障害があっても障害者手帳を持っていない方のなかには、「オープン就労をしたいけれど手帳なしでもできるのだろうか」と不安を感じている方も多いのではないでしょうか。結論から言えば、手帳がなくてもオープン就労は可能です。

本記事では、手帳なしで働く方法やメリット・デメリット、活用できる支援制度、さらに転職エージェントの使い方まで詳しく解説します。自分に合った働き方を見つける参考にしてください。

Contents

そもそもオープン就労とは?

就職活動や働き方を考えるうえで、「オープン就労」「クローズ就労」「セミオープン就労」という3つの選択肢があります。それぞれの違いを正しく理解することが、自分に合った就労スタイルを選ぶ第一歩です。

障害があることを企業に伝えて働くスタイル

オープン就労とは、自分に障害があることを応募先の企業に開示したうえで働く方法です。企業側に障害の内容や必要な配慮を事前に伝えるため、業務内容や勤務時間の調整といったサポートを受けやすくなります。職場での理解を得たうえで安心して働きたい方に向いている就労スタイルといえます。

クローズ就労・セミオープン就労との違い

クローズ就労は障害を企業に一切開示せず、一般の求職者と同じ条件で働く方法です。

一方、セミオープン就労は上司や人事担当者など一部の関係者にだけ障害を伝え、同僚には開示しない働き方を指します。開示範囲を柔軟に調整できる点がセミオープン就労の特徴です。

どのスタイルが最適かは、障害の種類や程度、職場環境によって異なります。

障害者手帳なしでもオープン就労はできるのか

「障害者手帳がなければオープン就労はできない」と思われがちですが、実際はそうではありません。ここでは、手帳の有無がオープン就労にどう影響するのかを整理します。

手帳がなくても障害を開示して働くことは可能

オープン就労は、あくまで「障害を企業に開示して働く」という就労スタイルの呼び方であり、法律上、手帳の所持は必須条件ではありません。手帳がなくても、医師の診断書や意見書などを用いて自分の障害について企業に説明し、配慮を求めることは十分に可能です。

ただし「障害者雇用枠」の応募には手帳が必要

注意が必要なのは、企業が設ける「障害者雇用枠」に応募する場合です。障害者雇用促進法では、法定雇用率の算定対象を障害者手帳の所持者に限定しています。

厚生労働省の発表によると、2024年4月から民間企業の法定雇用率は2.5%に引き上げられました。障害者雇用枠への応募を検討する場合は、手帳の取得も視野に入れましょう。

手帳なしのオープン就労で想定される働き方

手帳なしでオープン就労をする場合、一般枠の求人に応募しながら、面接や入社時に障害について自己開示するケースが一般的です。企業によっては、障害者雇用枠ではなくとも合理的配慮を提供してくれる場合があります。

2024年4月からは改正障害者差別解消法により、民間事業者にも合理的配慮の提供が義務化されました

手帳なしでオープン就労を選ぶ3つのメリット

障害者手帳を持たずにオープン就労を選択することには、いくつかの利点があります。主なメリットを3つに整理して紹介します。

一般枠の求人に応募でき選択肢が広がる

手帳なしの場合は一般枠での応募となるため、障害者雇用枠に限定されない幅広い求人から仕事を探すことができます。一般枠の有効求人数は障害者枠と比較して圧倒的に多く、職種や業界の選択肢が格段に広がります。

給与や待遇面で有利になりやすい

障害者雇用枠と比較すると、一般枠の求人は給与水準が高い傾向があります。

厚生労働省の「令和5年度障害者雇用実態調査」では、身体障害者の平均月収が約23.5万円、精神障害者が約14.9万円と報告されており、一般労働者の平均と比べて差があることがわかります

給与面を重視する方にとっては大きなメリットです。

自分のペースで障害の開示範囲を調整できる

オープン就労を選びつつも、手帳を持っていないことで、開示の範囲やタイミングを自分で柔軟にコントロールしやすくなります。セミオープンに近い形で、必要な相手にだけ伝えるという方法も取りやすいのが特徴です。

