障害を持ちながら働く方にとって、転職活動は不安が大きいものです。「本当に採用してもらえるのか」「体調面で続けられるか」といった悩みを抱える方も少なくありません。しかし、適切な準備と支援を活用すれば、転職成功の可能性は十分にあります。
本記事では、障害者の転職が困難とされる理由を分析し、成功へ導くための具体的な方法を解説します。企業側の事情や活用できる支援機関についても詳しく紹介しますので、転職を検討している方はぜひ参考にしてください。
Contents
障害を持つ方の転職市場の実態

障害者雇用の現状を正しく理解することは、転職活動の第一歩です。法制度の変化や統計データから、今の転職市場がどのような状況にあるのかを見ていきましょう。
ハローワーク経由の就職成功率は5割未満
厚生労働省のデータによると、ハローワークに求職申し込みをした障害者のうち、実際に就職できた割合は約44%にとどまっています。つまり半数以上の方が就職に至っていない現状があります。
この数字からも、障害者の転職活動には一定の困難が伴うことがわかります。ただし、適切な支援を受けることで成功率を高めることは十分可能です。
企業の法定雇用率は段階的に上昇中
民間企業に義務付けられている障害者の法定雇用率は、2024年4月から2.5%に引き上げられました。さらに今後も段階的に上昇する予定です。
これは企業側が障害者雇用を拡大する必要があることを意味しており、求職者にとっては追い風といえます。
雇用率の上昇に伴い、
障害者向けの求人数も増加傾向にあります。
求人数は増加傾向にあるものの課題も
法定雇用率の引き上げにより、障害者向けの求人は確実に増えています。しかし求人の質や、求職者のニーズとのマッチングには依然として課題があります。
事務補助などの単純作業に偏っていたり、短時間勤務の契約社員が多かったりと、希望する働き方を実現できないケースも見られます。量だけでなく質の向上が今後の課題といえるでしょう。
障害者の転職が困難とされる主な要因

転職が難しいとされる背景には、求職者側のさまざまな事情があります。ここでは代表的な要因を4つ取り上げて解説します。
体調管理や通院との両立が課題となる
障害の種類によっては、体調の波があったり定期的な通院が必要だったりします。フルタイムでの勤務が難しい、急な欠勤が発生する可能性があるといった状況は、企業側の懸念材料となりやすいです。また本人自身も「迷惑をかけるのではないか」という不安から、転職活動に踏み切れないケースがあります。
体調の安定性は転職成功の重要な要素です。
自己理解と障害特性の整理が不十分
自分の障害特性や必要な配慮事項を言語化できていない方は少なくありません。
「何ができて何が難しいのか」を明確に伝えられないと、企業側も適切な配慮を用意できません。また自分に合った職種や働き方を見極められず、ミスマッチな求人に応募してしまうこともあります。
自己理解の深さが転職成功の鍵を握ります。
求められる業務スキルとのミスマッチ
障害があることと、業務に必要なスキルを持っていることは別の問題です。企業は配慮は提供できても、基本的な業務遂行能力は求めます。
PCスキルやコミュニケーション能力など、職種に応じた最低限のスキルが不足していると、採用のハードルは高くなります。
スキル不足を補う努力や、
自分のスキルに合った求人選びが重要です。
配慮事項の伝え方がわからない
面接で自分の障害や必要な配慮をどこまで、どのように伝えるべきか悩む方は多いです。詳しく話しすぎると不採用になるのではと不安になり、逆に情報不足だと入社後にトラブルになる可能性があります。
配慮事項を適切に伝えるスキルは、転職活動において非常に重要ですが、これを習得する機会が少ないのが現状です。
採用企業側が抱える課題と懸念点

