段です。一人で求人を探すよりも、障害への理解がある企業とのマッチング精度を高められます。
障害者向け転職エージェントとは?一般の転職サイトとの違い
障害特性に応じたマッチングを行い、企業の配慮体制を把握したうえで求人を紹介するサービスです。キャリアアドバイザーが面談を通じて本人の強みや希望条件を丁寧にヒアリングしてくれるため、一人で求人を探すよりもミスマッチが起きにくいのが大きな特徴です。
転職エージェントを利用するメリット・デメリット
メリットとしては、一般の求人サイトには掲載されていない非公開求人を紹介してもらえること、履歴書や職務経歴書の添削を受けられること、模擬面接で実践的な練習ができること、そして企業との給与や勤務条件の交渉を代行してもらえることが挙げられます。特に自閉症の方にとっては、自分の特性や必要な配慮をどう企業に伝えるかをアドバイザーと一緒に整理できる点が心強いポイントです。
一方でデメリットとしては、担当アドバイザーとの相性が合わない場合にストレスを感じることや、希望する地域・職種によっては紹介可能な求人が限られるケースがあることが挙げられます。一つのエージェントに絞らず、2〜3社に登録して比較検討するのがおすすめです。
エージェント選びで重視したい3つのポイント
「発達障害の支援実績」「入社後の定着フォロー」「障害特性への理解度」を確認しましょう。発達障害者の平均勤続年数は5年1カ月と身体障害者(12年2カ月)より短く、定着支援の充実度がエージェント選びの鍵です。
参照:厚生労働省「令和5年度障害者雇用実態調査結果報告書」
自閉症の方が活用できる公的な就労支援制度
無料で利用できる公的支援を活用しましょう。
就労移行支援で働く準備を整える
一般企業への就職を目指す方が最長2年間、職業訓練や就活サポートを受けられるサービスです。ビジネスマナーの習得やパソコンスキルの訓練、模擬面接などを通じて就職準備を進められます。利用料は世帯所得に応じた負担上限があり、多くの方が無料で利用しています。
就労継続支援(A型・B型)で経験を積む
A型は雇用契約を結んで最低賃金以上の給与を受け取りながら働く形態で、B型は雇用契約を結ばず自分のペースで工賃を受け取りながら作業に取り組む形態です。すぐに一般就労が難しい場合でも、働く経験を積みながらステップアップを目指すことができます。
就労定着支援で長く働き続ける
就職後最長3年間、就労に伴う生活面の課題について相談やサポートを受けられます。職場での困りごとを支援員が企業との間に入って調整してくれるため、一人で抱え込まずに済みます。利用者の1年後定着率は約73%と、未利用者(約53%)より約20ポイント高い結果が出ており、長く働き続けるためにぜひ活用したい制度です。
まとめ|自閉症でも自分らしく働ける仕事は必ず見つかる
自閉症の方が安定して働くには、特性を正しく理解し強みを活かせる環境を選ぶことが重要です。本記事で紹介した12の職種や5つのステップを参考に、自分に合った仕事探しを進めてみてください。
一人で悩む必要はありません。就労支援機関や障害者向け転職エージェントを積極的に活用し、専門家と一緒に次のキャリアを考えていきましょう。あなたの強みを活かして自分らしく働ける場所はきっと見つかります。




