「発達障害があるけれど、働きたい」「どこに相談すればいいかわからない」——そんな悩みを持つ方にまず知ってほしいのが、ハローワークの就労支援です。ハローワークには障害のある方を専門にサポートする窓口があり、求人紹介だけでなく、職業訓練や職場実習まで幅広い支援を無料で受けることができます。障害者手帳を持っていなくても相談できるため、診断を受けたばかりの方にも利用しやすい制度です。

本記事では、発達障害の方がハローワークで利用できる支援メニューや利用の流れに加え、オープン就労・クローズ就労の考え方、さらに転職エージェントとの併用法まで詳しく解説します。

Contents

発達障害とは?仕事で困りやすいポイントを確認

就労支援を上手に活用するためには、まず自分自身の特性を正しく理解しておくことが大切です。ここでは発達障害の主な種類と、職場で起こりやすい困りごとについて整理します。

発達障害の主な種類と特性(ASD・ADHD・SLD)

発達障害は大きく分けて、自閉スペクトラム症(ASD)、注意欠如・多動症(ADHD)、限局性学習症(SLD)の3つに分類されます。

ASDはコミュニケーションの困難さやこだわりの強さに特徴があり、ADHDは不注意や衝動性、多動性が目立ちやすいタイプです。SLDは読み書きや計算など特定の学習領域に困難を抱えます。

これらは併存することも多く、一人ひとりの特性の現れ方は大きく異なります。そのため、支援を受ける際には「発達障害だからこう」と一括りにせず、自分の特性を具体的に把握しておくことが重要です。

職場で生じやすい困りごとの具体例

発達障害のある方が職場で直面しやすい困りごとには、口頭指示の聞き漏らし、マルチタスクへの対応の難しさ、暗黙のルールの理解のしにくさなどがあります。また、感覚過敏によりオフィスの照明や騒音がストレスになるケースも少なくありません。人間関係の構築が難しく孤立感を覚える方や、優先順位の判断に迷い業務が滞ってしまう方もいます。

こうした困りごとは本人の努力不足ではなく、脳の情報処理の仕方に起因するものであり、周囲の理解と適切なサポートによって大きく軽減できます。

支援を受けることで働きやすさは大きく変わる

発達障害の特性そのものをなくすことは難しくても、適切な支援や環境調整があれば、能力を十分に発揮して働くことができます。

自分に合った職場を見つけるためにも、ハローワークをはじめとする就労支援機関を積極的に頼ることが重要です。「支援を受けること=弱さ」ではなく、自分らしく働くための戦略だと考えてみましょう。

ハローワークには障害のある方向けの専用窓口がある

ハローワークと聞くと一般的な求人検索のイメージが強いかもしれませんが、実は障害のある方に特化した専用窓口が設けられています。ここでは、その窓口の特徴や利用条件について解説します。

発達障害に詳しい専門相談員が配置されている

ハローワークの障害者専門窓口には、精神障害や発達障害の就労支援に精通した相談員が配置されています。発達障害の特性を踏まえたうえで、どのような職種や職場環境が合うかを一緒に考えてくれるため、一般窓口よりも的確なアドバイスが期待できます。

まずは専門窓口の存在を知り、相談の第一歩を踏み出しましょう。

障害者手帳を持っていなくても相談できる

ハローワークの専門窓口は、障害者手帳を持っていなくても利用できます。医師から発達障害の診断を受けている方、あるいは診断前でも「困り感」がある方は相談が可能です。

ただし、手帳がない場合は応募できる求人の範囲が限られることがあるため、手帳の取得についても相談員に聞いてみるとよいでしょう。

医師の診断書や意見書が必要になるケースとは

障害者手帳を持たずに専門窓口を利用する場合、主治医の意見書や診断書の提出を求められることがあります。これは支援を適切に行うために、障害の状態や就労上の配慮事項を確認する目的で用いられます。

事前にかかりつけの医療機関に相談し、書類の準備を進めておくとスムーズです。

ハローワークで発達障害の方が利用できる就労支援メニュー

ハローワークでは、求人の紹介だけではなく、書類添削や面接練習、職場実習、職業訓練など多角的な支援が用意されています。それぞれの内容を詳しく見ていきましょう。

キャリアカウンセリング・求人の紹介

専門窓口では、これまでの職歴やスキル、障害特性を踏まえたキャリアカウンセリングを受けることができます。一般求人と障害者雇用枠の求人の両方から、本人の希望や適性に合った仕事を探してもらえます。

自分一人では見つけにくい企業の情報も提供してもらえるため、選択肢を広げるうえで非常に有効です。

履歴書・職務経歴書の添削と面接対策

応募書類の書き方や面接での受け答えに不安がある方には、個別に指導を受けられる機会があります。発達障害の方は自己PRが苦手なケースが多いため、特性をどのように伝えるか、配慮事項をどう書くかといった具体的なアドバイスがもらえるのは大きなメリットです。