転職が難しい理由は、企業側の事情にもあります。障害者雇用に前向きな企業でも、実際の運用面で悩みを抱えているケースが多いのです。
合理的配慮の具体的な実施方法が不明確
合理的配慮は法律で義務付けられていますが、具体的に何をどこまで行えばよいのか判断に迷う企業は少なくありません。配慮のやりすぎは他の社員との公平性の問題を生み、配慮不足は障害者本人の働きづらさにつながります。
適切な配慮のバランスを見極めるノウハウが企業側に不足していることが、
採用をためらう一因となっています。
障害に関する知識を持つ上司が不在
現場の管理職に障害に関する理解や知識がないと、適切なマネジメントができません。指示の出し方や業務の割り振り、体調不良時の対応など、障害特性に配慮した管理が求められます。
しかし多くの企業では、管理職への教育が十分に行われていません。受け入れ体制の不備が、企業の採用意欲を低下させています。
早期離職のリスクへの懸念
障害者雇用では、一般雇用と比べて離職率が高い傾向があります。体調悪化や職場環境への不適応などが理由です。
企業は採用や研修にコストをかけても、すぐに辞められてしまうリスクを懸念します。この不安が採用基準を厳しくしたり、採用人数を絞ったりする要因になっています。
業務の切り出しや環境整備のコスト
障害者が働きやすい業務を切り出したり、物理的な環境を整備したりするには、時間と費用がかかります。中小企業では特に、こうしたコストが大きな負担となります。また既存の業務フローを変更する必要がある場合、現場の負担増加につながることもあります。
こうした実務面のハードルが、採用を躊躇させる要因です。
転職活動で失敗しやすいパターンとは

多くの求職者が陥りやすい失敗パターンを知っておくことで、同じ過ちを避けることができます。
一般雇用枠に固執してしまう
「障害者雇用枠は条件が悪い」というイメージから、一般雇用枠での就職にこだわる方がいます。しかし一般雇用では障害への配慮を受けにくく、結果的に長続きしないケースが多いのです。
障害者雇用枠は法的な配慮義務があり、安定して働ける環境が整っています。
選択肢を狭めず、
自分に合った雇用形態を選ぶことが大切です。
自分に合わない求人に応募してしまう
求人数が限られているからと、条件の合わない求人に手当たり次第応募してしまう方がいます。体力的に無理のある勤務時間や、苦手な業務内容の仕事では、採用されても続きません。
少ない選択肢の中でも、自分の状態やスキルに合った求人を見極める冷静さが必要です。
面接で配慮事項を伝えられない
採用されたい気持ちが強すぎて、必要な配慮事項を伝えそびれてしまうケースがあります。入社後に「こんなはずではなかった」となり、早期離職につながります。
逆に障害のことばかり強調しすぎて、自分の強みやできることをアピールできない失敗もあります。バランスの取れた自己開示が求められます。
障害者が転職を成功させるための5つの戦略

ここからは具体的な成功戦略を紹介します。これらを実践することで、転職成功の確率を大きく高められます。
障害特性と必要な配慮を明確にする
まず自分の障害について深く理解することが出発点です。
- NOTE
- できること、できないこと、体調の波のパターン、疲れやすい時間帯、どんな配慮があれば働けるかなどを整理しましょう。主治医や支援者と相談しながら、これらを文章化しておくと面接でスムーズに伝えられます。
自己理解が深いほど、適切な求人を選べます。
障害者雇用制度を積極的に活用する
障害者雇用促進法に基づく障害者雇用枠は、法的な配慮義務があるため安心して働けます。賃金や待遇も改善傾向にあり、正社員登用制度を設けている企業も増えています。また企業側も雇用率達成のために採用意欲が高いため、一般雇用よりも採用されやすい面があります。
制度を味方につけることが成功への近道です。
専門的な支援サービスを利用する
一人で転職活動を進めるのではなく、専門家の力を借りることが重要です。後述する支援機関や転職エージェントは、求人紹介だけでなく、書類添削や面接練習、企業との条件交渉なども支援してくれます。
障害者雇用に精通したアドバイザーのサポートは、転職成功率を大きく向上させます。
職業訓練で実践的なスキルを習得する
スキル不足が課題なら、就労移行支援事業所などで職業訓練を受けるのも有効です。PCスキルやビジネスマナーなど、実務に直結するスキルを習得できます。
また訓練期間中に自分の適性を見極めたり、働く体力をつけたりすることもできます。準備期間を設けることで、転職後の定着率も高まります。
企業研究を徹底して行う
応募する企業の障害者雇用実績や職場環境をしっかり調べましょう。企業のウェブサイトや口コミサイト、転職エージェントからの情報などを総合的に確認します。
障害者の定着率が高い企業や、配慮体制が整っている企業を選ぶことで、
入社後のミスマッチを防げます。
企業選びの段階で成否の多くが決まります。
活用できる支援機関とその特徴