手帳なしのオープン就労で注意すべきデメリット

メリットがある一方、手帳を持たないオープン就労には課題もあります。事前にデメリットを把握し、対策を立てておくことが大切です。

法定雇用率の対象外となり配慮が得にくい

手帳を持っていない場合、企業の法定雇用率にカウントされません。そのため、企業側に障害者を雇用するインセンティブが働きにくく、配慮体制が十分に整備されない可能性があります。

企業に配慮を求める際は、具体的にどのようなサポートが必要かを明確に伝える工夫が重要です。

職場で障害への理解が十分でないリスクがある

一般枠で入社した場合、職場の同僚や管理職が障害について十分な知識を持っていないことがあります。障害を開示しても、思ったような配慮を受けられないケースも考えられます。入社前に企業の障害者雇用に対する姿勢や、過去の受け入れ実績を確認しておくと安心です。

開示したことで選考に影響する可能性がある

残念ながら、障害を開示したことが選考においてマイナスに働くケースも完全には否定できません。

ただし、障害者差別解消法により、障害を理由とした不当な差別的取り扱いは禁止されています。開示のタイミングや伝え方を工夫することで、リスクを軽減することが可能です。

手帳を持たなくても使える就労支援サービス一覧

障害者手帳がなくても利用できる支援制度やサービスは数多くあります。ここでは代表的な6つの支援を紹介します。自分に合うものを積極的に活用しましょう。

就労移行支援事業所でスキルと自信をつける

就労移行支援は、障害のある方が一般企業への就職を目指すためのトレーニングを受けられる福祉サービスです。手帳がなくても、医師の診断書があれば利用できるケースが多くあります。

ビジネスマナーやPCスキルなど、実践的な訓練を受けながら就職活動のサポートも受けられます。原則として利用期間は最長2年間です。

就労定着支援で職場への定着をサポートしてもらう

就労定着支援は、就職後に職場での悩みやトラブルを相談できるサービスです。就労移行支援などを利用して就職した方が対象で、最長3年間のサポートを受けられます。職場との間に入って調整を行ってくれるため、長く安定して働き続けるための心強い味方になります。

ハローワークの専門窓口に相談する

全国のハローワークには、障害のある方の就職を支援する「専門援助部門」が設置されています。手帳の有無にかかわらず相談が可能で、求人紹介だけでなく、職業相談や面接対策なども受けられます。

まずは最寄りのハローワークに問い合わせてみましょう。

地域障害者職業センターで職業評価を受ける

独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構が運営する地域障害者職業センターでは、職業評価や職業準備支援、ジョブコーチ支援などを無料で受けることができます。

手帳の有無を問わず利用可能で、自分の適性や能力を客観的に把握したい方に適しています。

障害者就業・生活支援センターで生活面もケアする

障害者就業・生活支援センター(通称「なかぽつ」)は、就業面と生活面の両方から一体的な支援を提供する機関です。全国に337カ所設置されており(2024年4月時点)、就職に関する相談だけでなく、日常生活の悩みにも対応してもらえます。

企業向けの助成金制度を知っておく

障害者を雇用する企業が活用できる助成金制度も存在します。たとえば「特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者コース)」は、ハローワーク等の紹介で障害者を雇い入れた事業主に対して助成金を支給する制度です。

企業側にこうした制度を伝えることで、雇用のハードルを下げる効果が期待できます。

転職エージェントを活用してオープン就労を成功させる方法

手帳なしでのオープン就労では、自分一人で企業との交渉や求人探しを行うのは負担が大きいこともあります。そんなときに心強い味方となるのが転職エージェントです。

障害者専門の転職エージェントとは

障害者専門の転職エージェントは、障害のある求職者と企業のマッチングに特化した人材紹介サービスです。

障害の特性に合わせた求人の提案や、企業との条件交渉、面接対策など、一般の転職エージェントにはないきめ細かいサポートが特徴です。非公開求人を多く保有しているエージェントもあり、選択肢を広げられるメリットがあります。

手帳なしでも登録・相談できるエージェントの選び方

転職エージェントのなかには、手帳の有無にかかわらず相談を受け付けているところがあります。

選ぶ際のポイントは、手帳なしでも対応可能と明記しているか、希望する職種や勤務地の求人が豊富か、そしてカウンセラーが障害に関する知識を持っているかどうかです。複数のエージェントに登録して比較するのもおすすめです。