模擬面接を通じて本番への自信をつけることもできます。

職場体験・実習プログラムの活用

実際の企業で短期間の職場体験や実習を行えるプログラムも用意されています。実際に業務を体験することで、自分に合った仕事内容や職場環境かどうかを入社前に確認できます。

企業側にとっても応募者の適性を見極める機会になるため、双方にとってミスマッチを防ぐ効果があります。

トライアル雇用制度で”お試し”から始められる

障害者トライアル雇用制度は、原則3か月間の試行雇用を経て、企業と本人の双方が合意すれば本採用に移行する仕組みです。「いきなり正式採用は不安」という方にとって、働きながら職場との相性を確かめられる安心感のある制度です。

企業には助成金が支給されるため、受け入れに前向きな事業所が多い点も特徴です。試行期間中にジョブコーチなどの支援を受けることもでき、段階的に職場に慣れていくことができます。

ハロートレーニング(公共職業訓練)でスキルを身につける

ハロートレーニングとは、就職に必要な知識や技能を習得するための公共職業訓練です。障害者向けのコースでは、ビジネスマナーやパソコンスキル、軽作業など、障害特性に配慮したカリキュラムが組まれています。訓練中は手当が支給される場合もあり、経済的な不安を軽減しながらスキルアップを図れます。

地域障害者職業センターとの連携によるジョブコーチ支援

ハローワークは、地域障害者職業センターと連携してジョブコーチ支援を提供しています。

ジョブコーチとは、就職後に職場を訪問し、業務の進め方や職場でのコミュニケーションについて本人と企業の双方をサポートする専門スタッフです。就職後の定着率を高めるうえで、非常に心強い存在です。

ハローワークで就労支援を受けるまでのステップ

「利用したいけれど、何から始めればいいかわからない」という方のために、ハローワークで支援を受けるまでの基本的な流れを4つのステップに分けて紹介します。

ステップ① 最寄りのハローワークに来所・登録する

まずは最寄りのハローワークに出向き、求職の登録を行います。障害のある方向けの支援を受けたい旨を総合受付で伝えれば、専門窓口に案内してもらえます。事前に予約が必要な場合もあるため、電話で確認してから来所すると安心です。

ステップ② 専門窓口で現状や希望を伝える

専門窓口では、現在の障害の状態、これまでの職歴、希望する職種・勤務条件などをヒアリングしてもらいます。障害者手帳や診断書がある場合は持参しましょう。ここでの情報が今後の支援計画のベースとなるため、困っていることや不安に感じていることも遠慮なく伝えることが大切です。

ステップ③ 支援プランの作成と求人探しを始める

ヒアリング内容をもとに、相談員と一緒に個別の支援プランを作成します。すぐに求人に応募するだけでなく、まず職業訓練で準備をする、実習を経験するなど、本人の状況に合わせた段階的なプランを組むことも可能です。焦らず自分のペースで進められる点がハローワークの大きな利点です。

ステップ④ 応募・選考・定着フォローまでサポートを受ける

求人が見つかったら、応募書類の作成から面接対策、さらには就職後の定着支援まで一貫してサポートを受けられます。就職がゴールではなく、職場に定着して安定的に働き続けることを目標とした支援体制が整っている点が、ハローワークの専門窓口を利用する大きなメリットです。

障害を企業に開示して働く?しない?2つの就労スタイル

就職活動を進めるうえで多くの方が悩むのが、「発達障害を企業に伝えるかどうか」という問題です。ここでは、オープン就労とクローズ就労のそれぞれの特徴を比較し、選び方の基準を解説します。

オープン就労のメリット・デメリット

オープン就労とは、障害があることを企業に開示したうえで働くスタイルです。障害者雇用枠での応募が中心となり、合理的配慮を受けやすく、無理なく働ける環境を整えてもらいやすいのが最大のメリットです。

一方で、求人数が一般枠に比べて限られることや、給与水準が低めに設定されるケースがある点がデメリットとして挙げられます。職場での理解を得たうえで安定した長期就労を目指す方には向いている選択肢です。

クローズ就労のメリット・デメリット

クローズ就労は、障害を開示せずに一般枠で応募・就労する方法です。求人の選択肢が広がり、給与水準も一般的な基準で設定されるメリットがあります。

一方で、職場での配慮を受けにくく、困りごとを一人で抱え込みやすいというリスクがあります。体調管理やセルフケアに自信がある方に向いています。

自分に合った働き方を選ぶための判断基準

オープン・クローズどちらが正解ということはなく、自分の障害特性の程度、職場で必要な配慮の内容、経済面の事情などを総合的に考えて判断することが大切です。

迷った場合は、ハローワークの相談員や後述する転職エージェントに相談し、客観的な意見をもらいながら方向性を決めるのがおすすめです。

ハローワーク以外にも使える就労支援サービス

ハローワークは就労支援の中心的な機関ですが、それだけに頼る必要はありません。他の支援機関を併用することで、より自分に合った就職先や準備方法が見つかることがあります。