障害者の就職・転職を支援する公的機関があります。それぞれの特徴を理解し、自分に合ったサービスを活用しましょう。
ハローワークの専門窓口を利用する
全国のハローワークには障害者専門の相談窓口が設置されています。求人紹介だけでなく、職業相談や職場定着支援も受けられます。また企業に対して助成金の情報提供や職場環境の助言も行っており、マッチングの精度を高めています。
無料で利用でき、地域の求人情報が豊富な点がメリットです。
就労移行支援で準備期間を設ける
就労移行支援事業所は、就職を目指す障害者に対して訓練や支援を提供する福祉サービスです。最長2年間利用でき、働くための準備を整えられます。
職業訓練、生活リズムの改善、就職活動のサポート、職場定着支援など
総合的な支援が受けられます。すぐに転職するのが不安な方に適しています。
地域障害者職業センターのサポート
独立行政法人が運営する専門機関で、職業評価や職業準備支援、ジョブコーチ支援などを提供しています。より専門的な支援が必要な方や、特定の職業スキルを身につけたい方に向いています。
企業に対する助言も行っており、就職後の定着支援も充実しています。各都道府県に設置されています。
障害者専門の転職エージェントを活用すべき理由

近年、障害者に特化した転職エージェントが増えています。これらを活用することで、転職活動を効率的に進められます。具体的には、「dodaチャレンジ」「atGP」「障害者雇用バンク」「LITALICO仕事ナビ」「マイナビパートナーズ紹介」などの転職エージェントがあり、1人ひとりに合わせたサポートを提供しています。
障害のある方向けの転職サービスについては、以下の記事が参考になります。
一般の求人サイトにはない非公開求人が豊富
転職エージェントは企業から直接依頼を受けた非公開求人を多数保有しています。こうした求人は一般には公開されず、エージェント経由でしか応募できません。条件の良い求人や、障害者雇用に積極的な優良企業の求人にアクセスできる点が大きなメリットです。「エージェント・サーナ」はとくに非公開求人を多く保有しています。
選択肢が広がることで、自分に合った仕事を見つけやすくなります。
障害への理解がある専任アドバイザーが担当
障害者専門のエージェントには、障害者雇用に精通したアドバイザーが在籍しています。障害特性や必要な配慮について理解があるため、安心して相談することが可能です。一人ひとりの状況に応じた求人提案や、キャリアプランの相談にも乗ってもらえます。
一般の転職エージェントでは得られない専門的なサポートが受けられます。
企業との条件交渉を代行してもらえる
勤務時間、休暇、配慮事項など、直接企業に言いにくい条件面の交渉をエージェントが代行してくれます。求職者の希望と企業の条件をすり合わせ、双方が納得できる着地点を探ってくれます。
また内定後の条件確認や入社日の調整なども任せられるため、
精神的な負担が軽減されます。
入社後のフォローアップ体制も充実
多くのエージェントは入社後も定期的に連絡を取り、職場への定着をサポートしてくれます。困ったことがあれば相談でき、必要に応じて企業との橋渡しもしてくれます。早期離職を防ぐための継続的なフォローがあることで、安心して新しい職場でスタートできます。
契約社員やパート勤務ではなく、安定した雇用形態を希望する方に適しています。
転職活動を始める前に準備すべきこと

実際に転職活動を開始する前に、以下の準備を整えておきましょう。
主治医や支援者と相談する
転職を決める前に、主治医やこれまでお世話になった支援者に相談することが重要です。今の体調で働けるか、どんな配慮が必要か、フルタイムは可能かなど、客観的な意見をもらいましょう。また転職活動中も定期的に相談しながら進めることで、無理のないペースを保てます。
障害者手帳の取得を検討する
障害者雇用枠で応募するには、原則として障害者手帳が必要です。まだ取得していない方は、手帳取得から始める必要があります。
診断を受けてから手帳が交付されるまで数ヶ月かかることもあるため、
早めに手続きを始めましょう。
手帳があることで受けられる支援やサービスも広がります。
まとめ:適切なサポートで転職成功は実現できる

障害者の転職は確かに一般雇用と比べて難しい面がありますが、決して不可能ではありません。自己理解を深め、適切な準備を行い、専門的なサポートを活用することで、成功の可能性は大きく高まります。
特に障害者専門の転職エージェントは、求人紹介から入社後のフォローまで総合的にサポートしてくれる心強い味方です。焦らず自分のペースで、納得のいく転職先を見つけてください。