エージェントを利用する具体的な流れ

一般的な流れとしては、まずWebサイトから登録し、キャリアカウンセラーとの面談で希望条件や障害の状況を共有します。その後、条件に合った求人を紹介してもらい、応募書類の添削や面接対策を経て選考に進みます。

内定後も入社条件の交渉や入社後のフォローを行ってくれるエージェントが多く、就職活動全体を伴走してもらえる安心感があります。

エージェント活用で内定率を高める3つのコツ

エージェントをうまく活用するためのコツは3つあります。

1つ目は、障害の内容や配慮事項を正直に伝えること。2つ目は、希望条件に優先順位をつけて柔軟に対応すること。3つ目は、担当カウンセラーとこまめに連絡を取り、信頼関係を築くことです。エージェントとの連携が密になるほど、自分に合った求人に出会える可能性が高まります。

障害者手帳の種類と取得の流れを押さえておこう

現時点で手帳を持っていなくても、将来的な取得を見据えて種類や申請方法を知っておくことは有意義です。障害者手帳には3つの種類があり、それぞれ対象や申請先が異なります。

身体障害者手帳の対象と申請ステップ

身体障害者手帳は、視覚・聴覚・肢体不自由・内部障害など身体機能に永続する障害がある方を対象としています。指定医の診断書を添えて、お住まいの市区町村の福祉窓口に申請します。

等級は1級から7級まであり(7級単独では交付されません)、等級によって受けられるサービスが異なります。

療育手帳の対象と申請ステップ

療育手帳は、知的障害のある方を対象とした手帳です。名称や判定基準は自治体によって異なり、「愛の手帳」「みどりの手帳」などと呼ばれることもあります。

児童相談所(18歳未満)または知的障害者更生相談所(18歳以上)で判定を受けたうえで、市区町村に申請します。

精神障害者保健福祉手帳の対象と申請ステップ

精神障害者保健福祉手帳は、統合失調症や気分障害、発達障害、てんかんなど、精神疾患により日常生活や社会生活に制約がある方が対象です。初診日から6カ月以上経過した時点で、医師の診断書を添えて市区町村に申請します。

等級は1級から3級で、有効期間は2年間のため更新手続きが必要です。

将来的に手帳を取得するメリットも検討しよう

手帳を取得すると、障害者雇用枠への応募が可能になるだけでなく、税制優遇や公共交通機関の割引、各種福祉サービスの利用といった幅広い恩恵を受けられます。

現時点では手帳なしで働くことを選んでいても、状況の変化に応じて取得を検討する価値は十分にあります。主治医や支援機関に相談してみるとよいでしょう。

自分に合った働き方を見つけるためのポイント

オープン就労に限らず、大切なのは「自分に合った働き方」を選ぶことです。最後に、働き方を選ぶ際に意識したいポイントをお伝えします。

体調やライフスタイルに合わせて無理のない選択を

障害の特性や体調には波があり、常に同じパフォーマンスを維持することが難しい場合もあります。勤務時間や業務量、通勤方法なども含めて、長期的に続けられる働き方を選ぶことが何よりも大切です。短時間勤務やリモートワークなど、多様な働き方を視野に入れて検討しましょう。

迷ったらまず専門家に相談してみよう

自分だけで判断に迷う場合は、就労移行支援事業所やハローワーク、転職エージェントなどの専門家に相談することをおすすめします。

客観的なアドバイスをもらうことで、自分では気づかなかった選択肢や強みが見つかることも少なくありません。一人で抱え込まず、使える支援は積極的に活用しましょう。

まとめ|手帳なしのオープン就労でも選択肢は豊富にある

障害者手帳を持っていなくても、オープン就労で働くことは十分に可能です。一般枠での豊富な求人のなかから自分に合った仕事を探せること、開示範囲を柔軟に調整できることなど、手帳なしならではのメリットもあります。

一方で、法定雇用率の対象にならない点や配慮が得にくい点には注意が必要です。就労移行支援やハローワーク、転職エージェントなどの支援を上手に活用しながら、無理なく長く働ける環境を見つけていきましょう。