就労移行支援事業所でじっくり準備する

就労移行支援事業所は、最長2年間にわたり就職に向けたトレーニングを受けられる障害福祉サービスです。ビジネスマナー、パソコンスキル、コミュニケーション訓練などのプログラムが用意されており、生活リズムの安定から就職活動まで段階的にサポートしてもらえます。

すぐに就職するのが難しいと感じる方に適した選択肢です。

障害者就業・生活支援センター(なかぽつ)に相談する

通称「なかぽつ」と呼ばれる障害者就業・生活支援センターは、就労と生活の両面から相談に応じてくれる機関です。仕事の悩みだけでなく、生活習慣の改善や金銭管理、住居の相談まで幅広く対応しているため、生活面の課題が就労に影響している方にとって頼りになる存在です。

発達障害者支援センターで専門的なアドバイスを受ける

発達障害者支援センターは、発達障害に特化した相談機関として各都道府県に設置されています。就労に関する相談はもちろん、日常生活の困りごとや医療機関・福祉サービスの情報提供まで、幅広い支援を受けられます。

発達障害についてまだ十分に理解できていない段階でも気軽に相談できる場所です。

転職エージェントを併用するとさらに選択肢が広がる

ハローワークだけでなく、転職エージェントを活用することで就職・転職の可能性は大きく広がります。特に障害者雇用に特化したエージェントは、発達障害の方に合った求人を効率的に見つけるうえで非常に有効です。

障害者雇用に特化した転職エージェントとは

障害者雇用専門の転職エージェントは、障害のある方の就職・転職に特化した人材紹介サービスです。障害特性に理解のあるキャリアアドバイザーが担当につき、本人の特性や希望に合った求人をマッチングしてくれます。

具体的には、「dodaチャレンジ」(求人が幅広い)、「atGP」(定番エージェント)、「障害者雇用バンク」(20代・30代に強み)、「LITALICO仕事ナビ」(求人豊富な定番サービス)、「マイナビパートナーズ紹介」(定着支援も提供)などの転職エージェントがあり、1人ひとりに合わせたサポートを提供しています。

利用料は無料で、登録から入社後のフォローまでサポートを受けることができます。

ハローワークにはない非公開求人にアクセスできる

転職エージェントの大きな強みは、ハローワークには掲載されない非公開求人を保有している点です。大手企業や条件の良いポジションは非公開で募集されることが多いため、エージェントを利用するだけで応募先の選択肢が大幅に増えます。

「もっと自分に合った求人があるかもしれない」と感じている方には特におすすめです。

書類作成・面接・条件交渉まで一貫してサポートしてもらえる

エージェントでは、履歴書・職務経歴書の作成代行や添削、面接日程の調整、企業との条件交渉まで、求職活動のあらゆるプロセスを代行・支援してくれます。発達障害の方が苦手とするスケジュール管理や交渉ごとを任せられるため、本来の就職準備に集中できるのが大きなメリットです。

おすすめの転職エージェント3選【発達障害の方向け】

発達障害の方の就職・転職実績が豊富なエージェントとしては、「dodaチャレンジ」「atGP(アットジーピー)」「マイナビパートナーズ紹介」などが挙げられます。

dodaチャレンジは大手パーソルグループが運営しており求人数が豊富です。atGPは障害者雇用に特化した老舗サービスで、就労移行支援との連携にも強みがあります。マイナビパートナーズ紹介は入社後の定着支援にも対応しています。

それぞれ保有する求人の特徴やサポート体制が異なるため、複数のエージェントに登録して比較検討するのがおすすめです。ハローワークと併用することで、最大限の選択肢を確保できます。

発達障害のある方向けの転職サービスについては、以下の記事が参考になります。

まとめ|ハローワークとエージェントを組み合わせて自分らしい働き方を見つけよう

発達障害の方が就職・転職を成功させるためには、一人で抱え込まず、利用できる支援を最大限に活用することが大切です。

ハローワークの専門窓口では、職業相談から職場実習、訓練、定着支援まで幅広いサポートを無料で受けられます。さらに、障害者雇用に特化した転職エージェントを併用すれば、非公開求人を含む多くの選択肢の中から自分に合った職場を見つけやすくなります。就労移行支援事業所やなかぽつなど、他の支援機関とも組み合わせることで、準備から定着までの支援がより手厚くなります。

まずはハローワークの専門窓口に相談し、必要に応じてエージェントにも登録するところから、自分らしい働き方に向けた一歩を踏み出してみてください。